蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十三章 三姉妹

13ー5 エドナサイド

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 あたし達はようやく、帝都ナウザへ到着したんだよ。……だけど。

「これは……、想像していたよりも、酷いな」
「被害は甚大ではないな」

 はうう。以前、訪れた、帝都ナウザが、崩壊されているんだよ。

「なんていうか。あちら、こちらに、焼け跡があるのに、匂ってくるのは生ゴミの匂いッス」

 何だか、スイレンさんの喋り方が苦しそうなんだよ。

「何だか気分が悪いみたいだわ~。だいじょぶ?」
「いや! 大丈夫ッス! 大丈夫ッス」

 『大丈夫』といっても、スイレンさんの顔色がよくないんだよ。

「そう言えば、スイレンさんのお国は、綺麗な街だらけでしたよね。恐らく、このゴミだらけの環境には合わないでしょう」

 帝都ナウザが、この悲惨な状態になる前でも、凄く汚い街だったんだよ。生ごみ、みたいな、臭い匂いも、してきたんだよ。対して、スイレンさんの故郷のロランス聖国は、綺麗な街が多いんだよ。悪臭もしなかったんだよ。だけど、床から壁まで、鏡の代わりになるぐらい、綺麗に磨くため、あたしはよく転ぶんだよ。はうう、一度転んだら、再度立とうとしたら、また転ぶんだよ。

「ああ、いや、大丈夫ッス。本当に大丈夫ッス」
「全然、大丈夫には見えないんだよ!」

 はうう。スイレンさん、無理していないと、いいんだけど。

「カチュア! 来ていたんだね」

 そこには、ロゼッタさんの姿があったんだよ。カチュアさんの幼馴染で、八騎将の一人シグマの部下なんだよ。

「ロゼちゃんだわ~。無事だったのね~」
「妾達もいるぜ」

 ロゼッタの隣には、マリンさんとアイラさんもいたんだよ。

「よかった! 無事だったんですね」
「何とか」

 皆、無事でよかったんだよ。

 あれ? ルナちゃんの目が怖いんだよ。まるで、危険種や魔物があたし達を襲い掛かってくるような目をしているんだよ。

 そう言えば、マリンさんの隣に誰かいるんだよ。あの人は確か……。

「というか、何で! 兄様もいるんですか!」

 そうなんだよ! ルナさんのお兄さんのアルヴスさんなんだよ。アルヴスさんも無事だったんだね。

 マリンさんがアルヴスさんの腕を掴んでいるんだよ。仲良しなんだね。

「その辺にあったんだぜ!」
「離れなさい! この泥棒狸!」

 ルナちゃんがマリンちゃんの腕を引っ張っているんだよ。帝都で流行っている遊びかな?

「この二人は、何を、争っているんだ?」
「気にしないほうがいいと思うよ」

 メリアさんとアニーさんが困惑している見たいなんだよ。

 アルヴスさんがメリアさん達に近づいたんだよ。

「一応、ルナからポッポ便で知らしてくれたから、状況は把握している。勿論、ロゼッタや、ついでに皇女様にも。あなた方には迷惑を掛けました」
「まあ、悪いのは有痛の聞かない連中だ。今は我々の問題を解決しましょう」
「勿論!」
「それよりも、こいつは?」
「ああ、こんな状況なのに、悪さする輩が後を立たないから、見つけ次第、捕らえていっているんだ」

 はうう。アルヴスさん、犯人さんを連行中なんだね。……だけど。

「それは、素晴らしいことですが、何で、踏み潰しているんですか?」

 アルヴスさんは、その悪いことをした人を踏みつぶしているんだよ。

「え? 確かに、連行中だが、そんな奴、どこにいるのですか?」

 あれ? アルヴスさんには見えないのかな?

「それより、見ない子がいますね」
「こいつも、スルーしやがった」
「もしかして、手紙で書いてあった、ナギ? いや、サリナか」
「あ~、どーもー」
「何で、カチュアの後ろに隠れるんだ?」

 サリナさんは、カチュアさんの背中へ隠れちゃったんだよ。どうしたのかな?

「くそ!! ドラゴン!! 私の宿を壊されてたまるか!!」

 はうう? 無事の建物の前に、騒ぎながら、箒を振り回す女の人がいたんだよ。あの建物は宿なんだよ。それに、あの女の人は……

「モニカだわ~」
「あの人はニニカさんですよ、エドナさん」

 そっか! アヴァルの街で、宿を経営しているのがモニカさんだったんだよ。で、ニニカさんは、モニカさんの双子のお姉さんなんだよ。無事でよかったんだよ。

「てか、何であの人の宿屋は破壊されていないんだ?」
「何でも、必死に宿を守っていたみたいだね」
「あの人も戦えるのか?」
「まあ、荒くれ者達を泊めさせるぐらいだから、戦えるぐらいがないと、やっけいけないでしょ」
「何て、言うか、私がまだ、サリナだった時代よりも、強い人が多くなってきたような」
「よーし、私も、ドラゴン倒しにいくッス!!」

