【完結】魔法師は騎士と運命を共にする翼となる

鳴海カイリ

文字の大きさ
2 / 55

媚薬の力 ※

しおりを挟む
 

「ひぁあ、あ!」

 何の慣らしもせず強引に入り込んでくる。
 押しのけられた内側に、本来なら痛みと苦しみしかないはずなのに確かな快感が走った。声が、抑えられない。

「ああっ、あ……あぁ!」
「すげぇ……今日も、絡みついてくる」

 鼻で笑いながらモーガンが一気に奥まで突き上げた。
 最奥を突かれた衝撃に、私の背が反る。息が詰まる。体中を駆け抜けた痺れるような快感に、咥えた彼を締め付けた。

「ははっ、もう……イっちまったのかよ。まだ入れただけだぜ」

 私の耳元に唇を寄せて、満足気な声で囁いた。
 これで終わらせてくださいと……思う気持ちは声にならない。
 彼の言葉が続く。

「さぁ、もっとおねだりしてみろよ」
「モ……モーガン……さま」
「言ってみろ」
「お願い……で、す……」

 これ以上は……。

「わたし……を、きもちよく……して……ください」

 切れ切れの息に交じって、彼が喜ぶ言葉を口にする。
 ふふっ、と笑う声がうなじにかかった。

「大切な俺の片翼のお願いだ。聞き入れないわけにはいかないな」

 そう呟くと同時に、一気に抜き差しを始めた。
 いたわりの欠片もない乱暴な動き。だというのに、その乱暴さが気持ちよくて、私は喘ぎ声を止められない。

「は……ぁあ、あ、や……あ!」
「ここが気持ちいいんだろ?」

 どこが、という場所なんかない。媚薬の力で彼が触れるすべてに快感が走り、シーツをきつく握りしめて声を上げる。
 怖くて、悲しいと思う心を塗りつぶすかのように、快感の波が襲いかかってくる。
 私自身は何度も達して、腹の下のシーツを白く汚していた。

「すげぇな、相変わらず。お前とヤると魔力も流れ込んでくる」

 無意識なのだろう。
 快感で制御を失っているせいで私の中の魔力が流れていく。それが酒に酔ったような、夢のような快感を相手にも与えるのだと、彼は笑いながら言っていたことがあった。

「ああっ! あ、そこを……」
「ここがいいんだよな」

 抜き差しの感覚が短くなっていく。
 彼は一度をゆっくり楽しむ、というタイプではない。挿入したなら一気に突き上げ早々に達してしまう。それで満足すれば事は終わるのだけれど、一度で済むということは無い。

「もっと声を上げろよ。気持ちいいと言いながら、心の中では別のことを考えているんだろ?」

 私の心を見透かすように、彼が覆いかぶさり囁いてきた。
 突き上げられ揺すられながら息を吐く。

「そのよう……な」
「俺のことだけ考えろ」
「ああっ! ひ、あ!」
「お前のすべては俺のものだ。体も、魔法も……心も、な?」
「……ぁあ!」

 首筋に歯を立てる。
 噛み切られそうな恐怖が襲い、それがまた快感となって彼を締め上げる。

「お前と契約した、主人のことだけ考えていろ」
「は、ああっ! あ、ああっ!」
「俺の名を呼べ、セシル」

 彼が達しようとしている。
 激しい突き上げに揺さぶられながら、私は涙を滲ませ声を漏らす。

「モーガン……さま……」
「そうだ。今の気持ちを言ってみろ」
「……モ……ガン、さま……き……」

 快感で神経が焼き切れそうだ。
 けれど言わなければ彼は満足してくれない。それどころか後でお仕置きを受けてしまう。

「言え、お前の考えていることを」
「き、気持ちいい……です、モーガンさま、ああっ……」
「ふふっ……」
「気持ちいい、気持ちいい……です、モーガンさま……あ、もっと!」

 涙があふれる。

「もっと……可愛がって……くだ、さい……注いで……あなたの」
「ああ、たっぷりと注いでやるぜ……」
「ひ、あぁぁ!」

 言うと二度三度と深く突き上げ、彼の動きが止まる。
 体の中に熱いものが広がって、私は軽く痙攣しながら快感の波に震えていく。頭の芯がじんじんと痺れている。思考がほどけていく。
 ただ……息をするだけで精一杯で……。

 彼も軽く息を切らせながら、再び覆いかぶさりながら呟いた。

「気持ちよかっただろう? セシル」
「は、い……」
「もっと欲しいか?」

 首を横に振りたい。
 けれどそんな力もなく、それどころか媚薬の力が私に次の快感を求めるように、体の中を疼かせていく。

「……く、ださい……」

 もっと、もっとください。
 この疼きが収まるまで。
 収まることなどないと分かっていても、彼が満足すれば置いて行かれるとわかっていても懇願する。

「お願い、もっと……きもちよく……して……」
「ふふっ……」

 満足気な声で彼が笑う。

「本当にお前は、やらしい奴だな……」

 囁いて、彼は私の中から抜くことなくまた動き始めた。
 溢れた彼の精が押し出され音を立てる。それすらも耳に気持ちよくて、最初からこんなふうにされたかったのではないかと思えてくる。
 再び波のように押し寄せる快感に声を上げた。

「ふぁあ……あ、ああっ……」
「まだまだ、可愛がってやるよ……セシル」

 このまま欲望の中に堕ちてしまってもいい。
 そう思う気持ちに飲み込まれながら、二度、三度と精を注がれ、気が付けは窓辺のロウソクは燃え尽きていた。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。 他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、 両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。 フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。 丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。 他サイトでも公開しております。 表紙ロゴは零壱の著作物です。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

処理中です...