憧れはすぐ側に

なめめ

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それは突然に…

12-2

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「渉太、元気か?」

今までだったら目の前に大樹先輩がいるだけでドキドキして顔も見られず俯いてばかりだった。
最初こそは気まずさで避けたくなったりしたことはあったが、今は振られて気持ちの切り替えができたのか、ちゃんと顔を見て話せるし、変に意識もしなくなった。

自分の物事を冷静に捉える姿勢がついたのもだけど一番は大樹先輩も何ら変わりなく接してくれていることが大きかったかもしれない。
接してくれる度、ちゃんと自分への気遣いも見えて、自分のことで先輩にばかり気を遣わせるのは良くない気がして、先輩を意識しないようにしていたら自然と克服していた。

「あ、先輩……」

律仁さんではなくて少しガッカリしたが、
大樹先輩とこうやって普通に話せているのは大分進歩したと思う。

「最近、サークルに顔出してて偉いじゃないか」
「そんなことないです。みんなにとっては当たり前なので……」

「みんな渉太は話しやすいからいいって褒めてるぞ」

「ありがとうございます。みんな優しいので。大樹先輩にも感謝してます」

渉太は深々と頭を下げる。
自分を肯定されて素直に嬉しい。
人と人が関わりを持つだけで、こんなにも生活に華が溢れてワクワクするんだと思い返させてくれる。

「渉太が楽しそうでこっちまで楽しくなるよ」なんて大樹先輩に言われては、そんなに自分の感情が表に出ていたのかと渉太は照れ笑いをした。

「そういえば……最近先輩、彼女さんといるの見ないですよね」

先輩の彼女さんを見たのも天体観測の日が最後だった。
声を掛けずとも何度か大樹先輩を見つけていたが、彼女さんと一緒の姿を見かけてない。

特に深い意味などなく、ただ単純に気になったので質問してみたが、大樹先輩は「あーそれな」と罰が悪そうに頭を搔いていた。

先輩にしては珍しく、どこか目線が合わずして俯きがち。

「別れたんだ 」

「え?」

あんなに仲良さ良さそうで、美男美女のカップルだったのに驚いた。
余りの予想外のことに、思わず口が開く。
時が止まったように口を開けては、間抜け面を晒していると、自分は聞いてはいけないことを聞いてしまったのだと我に返った。
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