交わらない心

なめめ

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複雑な気持ち

複雑な気持ち⑤

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吉岡の表情は見えないが自分が心無いことを言ったのは間違えはなく、直後に酷く後悔をする。

「だよなー·····。自分でも引くよ。ごめん、余計なこと言って」

友達でいてもらっているのは俺の方なのに、敢えて傷を抉るような発言をしてしまう。
また、関係に亀裂が入ってもおかしくない。

なのに、吉岡はバッと顔を上げては引き攣り笑顔を見せる。心做しか明るいトーンで話す彼が無理しているようで余計に胸が痛む。

いくら突き放したいからって言ってはいけない言葉を吉岡に向けてしまった後悔と同時に自分と吉岡は対等の想いでいられないんだと痛感した。

一件告白される前に関係は戻ったかの様に思えても、ふとした時に溝を感じる。
先入観で彼のことを見ては気持ちに答えられないことへの腹立たしさはあった。


「俺こそ、ごめん」なんて自分も謝ればいいのかもしれないが、謝られる方が吉岡にとって状況を更に辛くさせるような気がして、優作は黙って前だけを見て歩く。

暫くして、バス停が見えてきたところで吉岡に「優」と呼ばれては振り返えると、後ろについてきていると思っていた吉岡は一メートル先まで離れていた。

「俺用事、思い出したから先帰っててよ」

「あぁ。分かった」

吉岡はいつもと変わらない笑顔で手を振ってきては「じゃあ」と一度も振り返ることなくバス停とは逆方向へと行ってしまった。

吉岡の背中を眺めて深く溜息を吐く。
多分、吉岡なりに俺と距離を取りたくてとった行動なのだろう。強く引き留めることできなかったのは自分にその資格がないからだった。


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