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解かせない心
解かせない心①
しおりを挟む「はぁー」
千晃は遠くを眺めながら紙カップを持ち、深く息を吐いた。優作に『重たい』なんて言われた手前、あのまま彼の隣に居れるほどのメンタルは持ち合わせていなかった。
優作にそう感じさせないよう自然に振舞ってきたつもりでいても、察しのいい優作には気づかれている。
心の奥底で眠らせている気持ちは完全に蓋をすることは出来ないみたいだった。俺の気持ちが優作の重荷になっているのであれば、やっぱり自分は身を引くべきなんじゃないだろうか·····。
なんて考えては、無理やり用事だと偽って逃げ込んできた駅前のファーストフード店で鬱屈としていた。
「うわっ、よっしーじゃん。しかも、不幸なため息つき」
左手側から聞き覚えのある名前の呼び方をされ振り向くと、すぐ隣の席に辻本と飯田が座っていた。先程、同じ学校の制服の奴が隣に来たなと感じてはいたが、まさか二人だとは思わなかった。
「えっ、なんで飯田と辻本がいるんだよ」
「悪い?俺たちだって千晃抜きでワックデートくらいするけど。」
飯田は真顔で辻本の手を指を絡ませ繋ぐとさも、そうであるかのように此方に見せてつけてきた。繋がれた辻本も満更でもない表情で照れたように頭を掻くので動揺する。
「俺だけ仲間はずれとか酷いわっ。つか、デートって·····お前らそういう関係だったの!?」
「まあー千晃の思ってるような関係で合ってるかもな」
「えっ·····まじか。気づかなかった·····。もしかして俺、邪魔だった?」
「いやいや、よっしー。飯田っちの冗談真に受けないでよ」
飯田がいつまでも言葉を濁すものだから、空気に付き合っていた辻本が途端に慌てだし否定し始める。二人が恋愛関係であったとしても構わないし、寧ろ喜ばしいことだが、それはそれでこの場で多少なりとも気まずさを感じるだけに安堵した。
「飯田の冗談は難易度高すぎ」
「千晃もまだまだだな」
飯田は小馬鹿にしたように鼻で笑った。
地味に腹が立つが一枚上手なだけに憎めないのが余計に悔しい。
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