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無自覚美少年の男子校ライフ♪
連鎖を断ち切れ!
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「さて、どうするか、だな」
ようやく落ち着いた僕は、候が持ってきてくれていた自分の制服に着替え、やっと一息つく。
そんな僕を見て、先輩が腰に手を当てて、縛られた状態の木村先輩たちを見下ろしていた。
「どうするかってなんだよ! こいつを解け! だいたいな、伸之助だって気持ちよさげに善がってた…ぐえっ! ゲホッガホッ」
先輩が容赦ない力で蹴り上げたせいで、木村先輩は体をくの字にして咳き込んだ。
「誰だってあんな目に遭えばそうなる。伸之助だけじゃない」
きっぱりと強い力で先輩に言われ、強張りかけていた僕の気持ちが少しだけ解れた。
だけどまだ木村先輩たちの姿は見れない。今彼らの顔を見たら気が変になりそうで怖かった。
僕は未だに小刻みに震える体を何とか止めたくて、両手にぐっと力を入れて握りしめていた。
「伸之助」
先輩がゆっくりと振り返り、真剣な目で僕を見る。
その唯ならない雰囲気に、僕の心臓がキュッとなった。
「こいつらを学校側に突き出そう」
凛とした先輩の声が響いた。
「え…」
蓮先輩の言葉に、ここに居る皆が固まった。
候たちは心配そうに僕を見て、木村先輩たちは驚愕の表情で蓮先輩の顔を凝視していた。
「こいつらは変わらない。前の…、被害者が泣き寝入りしたせいで味を占めたんだ。しかもあいつは何も悪い事はしていないのに、こんな奴の顔を見続ける事に耐えられなくなって結局転校して行った。なにも悪いことなんてしていないのにだ…!」
「先輩…」
「伸之助」
先輩が、僕の肩をガシッと掴む。
「俺はお前に、そんな目には合って欲しくない。お前は何も悪くないし、俺もずっとそばにいる。そばにいてお前を守るから」
「…先輩」
力強く引き寄せられて、背中を擦られた。
「大丈夫。大丈夫だから」
あやすように何度も何度も囁かれ、背中を宥めるように擦られて、僕の心も少しずつ緩みかけた。
堅くずっと握りしめていた両手の力を抜いて、先輩の背中にすがりつく。
気が付いたら僕は、先輩にすがりついたまま大声で泣き叫んでいた。
◇◇◇◇
結局、先輩はコンテストの進行を副会長に最後まで任せて、木村先輩たちの担任と僕の担任の佐賀先生を一葉に呼んできてもらった。
僕は先生には、両親への報告は必要ないことだけをお願いした。
佐賀先生はそれは構わないとした上で、僕の心が傷ついていないか、それに対してご両親にも気にかけてもらう事が必要ではないかとそちらの方を気にしてくれていた。
「大丈夫です。俺が傍に付いて中田君のことをケアしますし、それに彼には良い友人達がここに居ますから」
佐賀先生にそう言った後、「な?」と候たちを振り返り、同意を求める。
それに対し候たちは、「はい!」と真剣な表情で先生に返した。
「候…、浩太…」
2人が凄く良い奴で、僕のことを考えてくれている事は分かっていたけれど、こんな風に改まってそのことを知らされて、僕の胸の中から暖かいものがぶわっと溢れ出した。
また泣き出してしまった僕に、候も浩太も、「なに泣いてんだよ」とか「泣き虫だな」とか言いながらも、僕の頭を優しく撫でてくれた。
うう~。余計に涙が出ちゃうんだけどぉ。
ぐちゃぐちゃになった僕を優しく乱暴にあやす彼らを見て、先生は「じゃあ頼んだぞ」と候たちに言った。
そして改めて僕の方を向く。
「中田、理事長に報告はしないといけないから、コンテスト終了後に理事長室に来なさい」
「えっ!?」
理事長って、伯父さん!?
