19 / 68
第一章:聖女から冒険者へ
18.蒼い月
しおりを挟む
私は部屋に備えられているバルコニーから外に出て、周囲の景色をただ眺めていた。
外は完全に夜の闇に包まれていて、蒼い月が一際綺麗に輝いていた。
私のいた世界では月と言えば黄色だったが、この世界の月は蒼い。
初めて見た時は少し違和感を覚えたけど、闇夜に浮かぶ蒼い月は幻想的でとても綺麗だ。
そして蒼白い優しい光を眺めていると、心の奥が自然と穏やかになれるような気がする。
(最初は違和感しかなかったけど、蒼い月って綺麗だな)
「ルナ、夜風に当たり過ぎていると体に良くないよ」
背後からイザナの心配する声が聞こえて来て、私は体を少し傾け後ろを振り向いた。
「うん。もうちょっとだけ」
私は短く答えると、再び視線を蒼い月の方へと向けた。
ここからだと奥に広がる海も一望出来て、その上に輝く蒼い月がより映えて幻想的に見える。
私は心を落ち着ける為に月を見始めたのだが、気付けばあの蒼い月に心が囚われてしまったようだ。
「やっぱり、少し体が冷たいな。ここにもう暫くいるつもりならば、私がルナのこと温めてあげようかな」
「……っ」
私が月の方へと顔を向けていると、ふわっと背後が温かくなり包む様に抱きしめられていた。
突然の事に私の心臓は跳ね上がり、バクバクと激しく脈打っている。
落ち着き始めた私の鼓動は、この行為によって一瞬で変えられてしまった。
(ドキドキしているのがイザナに伝わりませんようにっ……)
私は心の中でそんなことを思い、鼓動を落ち着かせようとしていた。
「暗くても分かるよ。ルナが顔を染めているのは」
「そんなこと、ないっ! イザナも見て見なよ! 蒼い月が綺麗だよっ」
私は慌てるように答え、月の方へと注意を逸らせようと咄嗟に天を指さした。
「そうだな。ここからだと反射して海が光っているように見えるね」
「うんっ」
「あの月も十分魅力的だけど、私にはより輝いて見える月はルナの方かな」
「……っ、いきなり変なこと言わないでっ!」
突然そんな事を言われ、私の頬は徐々にのぼせ上っていく。
「可愛いな、照れているの?」
「やっ、耳元で、囁かないでっ……」
イザナの唇が私の耳元に触れ囁かれると、私はビクッと体を震わせた。
(耳はだめっ……!)
「ふふっ、ルナの耳少し熱いようだね。やっぱり赤くなっているのかな」
「もうっ、からかわないでっ……っん」
イザナの愉し気な聞こえて来て言い返そうとすると、首筋にチクっとした痛みが走った。
「なに、してるの?」
「ルナは月を見ていたらいいよ。私はこちらの月を味わわせて貰おうかな」
イザナはさらりと答えると、私の首筋にキスを落としていく。
その度に私の体はぴくっと反応してしまう。
「ぁっ、ちょっとやだっ、こんな所でっ……」
「大丈夫だよ。夜だし誰も気付かない」
バルコニーから見下ろすと、明日の準備をまだしている人達の姿が目に入った。
こんな所を誰かに見られたら、という思いに羞恥心が煽られる。
(こんな所で嫌……)
「はぁっ、イザナっ……まって、っん」
「ルナが声を出さなければ気付かれないよ。顔こっちに傾けて。その可愛い唇は塞いであげる」
イザナの言葉に私は困った顔を横に傾けると、そのまま直ぐに唇を奪われた。
「んんっ……」
「やっぱりルナの唇は甘いな」
イザナは私の唇を味わうように、挟んだり舐めるように口付けていく。
お互いの唇が重なる度に、そこから熱が生まれ顔の奥がじわじわと火照っていくのを感じる。
「本当にルナは可愛いな。もっと私にこの月を味わわせて」
「はぁっ、……ん」
イザナの舌が私の咥内へと入り込んできて、絡める様に深い口付けへと変わっていく。
口の中が熱くなって来て体温がどんどん上がり、その度に私の胸の高鳴りは強くなる。
もっと欲しいという気持ちに駆られてしまう。
「ルナ、キスをするの上手くなったね」
「……っ!!」
私は気付けば夢中で自らも絡めていた。
我に返るとそんな行為をしていた自分自身が急に恥ずかしくなり、イザナから離れようとするも「逃がさないよ」と言われ再び深く唇を塞がれる。
「……っんん!!」
息が出来なくなるくらい咥内の中を乱されて、苦しいはずなのに心が満たされていく。
私は息苦しさから瞳を潤ませ、目をぎゅっと瞑った。
激しいキスでもう周りの事なんて気にする余裕もなくなり、ただ貪るようなキスを受け止めるのに必死だった。
「はぁっ……」
漸く唇を解放されると私は蕩けきった顔を浮かばせ、力が抜けてイザナの腕にぎゅっとしがみ付く。
彼は私が倒れないように、しっかりと腰を支えてくれていた。
「少し激しくし過ぎたかな。もう外は冷えるし、そろそろ中に戻ろう。ベッドまで運んであげるよ」
イザナはそう優しい声で囁くと、私の事を横向きに抱き上げてバルコニーを後にした。
私はイザナに抱きかかえられながら、視界から見えなくなるまで蒼い月を眺めていた。
外は完全に夜の闇に包まれていて、蒼い月が一際綺麗に輝いていた。
私のいた世界では月と言えば黄色だったが、この世界の月は蒼い。
初めて見た時は少し違和感を覚えたけど、闇夜に浮かぶ蒼い月は幻想的でとても綺麗だ。
そして蒼白い優しい光を眺めていると、心の奥が自然と穏やかになれるような気がする。
