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数分後――
顔から血の気が失せたラディッシュが、仄暗い森の奥から千鳥足でフラフラと戻って来た。
その姿は、さながらゾンビ。
「い、生きてるのかぁい、ラディ……? まさか死人じゃないだろうねぇ……」
珍しく本気で気遣うラミウムに、ラディッシュは精気の感じられない表情と声で、
「ひ……」
「ひ?」
「人を殺せるレベルだよ……」
「そ、そぅかい……」
冗談半分にでも「食ってみろ」と言った事を後悔していると、ラミウムの膝枕で横になっていた「青い顔したドロプウォート」が、カッと両眼を見開き飛び起き、飛び起きるなり、
『ごめんなさい! ごめんなさぁい!! ごめんなさいですわぁあぁあぁぁあ!!!』
二人を前に土下座。
大泣きしながら頭を何度も上げ下げ、
「実は知識はあってもぉ「調理」と言う物をした事が無かったのですのぉおぉぉおぉ!」
得心が行った様に、
「あぁ……」
弱弱しくポンと手を打ち鳴らす、青い顔したラディッシュ。
「いるよねぇ……試験の成績『だけ』良い人ってさぁ……」
「あぁ、いるなぁ~試験の成績『だけ』やたらと良いヤツってなぁ~」
同じ目に遭わされかけたラミウムに批判のジト目を向けられたが、
「うぅ……」
自ら調理を志願した挙句にやらかした手前、反論の余地も無いドロプウォート。
「もぅし訳ぇありませんですわぁ……」
猛省する姿に、ラミウムはヤレヤレ顔で小さくため息を吐き、
「でぇ? 実際の話、飯はどうすんだぁい?」
すると少しばかり回復したラディッシュが、
「ドロプウォートさんは、食べられる食材の「知識」はあるんですよね?」
「はい……『知識だけ』は、ありますわぁ……」
申し訳なさげに身を縮め、その卑屈な物言いに、
(責めるつもりで聞いた訳じゃなかったんだけどぉ)
苦笑い。
(余計なフォローを入れても、今は「傷口に塩」かなぁ)
思い直し、
「それならもう一度、食材になりそうな物を採って来てもらえますか?」
「…………」
うつむいたまま返事がない。
「こ、今度は僕が挑戦してみますからぁ♪」
明るく笑って見せると、
「……分かりましたわぁ……」
首席誓約者候補生の四大貴族令嬢は言葉少なにうつむいたまま、ヘタレ勇者に促されるがまま、背中に哀愁を漂わせながら森の奥へと消えて行った。
木枯らしでも吹きそうな哀しげな後ろ姿に、
(だ、大丈夫、なのかなぁ……?)
不安げに見送っていると、
『なぁ、ラディ』
呼ばれて振り返るとラミウムが訝しげな表情で、
「アンタに料理なんて出来んのかぁい? アタシぁ(アンタに)そんな上等なスキルを振った覚えは無いんだけどねぇ?」
「ん? う~~~ん…………」
問われてしばし黙考し、
「分かんない」
「はぁ?!」
「いやぁ、何となぁく出来そうな気がするんだぁ」
(何となくぅだ?!)
露骨に、不安げな顔するラミウム。
容易とまで言い放った挙句の「ドロプウォートの惨事」の後なだけに、警戒するのも無理からぬ話ではあるが、心中を察したラディッシュは笑顔を交え、
「いやだってぇホラぁ、僕には記憶が無いからぁさ! それに……」
視線を何かに落とし、
「それに?」
釣られて視線を落とし、
「「…………」」
二人は皿代わりの葉の上で未だ蠢く「奇怪な手料理」に目を移し、
「コレよりは「マシ」だと思うよ……」
「確かに……」
意外な形で初となる意気投合を見せた。
顔から血の気が失せたラディッシュが、仄暗い森の奥から千鳥足でフラフラと戻って来た。
その姿は、さながらゾンビ。
「い、生きてるのかぁい、ラディ……? まさか死人じゃないだろうねぇ……」
珍しく本気で気遣うラミウムに、ラディッシュは精気の感じられない表情と声で、
「ひ……」
「ひ?」
「人を殺せるレベルだよ……」
「そ、そぅかい……」
冗談半分にでも「食ってみろ」と言った事を後悔していると、ラミウムの膝枕で横になっていた「青い顔したドロプウォート」が、カッと両眼を見開き飛び起き、飛び起きるなり、
『ごめんなさい! ごめんなさぁい!! ごめんなさいですわぁあぁあぁぁあ!!!』
二人を前に土下座。
大泣きしながら頭を何度も上げ下げ、
「実は知識はあってもぉ「調理」と言う物をした事が無かったのですのぉおぉぉおぉ!」
得心が行った様に、
「あぁ……」
弱弱しくポンと手を打ち鳴らす、青い顔したラディッシュ。
「いるよねぇ……試験の成績『だけ』良い人ってさぁ……」
「あぁ、いるなぁ~試験の成績『だけ』やたらと良いヤツってなぁ~」
同じ目に遭わされかけたラミウムに批判のジト目を向けられたが、
「うぅ……」
自ら調理を志願した挙句にやらかした手前、反論の余地も無いドロプウォート。
「もぅし訳ぇありませんですわぁ……」
猛省する姿に、ラミウムはヤレヤレ顔で小さくため息を吐き、
「でぇ? 実際の話、飯はどうすんだぁい?」
すると少しばかり回復したラディッシュが、
「ドロプウォートさんは、食べられる食材の「知識」はあるんですよね?」
「はい……『知識だけ』は、ありますわぁ……」
申し訳なさげに身を縮め、その卑屈な物言いに、
(責めるつもりで聞いた訳じゃなかったんだけどぉ)
苦笑い。
(余計なフォローを入れても、今は「傷口に塩」かなぁ)
思い直し、
「それならもう一度、食材になりそうな物を採って来てもらえますか?」
「…………」
うつむいたまま返事がない。
「こ、今度は僕が挑戦してみますからぁ♪」
明るく笑って見せると、
「……分かりましたわぁ……」
首席誓約者候補生の四大貴族令嬢は言葉少なにうつむいたまま、ヘタレ勇者に促されるがまま、背中に哀愁を漂わせながら森の奥へと消えて行った。
木枯らしでも吹きそうな哀しげな後ろ姿に、
(だ、大丈夫、なのかなぁ……?)
不安げに見送っていると、
『なぁ、ラディ』
呼ばれて振り返るとラミウムが訝しげな表情で、
「アンタに料理なんて出来んのかぁい? アタシぁ(アンタに)そんな上等なスキルを振った覚えは無いんだけどねぇ?」
「ん? う~~~ん…………」
問われてしばし黙考し、
「分かんない」
「はぁ?!」
「いやぁ、何となぁく出来そうな気がするんだぁ」
(何となくぅだ?!)
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容易とまで言い放った挙句の「ドロプウォートの惨事」の後なだけに、警戒するのも無理からぬ話ではあるが、心中を察したラディッシュは笑顔を交え、
「いやだってぇホラぁ、僕には記憶が無いからぁさ! それに……」
視線を何かに落とし、
「それに?」
釣られて視線を落とし、
「「…………」」
二人は皿代わりの葉の上で未だ蠢く「奇怪な手料理」に目を移し、
「コレよりは「マシ」だと思うよ……」
「確かに……」
意外な形で初となる意気投合を見せた。
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