「せ、先生…。あの…」
「…言いたい事は分かる。だけど退学処分も辞さない状況なのだから、これは、まあ、しょうがない事だ。…諦めろ」
「~っ。……」
ああ、もう…。なにが悲しくて、自分が襲われたことを伯父さんに報告しなくちゃならないんだよ…。
あまりに落ち込む僕の姿に、蓮先輩が近寄ってきて、よしよしと慰めてくれた。
「俺もついて行こうか?」
「いえ、結構です!」
間髪入れずに反応する僕に、先輩が訝しい顔をする。
「なんだ? 別に俺は理事長の前で、変な事を言ったりしないぞ?」
「…、い、いえ。そうじゃなくて、ですね…」
ど、どうしよう。
そりゃ先輩がわざわざ伯父さんに僕と付き合ってるなんて報告するとは思わないけど、僕のことを小さなころから知っている伯父さんが、僕の態度を見て勘ぐっちゃうかもしれないしぃ…。
ダラダラと汗を掻く僕に、佐賀先生の衝撃的な一言。
「あれ、知らなかったのか? 中田は理事長の甥っ子だぞ?」
「「「「えーっ!?」」」」
ここに居る皆の声がこだました…。
ようやく落ち着いた僕は、候が持ってきてくれていた自分の制服に着替え、やっと一息つく。
そんな僕を見て、先輩が腰に手を当てて、縛られた状態の木村先輩たちを見下ろしていた。
「どうするかってなんだよ! こいつを解け! だいたいな、伸之助だって気持ちよさげに善がってた…ぐえっ! ゲホッガホッ」
先輩が容赦ない力で蹴り上げたせいで、木村先輩は体をくの字にして咳き込んだ。
「誰だってあんな目に遭えばそうなる。伸之助だけじゃない」
きっぱりと強い力で先輩に言われ、強張りかけていた僕の気持ちが少しだけ解れた。
だけどまだ木村先輩たちの姿は見れない。今彼らの顔を見たら気が変になりそうで怖かった。
僕は未だに小刻みに震える体を何とか止めたくて、両手にぐっと力を入れて握りしめていた。
「伸之助」
先輩がゆっくりと振り返り、真剣な目で僕を見る。
その唯ならない雰囲気に、僕の心臓がキュッとなった。
「こいつらを学校側に突き出そう」
凛とした先輩の声が響いた。
「え…」
蓮先輩の言葉に、ここに居る皆が固まった。
候たちは心配そうに僕を見て、木村先輩たちは驚愕の表情で蓮先輩の顔を凝視していた。
「こいつらは変わらない。前の…、被害者が泣き寝入りしたせいで味を占めたんだ。しかもあいつは何も悪い事はしていないのに、こんな奴の顔を見続ける事に耐えられなくなって結局転校して行った。なにも悪いことなんてしていないのにだ…!」
「先輩…」
「伸之助」
先輩が、僕の肩をガシッと掴む。
「俺はお前に、そんな目には合って欲しくない。お前は何も悪くないし、俺もずっとそばにいる。そばにいてお前を守るから」
「…先輩」
力強く引き寄せられて、背中を擦られた。
「大丈夫。大丈夫だから」
あやすように何度も何度も囁かれ、背中を宥めるように擦られて、僕の心も少しずつ緩みかけた。
堅くずっと握りしめていた両手の力を抜いて、先輩の背中にすがりつく。
気が付いたら僕は、先輩にすがりついたまま大声で泣き叫んでいた。
◇◇◇◇
結局、先輩はコンテストの進行を副会長に最後まで任せて、木村先輩たちの担任と僕の担任の佐賀先生を一葉に呼んできてもらった。
僕は先生には、両親への報告は必要ないことだけをお願いした。
佐賀先生はそれは構わないとした上で、僕の心が傷ついていないか、それに対してご両親にも気にかけてもらう事が必要ではないかとそちらの方を気にしてくれていた。
「大丈夫です。俺が傍に付いて中田君のことをケアしますし、それに彼には良い友人達がここに居ますから」
佐賀先生にそう言った後、「な?」と候たちを振り返り、同意を求める。
それに対し候たちは、「はい!」と真剣な表情で先生に返した。
「候…、浩太…」
2人が凄く良い奴で、僕のことを考えてくれている事は分かっていたけれど、こんな風に改まってそのことを知らされて、僕の胸の中から暖かいものがぶわっと溢れ出した。
また泣き出してしまった僕に、候も浩太も、「なに泣いてんだよ」とか「泣き虫だな」とか言いながらも、僕の頭を優しく撫でてくれた。
うう~。余計に涙が出ちゃうんだけどぉ。
ぐちゃぐちゃになった僕を優しく乱暴にあやす彼らを見て、先生は「じゃあ頼んだぞ」と候たちに言った。
そして改めて僕の方を向く。
「中田、理事長に報告はしないといけないから、コンテスト終了後に理事長室に来なさい」
「えっ!?」
理事長って、伯父さん!?
「せ、先生…。あの…」
「…言いたい事は分かる。だけど退学処分も辞さない状況なのだから、これは、まあ、しょうがない事だ。…諦めろ」
「~っ。……」
ああ、もう…。なにが悲しくて、自分が襲われたことを伯父さんに報告しなくちゃならないんだよ…。
あまりに落ち込む僕の姿に、蓮先輩が近寄ってきて、よしよしと慰めてくれた。
「俺もついて行こうか?」
「いえ、結構です!」
間髪入れずに反応する僕に、先輩が訝しい顔をする。
「なんだ? 別に俺は理事長の前で、変な事を言ったりしないぞ?」
「…、い、いえ。そうじゃなくて、ですね…」
ど、どうしよう。
そりゃ先輩がわざわざ伯父さんに僕と付き合ってるなんて報告するとは思わないけど、僕のことを小さなころから知っている伯父さんが、僕の態度を見て勘ぐっちゃうかもしれないしぃ…。
ダラダラと汗を掻く僕に、佐賀先生の衝撃的な一言。
「あれ、知らなかったのか? 中田は理事長の甥っ子だぞ?」
「「「「えーっ!?」」」」
ここに居る皆の声がこだました…。
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