(最初は違和感しかなかったけど、蒼い月って綺麗だな)
「ルナ、夜風に当たり過ぎていると体に良くないよ」
背後からイザナの心配する声が聞こえて来て、私は体を少し傾け後ろを振り向いた。
「うん。もうちょっとだけ」
私は短く答えると、再び視線を蒼い月の方へと向けた。
ここからだと奥に広がる海も一望出来て、その上に輝く蒼い月がより映えて幻想的に見える。
私は心を落ち着ける為に月を見始めたのだが、気付けばあの蒼い月に心が囚われてしまったようだ。
「やっぱり、少し体が冷たいな。ここにもう暫くいるつもりならば、私がルナのこと温めてあげようかな」
「……っ」
私が月の方へと顔を向けていると、ふわっと背後が温かくなり包む様に抱きしめられていた。
突然の事に私の心臓は跳ね上がり、バクバクと激しく脈打っている。
落ち着き始めた私の鼓動は、この行為によって一瞬で変えられてしまった。
(ドキドキしているのがイザナに伝わりませんようにっ……)
私は心の中でそんなことを思い、鼓動を落ち着かせようとしていた。
「暗くても分かるよ。ルナが顔を染めているのは」
「そんなこと、ないっ! イザナも見て見なよ! 蒼い月が綺麗だよっ」
私は慌てるように答え、月の方へと注意を逸らせようと咄嗟に天を指さした。
「そうだな。ここからだと反射して海が光っているように見えるね」
「うんっ」
「あの月も十分魅力的だけど、私にはより輝いて見える月はルナの方かな」
「……っ、いきなり変なこと言わないでっ!」
突然そんな事を言われ、私の頬は徐々にのぼせ上っていく。
「可愛いな、照れているの?」
「やっ、耳元で、囁かないでっ……」
イザナの唇が私の耳元に触れ囁かれると、私はビクッと体を震わせた。
(耳はだめっ……!)
「ふふっ、ルナの耳少し熱いようだね。やっぱり赤くなっているのかな」
「もうっ、からかわないでっ……っん」
イザナの愉し気な聞こえて来て言い返そうとすると、首筋にチクっとした痛みが走った。
「なに、してるの?」
「ルナは月を見ていたらいいよ。私はこちらの月を味わわせて貰おうかな」
イザナはさらりと答えると、私の首筋にキスを落としていく。
その度に私の体はぴくっと反応してしまう。
「ぁっ、ちょっとやだっ、こんな所でっ……」
「大丈夫だよ。夜だし誰も気付かない」
バルコニーから見下ろすと、明日の準備をまだしている人達の姿が目に入った。
こんな所を誰かに見られたら、という思いに羞恥心が煽られる。
(こんな所で嫌……)
「はぁっ、イザナっ……まって、っん」
「ルナが声を出さなければ気付かれないよ。顔こっちに傾けて。その可愛い唇は塞いであげる」
イザナの言葉に私は困った顔を横に傾けると、そのまま直ぐに唇を奪われた。
「んんっ……」
「やっぱりルナの唇は甘いな」
イザナは私の唇を味わうように、挟んだり舐めるように口付けていく。
お互いの唇が重なる度に、そこから熱が生まれ顔の奥がじわじわと火照っていくのを感じる。
「本当にルナは可愛いな。もっと私にこの月を味わわせて」
「はぁっ、……ん」
イザナの舌が私の咥内へと入り込んできて、絡める様に深い口付けへと変わっていく。
口の中が熱くなって来て体温がどんどん上がり、その度に私の胸の高鳴りは強くなる。
もっと欲しいという気持ちに駆られてしまう。
「ルナ、キスをするの上手くなったね」
「……っ!!」
私は気付けば夢中で自らも絡めていた。
我に返るとそんな行為をしていた自分自身が急に恥ずかしくなり、イザナから離れようとするも「逃がさないよ」と言われ再び深く唇を塞がれる。
「……っんん!!」
息が出来なくなるくらい咥内の中を乱されて、苦しいはずなのに心が満たされていく。
私は息苦しさから瞳を潤ませ、目をぎゅっと瞑った。
激しいキスでもう周りの事なんて気にする余裕もなくなり、ただ貪るようなキスを受け止めるのに必死だった。
「はぁっ……」
漸く唇を解放されると私は蕩けきった顔を浮かばせ、力が抜けてイザナの腕にぎゅっとしがみ付く。
彼は私が倒れないように、しっかりと腰を支えてくれていた。
「少し激しくし過ぎたかな。もう外は冷えるし、そろそろ中に戻ろう。ベッドまで運んであげるよ」
イザナはそう優しい声で囁くと、私の事を横向きに抱き上げてバルコニーを後にした。
私はイザナに抱きかかえられながら、視界から見えなくなるまで蒼い月を眺めていた。
0
お気に入りに追加
2,459
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです
鳴宮野々花@初書籍発売中【二度婚約破棄】
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。
十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。
そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり──────
※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。
※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる