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第2話 特訓なんてめんどい
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「ヨリさんそこです! 」
「は、はひ……」
「違います! 右! 」
「ひ……」
ギフトがない転移者なんてありえないということで特訓を受ける俺。
向こうの人たちの中ではこうして鍛えているうちにギフトが目覚めるだろうということになったらしい。
指導者となったのは治癒のギフトを貰った女子高生カナで、スライムと戦わせることでビシバシ俺を鍛える。
……だがその無理な指導に体がついていかない。カナは善意なのだろうが、28才アラサーの体力が高校生についていけるわけもない。
カナもやたらと勇者としての使命に目覚めているらしく、俺の命と体のことを一切考慮していないのだ。
「や、休ませて……」
俺は顔に土がつくのも構わずに、ばったりと地面に倒れ込んだ。
頬にひんやりとした土が当たり、気持ちが良い。
あまりにも疲労しすぎて汚れるとかそんなことはどうでも良かった。
「ええっ、そんなんじゃギフトが目覚めませんよ……」
「死ぬ……」
そのとき、ダッサ! という気の強そうな声がした。
顔をあげると、もちろん声の主はあのツインテ女子で、名前はアズサというらしい。
魔法のギフトを貰ったという彼女はもう魔法使いのような衣装に着替えていた。
……あれだけ文句言っていたのに意外とノリノリではないか!
「だ、だめよアズサちゃん。そんなこと言っちゃ」
「だってこの人一番年上でしょ? 情けないわよ」
心が痛い……。
こんな年下の女の子にボロクソに言われるなんて。
いやそれに考えてみて欲しい、ほんの数日前までは日本でブラック企業で働く善良な一般人なのだ。いきなり魔王退治に出ろなんて無理な話だ。
むしろそんな人間を召喚して戦いに出ろなんて言い出す王様の方がどうかしてる。人の命を一体何だと思っているのか?
……とアズサに言うことが出来ない俺はヘタレであった。
「おーい!! 皆! 」
すると一人の少年が駆け寄って来る。手を振って爽やかな笑顔を浮かべている。
「タクト……! 」
タクトと呼ばれた少年が剣のギフトを貰ったという勇者だ。
女子二人が恋する乙女のような顔をして、彼を見つめる。おいおいおい! 俺のときとはまったく表情が違うじゃないか! 青春の1ページを見たような気分になり、俺は思わず自分の不甲斐なさを恥じた。
俺が高校生のときはこんなイベントなかったわ……。と。
「聞いてくれ! 俺、鑑定というスキルをゲットしたんだ。これがあればヨリさんのギフトが分かるぞ。良かった! 」
イケメンというのは顔だけでなく性格も良いのか。そりゃ俺が勝てるわけないわ。いや別に勝負している訳ではないんだけど。
「鑑定……? 」
「まあ、やってみよう! 見た方が分かりやすいよ」
そう答えると、彼は一番近くにいたアズサに向かって手をかざした。
するとどうだろう、まるで煙のようにステータス画面のようなものが浮かび上がった。
名前:アズサ
レベル:15
体力:20
魔法量:80
攻撃力:10
防御力:15
素早さ:20
ギフト:魔女の口付け
「すごーい」
カナが興奮気味に手を叩く。
「ふーん、この魔女の口付けって言うのが私のギフトの名前なのね」
「そうそう。じゃあ次はカナね」
そうしてタクトはカナに向けて手をかざした。
名前:カナ
レベル:15
体力:40
魔法量:50
攻撃力:20
防御力:34
素早さ:15
ギフト:癒しの波動
「全体的に私よりステータスが高いわね」
「素早さが低くて恥ずかしいです……」
本当に僧侶のような数字が並んでいる。意外とカナはタフなようだ。
「そういうタクトはどうなのよ? 」
「え、俺? 」
待ってましたとばかりに顔をにやつかせ、自分に鑑定をかけるタクト。
彼の年頃の男子高校生なのだろう。滲み出る自己顕示欲を隠しきれていない。
そうして出たステータスは……。
名前:タクト
レベル:15
体力:200
魔法量:90
攻撃力:150
防御力:130
素早さ:110
ギフト:剣帝
スキル:鑑定
そこには物凄い数字が並んでいた……。
「す、すごいわ。これがタクトの!? 」
「凄いですタクトさん! それにスキルって欄が増えてますね」
「はは、それほどじゃないよ。さあヨリさんもやってみよう」
……嫌な予感がするな。
俺、これ噛ませ犬になるんじゃないか?
