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25 お断り
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「ああ、僕の方も断っておいたから」
「えっ!? 先生の方にも依頼が来てたんですか?」
話のついでのような口調でジークボルトはクッキーを頬張りながらしゃべった。
「昨日の夜遅くね。マリロイド王国じゃなくて帝国からだけど」
「帝国から?」
「よっぽど恩を売りたいんだねぇ~まぁあの魔物の森は魅力的だしねぇ」
魔物の森に魅力を感じる日が来るなどレミリアには信じられなかった。アレはレミリアが18年間暮らした国では恐怖の代名詞のようなものだった。
「レミリアには悪いけど、僕今研究が忙しくって」
確かにここ半月ほど、ジークボルトは部屋にこもることが多かった。
「俺が行きましょうか?」
ついさっき影武者は嫌だと言ったばかりなのにアレンは自分から手を挙げた。彼はレミリアが故郷をすっぱり切り捨てられないことに気が付いていたのだ。
「ん~一番弟子が国外追放されている身で連れていけないから……って言っちゃった!」
「ええ!?」
「師匠一人でいいからって言われたんじゃ?」
「言われたけど、範囲が広くて一人じゃやだって言っちゃった!」
(言っちゃった言っちゃったって……)
「先生……お膳立てはしていただかなくて大丈夫です……」
「えへ? わかった?」
「わかりますよ!」
レミリアはあの謝罪の手紙の後で気が付いたのだ。
「国外追放の件は!?」
その文書には何も触れられてなかった。
「普通罪状も取り消すでしょ!!!」
「だな」
「あのクソ国王ゴラァァァ!!! てめぇの息子が作った冤罪だろうがぁぁぁ!!!」
マリロイド王国側が本気で忘れていたのか、あえて嫌がらせをしているのか判断はつかなかったが、自分がいまだに王国では罪人だというのが許せなかった。
「そういえば僕も昔冤罪かけられたことがあってさ~不意に思い出したらちょっとムカついて、お手伝いをと思って」
「昔っていつですか……」
「忘れちゃった!」
かわいこぶる年齢不詳の大賢者をみてレミリアは力が抜けてしまった。
「まあ我が帝国の魔術師団だけでなんの問題もありません。ご安心ください」
フロイドはレミリアに向けていつものように優しく言ってくれた。
「昨日の夜遅くって……誰か来たっけ?」
レミリアはアレンと夕食を取りながら、ふっとよぎった疑問を尋ねる。
「ああ、俺ら以外だと皇帝だけが師匠と直通できる魔道具持ってんだよ。深夜に連絡って言ったら皇帝からと思っていい」
「じゃあ皇帝は本気で魔物の森を取りに行ってるのね」
例の治療薬をレミリアの都合で渡してしまったことに少々罪悪感が湧いてしまう。あの時自分が断っていたらすでに帝国は魔物の森に出入り出来ていただろうか。
(いや、でもあの国王いつも判断が遅いからな。その時はもう国内に病気が蔓延してたかもしれないわ)
そうして余計なことを考えるのはやめた。
(考えても無駄なことね)
何か心に引っ掛かりがある日でも、レミリアは夜眠れるようになっていた。アレンはその事を、
「師匠の良いとこがうつったな」
と言っていてた。
一方マリロイド王国では安眠できない人が続発していた。
「手紙が送り返されただと!?」
「も、申し訳ありません!」
レミリアの父親は大汗をかきながら国王に頭を下げていた。
「自分の娘一人言うことを利かせられないのか!?」
王は怒りに任せて公爵を責め立てた。最近は上手くいかないことだらけだ。
「手紙は息子が書きまして……」
「なぜお前が書かない!?」
「私よりはマシだと思ったのです……」
レミリアの父親は娘と息子の関係性をよくわかっていなかった。姉弟の関係など興味もなかったたのだ。封も明けられず突き返されるとは思いもしていなかった。
「これから何かある度に帝国に頼むわけにはいかないのだぞ!? このままではその内、魔物の森をよこせといってくるに決まっている!」
「……アルベルト様が娘を国外追放にされたのではないですか!」
あまりにも理不尽に責められ、ついに公爵も反論し始めた。だが周りは誰もそれを止めることはしない。彼らも最近は王の不機嫌さに辟易としていたのだ。
「なんだと!? それはお前も承諾していたことだろう!」
「なにも国外追放にする必要などなかったのです! 謹慎で十分な内容ではないですか! あのような内容で国外追放など恐怖政治の始まりだと民の噂になっています! ご存知ないのですか!?」
もうここまで言ったら何を言っても同じだと思ったようだ。
「だいたい私の娘が優秀であるからこそ大賢者との繋がりを持つことができ、件の薬も手に入れられたのではありませんか! 陛下の功績ではなく私の娘の功績です! 我が家の功績です! そのことをお忘れなきよう!!!」
「き、貴様……! この者を牢へぶち込め!!! 不敬罪だ!!!」
「この国難の時期にそのようなことを!」
さすがに周囲も止めに入ったが、もう遅かった。王も公爵も顔を真っ赤にして今にも殴り合いが始まりそうだった。
「頭を冷やせ!!!」
王の一声に返事をすることはなく、公爵は鼻息荒くずんずんと大股歩きをしながら自分の足で牢へと向かっていった。
