桜は狂気に魅入られる

秋月朔夕

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(早く終わらせてしまおう)
  そう思っているのに実際に行動しようとすると躊躇ってしまうのはどうしてなのか。
 (だって、やりたくなんかないだもん)
  顔を見るだけでも嫌な相手のモノなんか触りたくもない。それなのに自分の口で取り出して奉仕しなければいけないだなんて、この現実からも本当に逃げ出したくなってくる。


  ――あんな事故なんかなければ……
 両親さえ生きていればわたしは祖父に引き取られることもなく御堂と関わることはなかった。
  こんなこと考えても仕方ないと知っている。だから、いい加減腹をくくらなければならない。



 「……ああ、ベルトは口だけで取るのは中々大変ですよね。これだけは私が自分で外してあげましょう」
  中々動かないわたしにとぼけたフリをして、早くしろと促してくる御堂にわたしも諦めた気持ちで顔を近づけて、歯でジッパーを下す。それだけの作業なのに、中々ジッパーが下りることはなく、無様に何度も彼の性器に顔を擦り付けることとなった。
 「……っ、」
  スラックス越しでも生々しく感じる熱さに驚いて、反射的に距離をとろうとしたがそんなことをしては前に進むことはできない。なんとか堪えるしかないのだ。
 「良い子ですね」
  御堂に褒められてもちっとも嬉しくない。
 (今、だけなんだから)
  金具を下すために何度も御堂のモノに頬を擦りつけて、なんとか彼の性器を取り出した頃にはわたしの涎で所々彼のスラックスが色濃く変色してしまった。間近で見る男の欲望はなんだかおどろしくて逃げるように目を瞑る。こんなモノがわたしのナカに入っているなんて信じられなかった。
 「ほら、さくら。私に『ご奉仕』しないなら悪戯しますよ?」
 「っ、ひっ……んっ」
  躊躇うわたしの様子が面白くなかったからなのか突然御堂がわたしの秘所に足を置き刺激を与える。そのはずみで御堂のモノが少しわたしの口に入ったのだ。そしてそれを逃すまいと彼の手がわたしの頭を固定し、口から出すことは許されなかった。
 「ふふっ、お嬢さんは淫乱ですから、刺激は強い方が好みですよね」
  違う、そう言いたいが口に含まれている状態では否定することも出来ない。甘い痺れとなりわたしの身体を熱くしていく。じれったいほど弱くした刺激かと思いきや、親指で引っ搔くように秘豆を嬲り始められると身体に電気が走ったかのように頭が真っ白になっていく。耐えられなくて声を出そうとするが口が塞がれているために舌が彼のモノを押すように刺激を与えてしまうだけだった。
 (頭が、おかしく、なる……)
  考えるための酸素が足りない。クラクラと眩暈がしているのに、淫らな水の音が脳内にはっきりと聞こえてきて、自分の反応が信じられなかった。
 「胸も舐めたり撫ぜられたりするよりも、引っ搔かれたり摘みあげた方が大きく反応するんですから……知っていますか、お嬢さん? そういうのを『スキモノ』と言うのですよ」
  ひどい侮辱に思い切り睨み付けようと見上げれば、彼は鞭を手にしていた。
 「っんん!」
  恐ろしい予感がして頭を振って逃げようとするが、そんなことで離してくれるほど優しい男ではない。狼狽えるわたしが心底いとおしいという眼差しのままに鞭を身体になぞらせてく。露出の多いメイド服では、直に冷たい革の感触がして肌が泡立つ。そしてそのまま自身の欲望をわたしの口から引き抜いたかと思うとすぐにわたしを四つん這いにさせ、秘所に鞭の柄を咥えこませたのだ。
 「ふっ……ぅうっ、んんっ」
  いくら細いといっても慣らされてはいないそこへ挿入されればある程度の痛みはある。そう思っていたのにスルリと自分のナカに収まったことが信じられない。
 (これじゃあ、本当に……)
 「やっぱりお嬢さんは淫乱ですね」
  嫌だ。こんなのわたしじゃない。そう思いたい。しかし、彼が言葉で嬲ってくるたびに意識をせざるを得ないのだ。