俺の嫌な予感は大体当たる。これは俺が28年間生きてきて学んだことだった。
「は、はひ……」
「違います! 右! 」
「ひ……」
ギフトがない転移者なんてありえないということで特訓を受ける俺。
向こうの人たちの中ではこうして鍛えているうちにギフトが目覚めるだろうということになったらしい。
指導者となったのは治癒のギフトを貰った女子高生カナで、スライムと戦わせることでビシバシ俺を鍛える。
……だがその無理な指導に体がついていかない。カナは善意なのだろうが、28才アラサーの体力が高校生についていけるわけもない。
カナもやたらと勇者としての使命に目覚めているらしく、俺の命と体のことを一切考慮していないのだ。
「や、休ませて……」
俺は顔に土がつくのも構わずに、ばったりと地面に倒れ込んだ。
頬にひんやりとした土が当たり、気持ちが良い。
あまりにも疲労しすぎて汚れるとかそんなことはどうでも良かった。
「ええっ、そんなんじゃギフトが目覚めませんよ……」
「死ぬ……」
そのとき、ダッサ! という気の強そうな声がした。
顔をあげると、もちろん声の主はあのツインテ女子で、名前はアズサというらしい。
魔法のギフトを貰ったという彼女はもう魔法使いのような衣装に着替えていた。
……あれだけ文句言っていたのに意外とノリノリではないか!
「だ、だめよアズサちゃん。そんなこと言っちゃ」
「だってこの人一番年上でしょ? 情けないわよ」
心が痛い……。
こんな年下の女の子にボロクソに言われるなんて。
いやそれに考えてみて欲しい、ほんの数日前までは日本でブラック企業で働く善良な一般人なのだ。いきなり魔王退治に出ろなんて無理な話だ。
むしろそんな人間を召喚して戦いに出ろなんて言い出す王様の方がどうかしてる。人の命を一体何だと思っているのか?
……とアズサに言うことが出来ない俺はヘタレであった。
「おーい!! 皆! 」
すると一人の少年が駆け寄って来る。手を振って爽やかな笑顔を浮かべている。
「タクト……! 」
タクトと呼ばれた少年が剣のギフトを貰ったという勇者だ。
女子二人が恋する乙女のような顔をして、彼を見つめる。おいおいおい! 俺のときとはまったく表情が違うじゃないか! 青春の1ページを見たような気分になり、俺は思わず自分の不甲斐なさを恥じた。
俺が高校生のときはこんなイベントなかったわ……。と。
「聞いてくれ! 俺、鑑定というスキルをゲットしたんだ。これがあればヨリさんのギフトが分かるぞ。良かった! 」
イケメンというのは顔だけでなく性格も良いのか。そりゃ俺が勝てるわけないわ。いや別に勝負している訳ではないんだけど。
「鑑定……? 」
「まあ、やってみよう! 見た方が分かりやすいよ」
そう答えると、彼は一番近くにいたアズサに向かって手をかざした。
するとどうだろう、まるで煙のようにステータス画面のようなものが浮かび上がった。
名前:アズサ
レベル:15
体力:20
魔法量:80
攻撃力:10
防御力:15
素早さ:20
ギフト:魔女の口付け
「すごーい」
カナが興奮気味に手を叩く。
「ふーん、この魔女の口付けって言うのが私のギフトの名前なのね」
「そうそう。じゃあ次はカナね」
そうしてタクトはカナに向けて手をかざした。
名前:カナ
レベル:15
体力:40
魔法量:50
攻撃力:20
防御力:34
素早さ:15
ギフト:癒しの波動
「全体的に私よりステータスが高いわね」
「素早さが低くて恥ずかしいです……」
本当に僧侶のような数字が並んでいる。意外とカナはタフなようだ。
「そういうタクトはどうなのよ? 」
「え、俺? 」
待ってましたとばかりに顔をにやつかせ、自分に鑑定をかけるタクト。
彼の年頃の男子高校生なのだろう。滲み出る自己顕示欲を隠しきれていない。
そうして出たステータスは……。
名前:タクト
レベル:15
体力:200
魔法量:90
攻撃力:150
防御力:130
素早さ:110
ギフト:剣帝
スキル:鑑定
そこには物凄い数字が並んでいた……。
「す、すごいわ。これがタクトの!? 」
「凄いですタクトさん! それにスキルって欄が増えてますね」
「はは、それほどじゃないよ。さあヨリさんもやってみよう」
……嫌な予感がするな。
俺、これ噛ませ犬になるんじゃないか?
俺の嫌な予感は大体当たる。これは俺が28年間生きてきて学んだことだった。
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