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6.二度目のキスは突然に②

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 正直に答えてしまったが、言ってしまったことに少し後悔し始めていた。
 もっと別の言い訳を伝えていれば、このピンチを上手く切り抜けられたかもしれない。

 そんなことを考えていると、唇に温かい何かが触れていた。
 驚いて瞳を開けると、目の前には綺麗な彼の顔があり、何をされているのかすぐに理解した。
 先程触れた時は氷のように冷え切っていたというのに、今は温もりを感じる。
 突然のことに思考が止まり、私は抵抗すること無くその口付けを受け入れていた。
 温かくて気持ちがいいと思ってしまう。

「先程から感じていたが、お前……、すごく甘くていい匂いがするな」
「……っん」

 彼は何度も私の唇を味わうように、啄むようなキスを繰り返してくる。
 ちゅっというリップ音が響き、自分が何をされているのか気付いているのに、頭はふわふわとして抵抗することを忘れてしまっている。

(さっきのと全然違う……。なにこれ、すごく気持ちいい)

 こんな風に誰かと唇を重ねたのは、初めてのことだった。
 柔らかい唇に吸われ、重なった場所から熱に溶かされていくような感覚。
 何度もキスを繰り返されていくと頭は熱に浮かされ、私の表情はいつの間にか蕩けきった顔へと変わっていた。
 そして何度目かのキスの後、ゆっくりと唇が剥がされていく。

「そんな表情も出来るんだな」
「……っ!!」

 ぼーっとしていた意識がゆっくりと戻ってくると、目の前には優しく微笑んでいる彼の顔があった。
 それに気付いて、再び私の顔は熱を持ち始める。
 そして戸惑って目を泳がせてしまう。

「面白いな、お前。気に入った。私の名前はもう知っているとは思うが、ユーリと呼んでくれて構わない。私はお前のように鑑定眼は持っていない。だから名を教えてはくれないか?」
「……セラ、です」

「セラか。可愛らしい名だな」
「……っ」

 可愛らしいと言われて照れていると、彼はクスッと小さく笑った。

「名を褒めたくらいで照れるなよ」
「お世辞だってことくらい、分かっていますっ!」

 笑われたことに恥ずかしくなり、私はムッとした顔で言い返してしまう。
 すると更に笑われてしまい、私は戸惑っていた。

「ぷっ」
「……っ!?」

「誰もそんなことは言っていない。本気で可愛らしい名だと思ったから言ったまでだ。私は世辞なんて普段はあまり言わないからな。覚えておくといい」
「……っ」

「また顔が赤くなった。本当に分かりやすい反応をするのだな」
「もう、からかわないでくださいっ! それにそろそろ退いてくださいっ!」

 私が睨み付けると、彼は「そうだったな」と呟き私の手を解放し離れてくれた。
 漸く距離を置くことが出来て、私はほっとしていた。
 先程は怖い印象しか無かったが、話してみると意外と気さくで話しやすい相手なのかもしれない。

 だけど、明らかに格上の相手なので、完全に敵でないと分かるまでは油断はしないほうがいいだろう。
 それから……、いきなりキスをされて、変に意識してしまうのをどうにかして欲しい。
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