【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

文字の大きさ
24 / 63

24 実家

しおりを挟む
 マリロイド国王ギルバートはまた迷っていた。隣国ベルーガ帝国へ支援を求めるかどうか。あちらからは許可をもらえばすでにいつでも支援に向かえるという書簡が届けられていた。
 国民のことを考えれば今すぐにでも決断すべきことだ。なのに書簡が届けられて2日経っても悩んでいた。

「陛下! どうかご決断を!」
「しかし……魔物の森の交渉が……」
「致し方ありません。穀物への水どころか、のどの渇きで死ぬものが相次ぎ始めているのですから……」
「そうだな……」

 そうしてやっと重い腰を上げたのだった。

「アルベルトからの提案も考えねばなるまい」
「大賢者ジークボルト様を我が国へお招きになる話ですか?」
「そうだ。例のパーティではなんとか挨拶はできたが、レミリア嬢への対応をチクリと言われて終わっただけだった……」

 そしてその後のレミリアとの会談で自分の印象は決していいものではないとわかっていた。しかも彼女との約束をまともに履行しなかったことも、今ではもうわかっているだろう。

(まさかこんなことになるとは……)

 こんなに早く、再び彼女の力を借りなければならないとは考えていなかったのだ。

「大賢者様は水不足に備えて大型の魔道具も作られてるという話です。今後のことを考えても、我が国に必要なものでしょう」

 王の側近達はすでにかなり下調べをしていた。だからこそ、前回のレミリアとの約束であった謝罪文を誠実に書いていなかったこと……誠実に書くよう強く提言しなかったことを悔やんでいた。

「……パーティで大賢者様は随分レミリア様を可愛がってらっしゃったと伺いました」
「ああ、だから彼女の願いを聞いて治療薬の製造方法を無償で教えてくれたのだろう」

 その場にいた全員がそうだろうと頷いた。

 実際はレミリアが彼の弟子だろうがそうでなかろうが、ジークボルトは無償で薬の製造方法を提供していた。彼にはすでに莫大な財産があるし、正直その薬が結果的にいいことに使われるのであれば、そのこと以外何も気にならなかった。
 だが、本物のジークボルトの性格を知っているのはごくわずかな人間だけだ。隣国の人間にそれを知る術などなかった。ベルーガ帝国はジークボルトの性格がわかっているからこそ、彼に接触できるものを制限していたし、必ず把握できるようにしていた。
 だから、こっそりとレミリアに送った手紙は全てベルーガ帝国は把握していたのだった。

「ご実家の公爵家から手紙を出していただくのはどうでしょうか? あちらの領地も被害を受けているはずです」
「……そうだな。話してみよう」


 ベルーガ帝国のジークボルトの屋敷では今日もフロイドがレミリアに大量の手紙を届けていた。

「熱いラブレターが7通、レミリア様に弟子入りしたいというお手紙が3通、そしてご実家から1通届いております」
「はあ!? 実家!? 誰の!? 私の!!?」

(今更なに!?)

 少し前にアルベルトの従者グレンからも手紙が届いていた。読まずに返したが今度は実家からとは……。

「身内が倒れた~とかそんなんじゃねえの?」
「……フロイドは中身みてるんでしょ?」

 アレンもレミリアも封筒の中に何が書かれてあるか想像していた。フロイドは肩をすくめていたので、アレンの予想は外れのようだった。
 フロイドは頻繁にジークボルトの屋敷に出入りするようになって、今ではレミリアとフロイドは友達のような関係になっている。

「まあ、私からはなんとも言えない内容なので……」
「えええ……」

 レミリアは嫌そうに手紙を指でつまんだ。

「……この字、ロニーだわ」
「弟か」

 レミリアは3秒ほど考えて答えた。

「読みませーーーん!!! 悪いけど返しておいて!」
「承知しました」

 フロイドは苦笑いしていた。

「どうせ、干ばつで領地が大変だから助けて~~~大賢者ジークボルトに話通して~~~って内容でしょ」

 不貞腐れるように言い捨てたレミリアをみて、皆が笑った。

 レミリアは最近、自分の心に従って生きるようにしていた。明らかに読むだけでストレスが溜まりそうなこの手紙に触れるのも嫌だった。だから読まないという選択をした。

「おお! だいぶ好きに生きるようになってきたね!」

 ジークボルトは嬉しそうだ。

「師匠、俺も好きに生きたい。師匠の影武者やりたくない」
「それはだめでーす! それだけは師匠権限で禁止しまーーーす!」
「はあ~~!? ずるっ!」
「アレンが誰かの師匠になったら同じようにすればいいよ!」

 大賢者はいつも通り大笑いをしていた。

「師匠って好きに生きるのと自分勝手に生きるのを混在してるよなぁ~」
「言うね~! まあその通り! そのために得た権力だからね!!!」

 レミリアは領地のことが気にならないわけではなかった。だけどもう自分をすり減らして誰かを助けるのはやめた。馬鹿にされるのも軽く扱われるのもまっぴらごめんだった。

「私と話したきゃ、まずは菓子折り持って謝りにこい! って伝えてくれる?」
「ふふ……わかりました」

 さあ、弟はプライドを捨てて動けるだろうか。

(まあ言い訳ばっかのアイツじゃそれは無理ね)

 レミリアが思った通り、それ以上実家から連絡が来ることはなかった。 
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした

由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。 無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。 再び招かれたのは、かつて母を追放した国。 礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。 これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。

処理中です...