巫女と勇気の八大地獄巡り

主道 学

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それも罪悪感?

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 ぐんぐんと地上が目の前に迫ってくる。その中で、大地の端にある広々とした血の池を発見した。 

「やったぞ! 見つけた!! 無事に落ちることがきる場所は、そこしかない! あそこへ落ちればいいんだ!!」

 俺は音星と一緒に身体を斜めにして、風を受けることによって軌道修正を徐々にしていく。
 
 そうこうしていると、猛スピードで血の池が迫ってきた。

 急速に迫り来る湖面の前で、俺はさすがに音星をかばいながら目を閉じてしまった。強い衝撃と共にドボンっと、派手な水の音がして、俺たちの身体が血の池の赤い水で一瞬で真っ赤に染まり出したような感じがした。目を開け、両手に力を入れて、音星の身体を強く抱き寄せたまま俺は、すぐそばの下流を流れている透明な水の川まで泳いでいった。

 綺麗な川になんとか、音星と一緒に辿り着くと、ゆっくり西へと流れている穏やかな水の流れに身を任せた。

 それから俺たちは流れに流れて、白い花がたくさん咲いている岸にたどり着いた。俺と音星の身体中からは、血の池でついてしまった赤い色はなくなったけど、その代りムッとくる血の臭いがするようになってしまった。

 岸で俺は音星を横たえてから、立ち上がった。
 
「大叫喚地獄……なんかここも……殺風景だな。いや、でも何故か静かになってる」
「火端さん。……本当にありがとうございます」

 音星が目をパッと開けて、横になっている状態で岸の周りに生えている花々を見回した。そして、肩にぶら下がった布袋を確認しながら、ゆっくりと立ち上がる。

「……火端さん。私、少しだけ気を失っていました。助けてくれて、本当にありがとうございました」

 音星は俺に向かって頭を深々と下げた。

「い、いや……当然なことだったから……って、ひょっとして、音星は洞穴から落ちてからのことを全然覚えていないのかい? ずっと目を閉じていたままだけだったけど?」
「……ええ、ずっと夢の中でお花畑にいました」
「ふぅー、まあ、それはいいか。お互いなんとか助かって良かったよな」
「ええ」

 音星は辺りに、半透明な人型の魂も獄卒もいないのを不思議がっている。俺もそれは不思議に思っていたんだ。

 それから、音星はゆっくりと肩に掛けていた布袋から古い手鏡を取り出すと、割れていないかと色々な角度から見つめはじめた。
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