俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ

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美人に釘付け。……ち、違います。

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陽翔と、手を繋いで廊下を歩く。

繋がれた俺と陽翔の手を憎らしそうに見る大勢の通りすがりの人たち。
陽翔はストーカーから解放された気分からか上機嫌だけど、俺は普段感じたことのない突き刺さる敵意に満ちた視線にゲンナリしていた。

「あ……」

陽翔が零した声にその視線をたどると、俺らの少し先を颯爽と歩く、とても綺麗な上級生がいた。
陽翔の綺麗な顔とはまた違う感じで、その人は冷たい美人と言った感じの顔立ちをしている。

「知ってる人?」
「あれ? 由羽人知らないのか? ホラ、剣道部主将で最強美人って言われてる御影ミカゲ先輩だよ」
「……最強? あ、もしかして言い寄る相手を片っ端から叩きのめしているっていうアノ……?」
「そう、その人」
「ふうーん。初めて会ったかも。でも、そんなに強い人には見えないよね」
「ああ、だからみんなあの容姿に騙されて、自分なら落とせるって勘違いしてひどい目にあってんじゃねーの?」
「……なるほど。でも確かに……、びっくりするくらい綺麗だよなぁ」

目の保養になるって、こういう綺麗な人に対して言う言葉なのかもしれない。だって俺の目も、御影さんが歩いていく方向にこうして吸い寄せられている。
陽翔もそうだけど、綺麗過ぎる人にはいい事ばかりじゃなくて面倒くさいことがてんこ盛りなんだろうな。

「……由羽人の好みって、あんなのなわけ?」
「へ?」

首をねじってまで御影さんを見続けてしまった俺に、陽翔の不機嫌な声が飛んできた。

「釘付けだったじゃん」
「え、ち、違うよ! 初めて見たから! あんなに綺麗な人もホントにいるんだなって思ったから……!」
「ふうーん」

勘繰るような疑うような陽翔の視線。
本当の恋人同士でもないのにそんな風に見られたら、まるで恋人に浮気を疑われた人になってしまったような錯覚に陥る。

「……ク、クールな感じの美人よりは、陽翔みたいな正統系美少年の方が俺は好きだもん」
「…………」



あれ?
「陽翔?」

歩きながらしゃべってたのに、陽翔の気配が傍に無い。握られていた手もいつのまにか外れている。
びっくりして振り返ったら、陽翔がその場でしゃがみ込んでいた。

「どうしたの!? 大丈夫? 陽翔!」

腹でも痛いのかと駆け寄ると、大丈夫大丈夫と陽翔が手をひらひらと振った。
そしてパンパンと自分の顔を両手で叩いて、「ウシッ!」と気合を入れるような声を上げ、スッと立ち上がった。

そしてまた、俺の手を取って歩き始める。


ああ、うん。
やっぱ手は繋ぐんだね……。

演技が過剰過ぎるとは思いはしたけど、確かにこれなら俺らが意識していないところでことを認識させられる効果はある。それは昼休みの教室でも実証済みだ。


乗り掛かった舟だもんな。
陽翔の役に立てるのなら、多少の恥ずかしさには目を瞑ろう。


そう思って、俺も陽翔の手をキュッと握り返し帰宅の途へついたのだった。
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