 スイレンさんは、武器の鉄扇を取り出したんだよ。

「やばい、スイレンがおかしくなってきた! 早く、帝都からでないと」
「ところで皇帝様は?」

 はうう。今でも暴れ出しそうな、スイレンさんをほって置いてルナちゃんが、アルヴスさんと話しているんだよ。

「それが行方不明になっている」
「え? こんた時に何やっているんだ? てか、マリンは皇女だろ? 何で、まだ、ここにいるんだ?」
「それが、ある人からの伝言で現在、この騒動を利用して、偽物の皇女様が現れたらしいんだ。現在は、ゲス兄の命のもと、指名手配をしているんだ」
「でも、それはマリンさんには関係ないんじゃ」
「嵌められたか」
「そうなんだ」
「今の妾では、役に立ってない。このまま、ダグザに向かう」
「ドラゴンに気をつけながら向かいましょ」
「私も丁度、シグマ様からの命で、ドラゴンに襲われそうな村の避難誘導を行うよ言われている。途中まで、私も同行しよう」
「また、よろしくね~」

 ロゼッタさんも同行することになったみたいなんだよ。

「待って!!! 泥棒!!」

 声がする方へ振り向くと、三人組の人達が、一人の男性に追われているんだよ。

 三人組の方は、大きな荷物を持って走っているんだよ。

 泥棒って、村長さんが言うには、人の物を奪う悪い人なんだよ。ということは、大きな荷物を持って走る三人組の人達が泥棒ってことかな? 盗んだら、逃げるって聞くんだよ。

「逃すか!!」

 アルヴスさんは、泥棒と呼ばれる人達目掛けて、何かを投げつけたんだよ。その何かは、投げるところを見ていなかったから、よく見えなかったんだよ。投げた物は、速過ぎて、見えないんだよ。

「取り敢えず、わたしも、何か、投げるわ~」
「じゃあ、私もッス!」

 カチュアさんは大剣、スイレンさんは鉄扇を投げつけたんだよ。

 ドーーーン!!!

 アルヴスさんが投げ付けた物が、泥棒さんの内一人にぶつかったんだよ。

 ドーーーン!!! バッコ!!!

 カチュアさんの投げた、大剣は、泥棒さんを追い越して、泥棒さんの目の前に落ちて、地面に突き刺さったんだよ。突然、現れた大剣だから、止まることができないで、地面に刺さった大剣にぶつかったんだよ。あの大剣は、ソフィアさんの背丈と、同じぐらいの大きさがあるから、頭部分を除いた、全身を思っきし、大剣にぶつかったんだよ。そのまま、背中から倒れたんだよ。

 ドーーーン!!! スパーーーン!!!

 スイレンさんが投げた鉄扇はもう一人の泥棒さんに命中したんだよ。だけど、服が破れて、丸裸になったんだよ。靴も切れたから、裸足の状態だから、上手く走ることができないんだよ。裸足で小石や建物の瓦礫を踏んで痛そうなんだよ。

 泥棒さんが、怯んでいる隙に、カチュアさんが投げた、鎖で泥棒三人組を全身巻きつけたんだよ。投げた、鎖で体周りを巻き付けちゃうなんて、カチュアさんはやっぱり器用なんだよ。

「ルナも、捕まえるのを手伝いたかったです」
「あんたは、やめとけ!! 悲惨なことになる!!」
「捕まえたのはいいが、アルヴスは何で、罪人を投げつける!?」

 はうう! よく見たら、アルヴスさんが取り押さえた泥棒さんの近くには、アルヴスさんが連行していた犯人さんがいたんだよ。

「他に投げつけるものがなかったから」

 アルヴスさん、笑顔なのに、なんか、怖いんだよ。

「これが、外道殺しで、有名なアルヴスか」
「何それ、アニー?」
「市民を守ることや、任務をこなすあまりに、罪人に気遣いしている暇がないから、罪人の扱いが雑なんだ。アルヴスに捕まったら、半殺しにされるって、言われているんだ?」
「逆に捕まらないのか?」



 アルヴスさんは、泥棒三人組を連れていったんだよ。だけど、連れて行く時は、三人とも、地面に引きづられていったんだよ。

 一方、あたし達は帝都の外へ。

「ああ。やっと、出れるッス! さあ、早くここから出るッス」

 スイレンさんが、今まで見たことがなかった、爽やかな表情をしているんだよ。

「必死だな」
「時間がない、出発しましょう」

 あたし達は、帝都ナウザを後にしたんだよ。

「カチュアさん! どうしたんですか?」
「強い視線を感じるわ~。……だけど」
「だけど?」
「この場にいる感じがしないのよ~。もっと、ここから遠いところから、見られている感じがするわ~」
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