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無自覚美少年の男子校ライフ♪
助けてくれた一葉
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「せんぱ…」
僕の声に蓮先輩がゆっくりとこちらを向いた。その眉をひそめた苦しげな表情に、自分の状態を思い出し慌てて飛び起きた。
たくし上げられていたエプロンも下に引っ張る。
だけど、これ以上先輩の目を見る勇気が無くて、レースの裾をギュッと握りしめながら僕は俯いていた。
どうしよう…。木村先輩にいいようにされている所をしっかり見られてしまった。
汚らわしいとか、もう僕の事なんていらないとかそんな風に思われてたら…。
ギュウッと胸が締め付けられるような痛みが走る。
嫌な汗が背中を伝い、体が震えだした。
ふわり。
…え?
体を固くして目をギュッと瞑った僕の体に、何かが覆う感触。
恐る恐る目を開けると、先輩が自分のコートを脱いで僕にかけてくれていた。
「先輩…」
「怖かったよな。助けに入るのが遅くなってごめんな」
相変わらず苦しげで、だけど僕を気遣う優しい瞳に、固まっていた体がゆっくりと弛緩していく。
頬を熱いものが流れ、それを先輩の親指でゆっくりとなぞられた。
「大丈夫、大丈夫だからもう泣くな」
「せんぱ…っ」
言われて初めてそれが涙だと気が付いた。しゃくりあげて泣き出す僕を先輩が思いっきり引き寄せて、力強く抱きしめてくれる。
「…っ。ふぇっ…。…、…。っ、こわ…っ、怖かった…、怖かったよ先輩…っ」
恐怖から解放された安堵と、先輩に嫌われてないと分かった安堵から、涙が次から次へと溢れ出す。先輩の手が宥めるように僕の背中をさすってくれるけど、この温もりから離れたくないと、僕は必死でしがみ付いていた。
「蓮さま…!」
「伸之助、大丈夫か!?」
大きな声と共にバタバタと近寄ってくる足音に顔を上げると、汗だくになった一葉と候と浩太が、ぜいぜいと肩で息をしながら開いた扉から入って来た。
「…大丈夫だ。すまないな、田端、水沢。悪いがそこに寝転がってる奴らが気が付く前に、そいつらのネクタイを外して後ろ手に縛ってくれないか」
「あ、はい」
僕らの所に駆け寄りかけていた候と浩太は、弾かれたように先輩の指示に従い、転がっている木村先輩たちのネクタイを外しにかかった。
「大丈夫だった?」
汗だくになり、真っ赤な顔をした一葉が僕の側に来て声をかけてくれた。
「う…ん」
気持ち的には全然大丈夫なんかじゃなかったけれど、それでも、本当にひどい目に遭う前に助けて貰えた。先輩にはどんなに感謝してもしきれない。
…あれ? だけど…。
今はコンテストの真っ最中で、先輩は司会の真っ最中だったよな。
どうやって僕の事、気づいてくれたんだろう。
不思議に思って先輩を見上げると、その気持ちに気づいたのか先輩が教えてくれた。
「伸之助が榑林に呼び出されている所を一葉が見ていたんだ。それで三人の後をつけて伸之助の拉致られた場所を教えてくれたんだよ」
え? 一葉が?
一葉って確か先輩のこと好きなんだよね?
それなのに、僕のこと助けてくれたのか?
「ごめんね。すぐに助けてあげられなくて。着替えの途中だったものだから、慌てて着替えて外に出た時にはもう、きみがあの二人に担がれて連れて行かれてるところだったんだ。僕一人では、とてもあいつらをやっつける事は出来ないし、かと言って助けを呼びに行ってる間にきみを見失ったら困ると思ったから…」
すまなそうな表情で、一葉が僕の手を握る。
「そんな、そんなこと無いよ。一葉が気づいてくれなかったら僕、どうなってたか分からないのに…。ありがとう、ごめん…。ホントにありがとう…」
情けなさと安堵と、色んなものが混ざり合って僕の感情はぐちゃぐちゃだ。
また涙がぼろぼろと溢れて来て、先輩に抱き寄せられてしまった。
皆の前で恥ずかしかったけど、僕の涙腺はしばらく壊れたままで、溢れ出したまま止まらなかった。
僕の声に蓮先輩がゆっくりとこちらを向いた。その眉をひそめた苦しげな表情に、自分の状態を思い出し慌てて飛び起きた。
たくし上げられていたエプロンも下に引っ張る。
だけど、これ以上先輩の目を見る勇気が無くて、レースの裾をギュッと握りしめながら僕は俯いていた。
どうしよう…。木村先輩にいいようにされている所をしっかり見られてしまった。
汚らわしいとか、もう僕の事なんていらないとかそんな風に思われてたら…。
ギュウッと胸が締め付けられるような痛みが走る。
嫌な汗が背中を伝い、体が震えだした。
ふわり。
…え?
