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 大学に入りたての時を考えようとしたら、乗り換えの駅についた。今日は朝からやけに、自分の人生を振り返る。マンガだったら、過去回想と呼ばれるやつだ。過去回想と修行編は、やけに嫌われる。


 私は、マンガの中でとても好きな部分なのだが。人間は過去があって、今がある。それは、キャラも同じだと思う。修行編にしたって、何もしなくてもドンドン強くなっていく主人公にシンパシーは感じれない。だから、最近のマンガは、ストーリーの流れの中で修行を入れ込んでいて、すごいなと思う。


 そんなことを頭に思い浮かべていると、電車がやってくる。最寄りの大学の駅まで、かなりの駅をとばしてくれるので、同じ大学の人であふれてる。最近は、肌寒い日と蒸し暑い日が交互にくる夏の手前ぐらいなので、格好はそれ程おしゃれでもない。


 長袖か、そこに何かを羽織るくらいだ。だが、目立つのは髪だ。ピンクや緑なんかを普通に見かける。最近は、茶色に毛先でカラフルなのを混ぜる人が多い。私は髪のことがよく分からない。


 たまに長くなって鬱陶しくなったら、いつも行く床屋で切ってもらう。1万に近づいたり、それを超えてくる美容室とは縁が全くない男だ。正直、行ってみたいが、怖くて行かないまま人生を終える気がしている。だから、配信の切り抜きの動画で、海外の人は黒髪を美しいと思っているなんて話を聞いたときは嬉しかった。


 大学生では、髪を染める方が多数派で、黒のままでいるなんてのは少数派だ。否応なしに、それがコンプレックスのように感じてくる。


 電車は、いくつもの駅を飛ばして行く。爽快だ。周りを見渡すと、ほとんどの人がスマホを見るか、音楽を聞くかしている。私は、音楽を外で聞かない。なんだか、周りに音が漏れていないか、何か周りで起きていないか、などと気になって集中できない。


 スマホを見るのも、あまり長くはやらない。これも誰かに画面を見られていないか、などと気になって集中できないのだ。こう見ると、ほんとに気にしいな人間なのがよく分かる。電車は目的の駅に着き、大学へと歩く。


 途中に川があり、普段なら癒やされるのだが、この川だけはそうならない。この川を見るたびに、あぁ長い授業だ…と憂鬱な気持ちになっていく。大学構内のいつもの棟に入り、授業へと向かう。ここで自分のほとんどの授業は行われる。棟に入って、すぐにあるエスカレーターで階を上がる。だだっ広い教室へと入り、授業が始まる。
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