交わらない心

知り合い以上友達未満

知り合い以上恋人未満⑧

青年の優作を捉えた敵意剥き出しの瞳。
隣の椿も青年の味方なのか、完全無視な優作にかまって欲しいからなのか、じっと見つめるだけで優作を庇うような助言も何も言わない。

優作は自分のプライドと好きな人に言われたことのどっちをとるのか葛藤をしているのか顔を歪ませていた。
確かに優作の椿への応対は椿の気持ちを考慮するのであれば最良であるとは言い難いが、椿も椿でどっこいどっこいだ。優作が全て悪いわけじゃない。

「ごめんね、優ってこういう奴だからさ。悪気はないんだ。だから今回は勘弁…」

瞳に涙を溜め、今にも泣きそうな優作を見ていらず彼のフォローに徹しようとしたが、
向かいの席で「ごめん…」とそう小さく呟いた優作は椅子から立ち上がり、食堂を出て行ってしまった。
青年は言ってやったぞというように胸を下ろしては安堵の息を漏らす。
椿はと言うと「ごめん」という一言だけでも自分に構ってくれたことが嬉しかったのか、「優作くんがごめんって言ってくれたー」と歓喜をあげていた。

好きな人が自分の嫌いな奴の味方なのは優作には相当堪えたんじゃなかろうか。
千晃は優作が置いていったトレイを片付けると、そんな2人を残して慌てて彼の元を追う。
無言のまま、ずかずかと先へと進んでいく優作に漸く追いついたのは、教室の中のいつもの座席だった。
千晃が隣に座ったと同時に優作は「あー」と嘆きながら腕に突っ伏した。

「あいつのせいで印象最悪」

表情は分からないが、かなりショックを受けているのだろう、優作の声音は心做しか弱かった。