憧れはすぐ側に

なめめ

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それは突然に…

12-3

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慌てて自分の失言を訂正するように何度も大樹先輩に向かって頭を下げる。

「す、すみません。失礼なこと聞いてしまって……」

「大丈夫。そんな酷く傷心してるわけじゃないし、俺も彼女をおざなりにしてたとこもあったから、仕方ないよなーってところだ 」

怒っている様子はないが苦笑いのような先輩の表情がやけに痛々しい。渉太にとっては、例え人の失恋であっても胸が締め付けられる思いでいた。好きだった人のなら尚更。

「……先輩にいい人、見つかるといいですね……」

先輩を励まそうと思うのに在り来りな言葉しか浮かばない。あんなに先輩には優しい言葉をかけてもらえたのに...申し訳なさで胸がいっぱいになりながらも大樹先輩は微笑みながら「そうだなー」と言っては、テレビの中の歓声が気になったのか、「何見てるんだ?」と渉太の手元のスマホを覗き込んできた。

先輩に見えるように180度に本体を回すと
丁度、律のアップ画面になり、「あー浅倉律か。いいよなー」と呟いていた。
律とは縁もゆかりも無さそうな大樹先輩でも名前だけは知っていて悪い印象を与えない芸能人であることは最早、ファンとして誇らしい。

番組で10秒食レポを振られたのか慌てた様子で「んーうまいっ」なんて言って食レポにもなっていない感想だが、恥ずかしげにはにかんでいる姿が母性をくすぐって、「女性にとっては可愛いー」ってなるんだろうなーと思いながら見ていた。
その律のはにかみがつい最近見たような気がしてドキッとした。

そしてふと、今、密かに会いたいと思っている律仁さんの顔が浮かぶ。目の前の大樹先輩なら律仁さんのこと知っているかもしれない……。

別に訊いたからどうってことは無いし、忙しいならそれはそれで良かった。
ただ、「遠慮しない」と宣言しておきながら音沙汰がないのが気になっただけ。

律を見ていて一文字違いの律仁さんのことを思い出した渉太は、それとなく律仁さんのことを訊いてみることにした。

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