王国が少しずつ崩壊していく音が遠くで聞こえ始めた。
「えっ!? 先生の方にも依頼が来てたんですか?」
話のついでのような口調でジークボルトはクッキーを頬張りながらしゃべった。
「昨日の夜遅くね。マリロイド王国じゃなくて帝国からだけど」
「帝国から?」
「よっぽど恩を売りたいんだねぇ~まぁあの魔物の森は魅力的だしねぇ」
魔物の森に魅力を感じる日が来るなどレミリアには信じられなかった。アレはレミリアが18年間暮らした国では恐怖の代名詞のようなものだった。
「レミリアには悪いけど、僕今研究が忙しくって」
確かにここ半月ほど、ジークボルトは部屋にこもることが多かった。
「俺が行きましょうか?」
ついさっき影武者は嫌だと言ったばかりなのにアレンは自分から手を挙げた。彼はレミリアが故郷をすっぱり切り捨てられないことに気が付いていたのだ。
「ん~一番弟子が国外追放されている身で連れていけないから……って言っちゃった!」
「ええ!?」
「師匠一人でいいからって言われたんじゃ?」
「言われたけど、範囲が広くて一人じゃやだって言っちゃった!」
(言っちゃった言っちゃったって……)
「先生……お膳立てはしていただかなくて大丈夫です……」
「えへ? わかった?」
「わかりますよ!」
レミリアはあの謝罪の手紙の後で気が付いたのだ。
「国外追放の件は!?」
その文書には何も触れられてなかった。
「普通罪状も取り消すでしょ!!!」
「だな」
「あのクソ国王ゴラァァァ!!! てめぇの息子が作った冤罪だろうがぁぁぁ!!!」
マリロイド王国側が本気で忘れていたのか、あえて嫌がらせをしているのか判断はつかなかったが、自分がいまだに王国では罪人だというのが許せなかった。
「そういえば僕も昔冤罪かけられたことがあってさ~不意に思い出したらちょっとムカついて、お手伝いをと思って」
「昔っていつですか……」
「忘れちゃった!」
かわいこぶる年齢不詳の大賢者をみてレミリアは力が抜けてしまった。
「まあ我が帝国の魔術師団だけでなんの問題もありません。ご安心ください」
フロイドはレミリアに向けていつものように優しく言ってくれた。
「昨日の夜遅くって……誰か来たっけ?」
レミリアはアレンと夕食を取りながら、ふっとよぎった疑問を尋ねる。
「ああ、俺ら以外だと皇帝だけが師匠と直通できる魔道具持ってんだよ。深夜に連絡って言ったら皇帝からと思っていい」
「じゃあ皇帝は本気で魔物の森を取りに行ってるのね」
例の治療薬をレミリアの都合で渡してしまったことに少々罪悪感が湧いてしまう。あの時自分が断っていたらすでに帝国は魔物の森に出入り出来ていただろうか。
(いや、でもあの国王いつも判断が遅いからな。その時はもう国内に病気が蔓延してたかもしれないわ)
そうして余計なことを考えるのはやめた。
(考えても無駄なことね)
何か心に引っ掛かりがある日でも、レミリアは夜眠れるようになっていた。アレンはその事を、
「師匠の良いとこがうつったな」
と言っていてた。
一方マリロイド王国では安眠できない人が続発していた。
「手紙が送り返されただと!?」
「も、申し訳ありません!」
レミリアの父親は大汗をかきながら国王に頭を下げていた。
「自分の娘一人言うことを利かせられないのか!?」
王は怒りに任せて公爵を責め立てた。最近は上手くいかないことだらけだ。
「手紙は息子が書きまして……」
「なぜお前が書かない!?」
「私よりはマシだと思ったのです……」
レミリアの父親は娘と息子の関係性をよくわかっていなかった。姉弟の関係など興味もなかったたのだ。封も明けられず突き返されるとは思いもしていなかった。
「これから何かある度に帝国に頼むわけにはいかないのだぞ!? このままではその内、魔物の森をよこせといってくるに決まっている!」
「……アルベルト様が娘を国外追放にされたのではないですか!」
あまりにも理不尽に責められ、ついに公爵も反論し始めた。だが周りは誰もそれを止めることはしない。彼らも最近は王の不機嫌さに辟易としていたのだ。
「なんだと!? それはお前も承諾していたことだろう!」
「なにも国外追放にする必要などなかったのです! 謹慎で十分な内容ではないですか! あのような内容で国外追放など恐怖政治の始まりだと民の噂になっています! ご存知ないのですか!?」
もうここまで言ったら何を言っても同じだと思ったようだ。
「だいたい私の娘が優秀であるからこそ大賢者との繋がりを持つことができ、件の薬も手に入れられたのではありませんか! 陛下の功績ではなく私の娘の功績です! 我が家の功績です! そのことをお忘れなきよう!!!」
「き、貴様……! この者を牢へぶち込め!!! 不敬罪だ!!!」
「この国難の時期にそのようなことを!」
さすがに周囲も止めに入ったが、もう遅かった。王も公爵も顔を真っ赤にして今にも殴り合いが始まりそうだった。
「頭を冷やせ!!!」
王の一声に返事をすることはなく、公爵は鼻息荒くずんずんと大股歩きをしながら自分の足で牢へと向かっていった。
王国が少しずつ崩壊していく音が遠くで聞こえ始めた。
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