  ――御堂によってわたしの身体は造り変えられてしまったのだと……


「ほら、さくら。咥えこんでいるだけではいつまでも終わりませんよ」
  そんなこと分かっている。邪魔をしているのは御堂ではないか。それなのに鞭でわたしを甚振っている御堂に対してえづくことしか出来ないわたしは一体なんなのか。
 (いっそこのまま噛み切ってしまったら……?)
  むくむくと反抗心が湧き起こる。しかし、そんなことをしてしまっては学校に行けなくなる。仕方なく舌先で先端をチロチロと舐めとると男はようやく鞭を動かすのを止めた。
 (苦い)
  しょっぱいような生臭い雄の臭いに嫌気がさすが、止めてはいけない。こんなものただの肉の塊だと思えばいいのだ。早く終わらせてしまおう。息もせずになにも感じないようにして先端を軽く吸いながら舌先を転がすように舐めれば、彼のモノがピクリと反応するのが分かる。
 「ふ、どこで覚えたんです? 中々お上手ではありませんか」
  嬉しくもない褒め言葉なんかにいちいち反応してやらない。先ほどよりも口をすぼめてくびれの部分を刺激してやる。そうすると口の中で御堂の脈がドクンと弾け、一段とそれが硬くなるのが分かる。
 (感じているんだ……)
  普段自分をかき乱している存在がわたしの行動一つで息を荒げているさまを見るといささか気分が良くなって、作業に集中する。しかし、その慢心がいけなかった。
 「私なんかのご奉仕はお嬢さんにとっては余裕ですか。それは、いけませんねぇ……」
  眉間の皺をそのままに、彼の腰が突き動いたと思ったら喉の奥までねじ込んできたのだ。
  息も出来ない苦しさに吐き出そうとするが、髪の根まで指で絡まれてそれはかなわず、舌で防御するしかない。しかしそれでも喉の奥まで好きに抉られてしまい、あまりの苦しさに生理的な涙が出てきた。そんなみっともない姿が彼の征服欲を刺激したのか、さらに荒っぽく揺すってきたのだ。
 「嗚呼、やっぱりお嬢さんはそういう顔が一番似合いますよ。ふふ……私のためにもうちょっと頑張ってくださいね」
  なんと性格が悪いのか。けれど、なにもかもままならない状況なのにいつしか御堂が腰の動きを調節してわたしの呼吸を少しだけ確保出来るようにしていることや、そっと髪を撫でる仕草がいやに甘いこと気付いてしまった。いつもならば不快なだけなのに、今の状況では何故か嫌悪感が沸かない自分が嫌で無理矢理行為に集中させた。
 「っ、そろそろ、出してあげましょう――さぁ飲みきってくれたら学校に行ってもいいですよ」
  その言葉に強く反応したが、御堂が今まで強く掴んでいたわたしの頭を突然離したのだ。その反動により顔が外れなければ、勢いのまま彼の精液を飲みきっていたかもしれない。しかし現実は顔面に彼の白濁したモノを叩きつけられただけだった。
 「……卑怯者っ!」
  しばらく呆然とした後に、結果を思い知り罵倒してやる。彼は最初からわたしを学校に行かせる気なんかなかったのだ。そうでなければ、いきなり離すまい。
 「私から離れようとするからです。お嬢さんがいけないのですよ?」
  ちっとも悪びれることもなく嬉しそうに顔を綻ばせる御堂は、やはり狂っているとしか言いようがない。
 「さぁ、お嬢さん。私から逃げようとした罰を受けてもらいましょうか」
  その言葉に自分が彼の逆鱗に触れていたのだと知る。


  ――ああ、わたしは馬鹿だ。
  なぜ、彼にお願いなんかしたのだろう。
  彼が叶えるわけなんかないのに……



 わたしは全てに絶望して静かに涙を流す。
  そしてわたしはその夜初めて抵抗することもなく彼に抱かれたのだ。
  もう逃げるなんて無駄だと思い知ったから。


  
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