チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

文字の大きさ
上 下
4 / 64

第3話 ギフトなんてなかった

しおりを挟む
そして表示された俺のステータスは……。

名前:ヨリ
レベル:1
体力:10
魔法量:2
攻撃力:5
防御力:8
素早さ:7
譁&#x;ュ怜:喧縺&#D;

「は……? 」

 俺を含む四人全員の声が重なった。
 そこに表示されたのはあまりにも弱すぎる数字の数々。
 おまけにギフトに至っては、文字化けを起こしたように意味のない言語を成している。

 レベルも他の皆とは違い、1からのスタートだ。
 これ、下手したらそこら辺の村人の方が強いんじゃないか……? 思わずそう思ってしまうぐらいのステータスだ。
 そして多分他の人も同じ事を思っていたのだろう。

「魔法使いのアズサちゃんより低い……」

 カナが呟いた。しかしすぐに自分の口を塞ぎ、俺に申し訳なさそうに会釈した。
 どうやら思わず口をついて出てしまった言葉らしい。
 そしてアズサがはーっと皆に聞こえるような大声をあげた。

「貴方弱すぎない? 恥ずかしくないの? 」

「ま、まあまあアズサ。別にヨリさんが悪い訳じゃないだろ……」

「そうだけどさ、やっぱり努力不足なんじゃない!? 」

 グサリと俺の胸に刺さる。
 努力不足だ、もっと頑張れ。
 お前の代わりはいくらでもいる。

 上司から何度そう言われたか分からない。もう数えるのはやめた。

 しかもうんと年下の女の子からまったく同じ叱責されるなんて……。

「……ごめんなさい」

 俺に出来るのは謝ることだけだ。

「謝ってる暇があったら行動で示しなさいよ」

「おい、言い過ぎだぞアズサ」

 タクトがアズサを制止する。
 アズサはだって! と反論しようとしたが、萎んだ風船のように勢いを落とした。

「あ、ああヨリさん!! 」

 気が付くと俺の目からはボタボタと涙が流れていた。

「だっさ。いい大人が泣くんじゃないわよ」

 アズサは俺に一瞥もくれることなくさっさとどこかへ行ってしまった。

「アズサ! 待てよ! ……ごめんなさいヨリさん。俺のせいで」

「いや、タクトくんは悪くないよ……ありがとな」

 そしてアズサを追うようにしてタクトも姿を消した。
 何と言う子なのだろうか、親の顔が見てみたい。
 こんな良い子に育つなんてよっぽど親の教育が良いのだろう。うんうん。

 残ったカナだけがハンカチを俺に差し出して、おろおろと眉を下げていた。

「ご、ごめん。カナちゃん」

 ハンカチを受け取ると、俺は涙を拭く。
 今となっては懐かしい地球の柔軟剤の香りがふわりとした。

「良いんです、気にしないで下さい。落ち着きましたか? 」

「う、うん」

 変な上擦った声が出てしまう。女子高生とまともに話したのなんて一体何年ぶりだろうか。

「えっと本当に気にしないで下さいね。きっとこれから努力すればヨリさんにもギフトが開花すると思いますから! 」

「ありがとう、カナちゃん」

 必死にフォローしてくれるカナ。

「それに私も元の世界ではダメダメな女子高生だったんです。勉強もビリだし、運動もダメ。本当に落ちこぼれでした」

 俺も同じだ。特技と言えるものは何もないし、友達もいない。
 家族との繋がりすらほとんどない孤独な人生だった。

「でもでも、そんな私にも僧侶としての才能があったんです! だからヨリさんにもきっとあります」

「そうだね……」

 大の大人が高校生に励まされるなんて情けないな、そう思いつつも俺はやはり嬉しかった。

「ヨリさんは地球では何をしてたんですか? サラリーマン? それとも実は大学生とか? 」

「俺は……」

 俺は今までの人生を語り出した。
 高卒で働き始めたこと、しかしそこがブラック企業で、心身共に疲れ果ていたときに召喚されたことを。

 しかしカナは次第に顔を曇らせていった。先ほどの優しい笑顔は身を潜め、信じられないと言ったような表情になる。

「カナちゃん? 」

「あ、い、いや何でもありません! す、すいません。私、王様に呼ばれていたことを忘れていました」

「あ、ハンカチ……」

 返そうとしたハンカチをカナは叩き落とした。

「それはもうあげます、大丈夫です! 」

 バタバタと荷物をまとめて去っていくカナ。俺は何かまずいことを言ってしまっただろうか……? 最近の若い子の地雷ワードは分からないな……。

 あ、そもそも誰かの涙が付着したハンカチなんて気持ち悪いか。洗って返すべきだったな。

 何てことを呑気に考えていたのだった。

「洗いに行こうか」

 俺はハンカチを握り締めると、城に帰ろうとゆっくりと歩みを進めた。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

処理中です...