体を固くして目をギュッと瞑った僕の体に、何かが覆う感触。
恐る恐る目を開けると、先輩が自分のコートを脱いで僕にかけてくれていた。
「先輩…」
「怖かったよな。助けに入るのが遅くなってごめんな」
相変わらず苦しげで、だけど僕を気遣う優しい瞳に、固まっていた体がゆっくりと弛緩していく。
頬を熱いものが流れ、それを先輩の親指でゆっくりとなぞられた。
「大丈夫、大丈夫だからもう泣くな」
「せんぱ…っ」
言われて初めてそれが涙だと気が付いた。しゃくりあげて泣き出す僕を先輩が思いっきり引き寄せて、力強く抱きしめてくれる。
「…っ。ふぇっ…。…、…。っ、こわ…っ、怖かった…、怖かったよ先輩…っ」
恐怖から解放された安堵と、先輩に嫌われてないと分かった安堵から、涙が次から次へと溢れ出す。先輩の手が宥めるように僕の背中をさすってくれるけど、この温もりから離れたくないと、僕は必死でしがみ付いていた。
「蓮さま…!」
「伸之助、大丈夫か!?」
大きな声と共にバタバタと近寄ってくる足音に顔を上げると、汗だくになった一葉と候と浩太が、ぜいぜいと肩で息をしながら開いた扉から入って来た。
「…大丈夫だ。すまないな、田端、水沢。悪いがそこに寝転がってる奴らが気が付く前に、そいつらのネクタイを外して後ろ手に縛ってくれないか」
「あ、はい」
僕らの所に駆け寄りかけていた候と浩太は、弾かれたように先輩の指示に従い、転がっている木村先輩たちのネクタイを外しにかかった。
「大丈夫だった?」
汗だくになり、真っ赤な顔をした一葉が僕の側に来て声をかけてくれた。
「う…ん」
気持ち的には全然大丈夫なんかじゃなかったけれど、それでも、本当にひどい目に遭う前に助けて貰えた。先輩にはどんなに感謝してもしきれない。
…あれ? だけど…。
今はコンテストの真っ最中で、先輩は司会の真っ最中だったよな。
どうやって僕の事、気づいてくれたんだろう。
不思議に思って先輩を見上げると、その気持ちに気づいたのか先輩が教えてくれた。
「伸之助が榑林に呼び出されている所を一葉が見ていたんだ。それで三人の後をつけて伸之助の拉致られた場所を教えてくれたんだよ」
え? 一葉が?
一葉って確か先輩のこと好きなんだよね?
それなのに、僕のこと助けてくれたのか?
「ごめんね。すぐに助けてあげられなくて。着替えの途中だったものだから、慌てて着替えて外に出た時にはもう、きみがあの二人に担がれて連れて行かれてるところだったんだ。僕一人では、とてもあいつらをやっつける事は出来ないし、かと言って助けを呼びに行ってる間にきみを見失ったら困ると思ったから…」
すまなそうな表情で、一葉が僕の手を握る。
「そんな、そんなこと無いよ。一葉が気づいてくれなかったら僕、どうなってたか分からないのに…。ありがとう、ごめん…。ホントにありがとう…」
情けなさと安堵と、色んなものが混ざり合って僕の感情はぐちゃぐちゃだ。
また涙がぼろぼろと溢れて来て、先輩に抱き寄せられてしまった。
皆の前で恥ずかしかったけど、僕の涙腺はしばらく壊れたままで、溢れ出したまま止まらなかった。
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