俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ

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新たな決意

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「良かった。畑山とは何もないって思ってていいんだよな、由羽人?」
「あ、当たり前だろ! 何言ってんだよ陽翔!」

演技過剰だよ!
畑山と何かあるわけなんて無いのに、まるで恋人を取られるんじゃないかって妄想にかられるまでしなくていいんだよ!

キュッ。
――トクン。

だだだ、だから! だからぁ!
いちいち反応するなよ、俺の心臓!

俺の、畑山とは何もないっていう全力の否定に、陽翔がふーっと息を吐きだして俺の両手をキュッと握る。そんな行動一つ一つに相も変わらず律義に反応を返すバカ心臓に、おれは全力で脱力するしかスベがない。

ううううう。

「なーんか、ちょっぴり残念だな」
「……なに?」

揶揄うような畑山の声に、陽翔が低い声で返す。

「べーつに? 陽翔が仲良くする相手は、恋愛感情を持たないからなのかなあって勝手に推測してたからさ。それが外れて残念だなーって思っただけ」

「…………」

揶揄ってるだけなのか、挑発しているのか想像もつかない畑山の発言に、陽翔が睨むように畑山を見ている。

「ハハ。そう睨むなよ。じゃあな、苺谷、陽翔も。また明日」
「あ、うん。バイバイ」
「…………」

片手を上げて去っていく畑山の背中を、陽翔は無言で睨み続けていた。

「陽翔、え~っとタイミング悪くてごめん。だって、まさかさ……」
「お前、あいつには注意しろよ? 気を許すんじゃないぞ」
「え? あ、うん。分かった」

やっぱ、畑山が俺らの事を探ってるんじゃないかって心配なんだな。

俺は陽翔に余計な心配をさせないように真顔でしっかり頷いたのに、そんな俺の顔を見た陽翔は、なぜだか微妙な顔をして「ホントにこいつ分かってんのかな……」と小さくつぶやいた。

……聞こえているぞ、陽翔!
頼りないかもしれないけど、これでも親友の端くれなんだ。
少しは信頼しろっての!

俺の失敗で陽翔を窮地に追いやらないようにしなければと、拳を握り締めて決意する。
綺麗でかっこよくて色っぽい親友を、邪なストーカー軍団から守ってやるんだ、うん。

……て、なんかカッコいいな俺。
か弱いお姫様を守る騎士みたいだ。ヘヘッ♪


「……ん」

「んっ!」

「もー! 由羽人ってば!」

「……え? は?」

いつのまにか自分の世界に入ってしまっていた俺の目の前で、陽翔が手を差し出して、まるでその手を取れと促すように何度も何度も小さく強く縦に振っている。

「そろそろ帰ろう。ホラ」

うあ~、やっぱそう言う事ね……。演技がマメ過ぎるよ陽翔。

「…………」

前方からは陽翔の笑顔の圧力、後方からは嫉妬という視線の圧力。
だけどこれは……。これは手を取る以外に道は無いだろう……。


相も変わらず律義な反応を示す俺の心臓はとりあえず無視して、俺は飼い犬がお手をするように、陽翔の掌の上にポンと自分の手を乗っけた。
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