俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ

文字の大きさ
上 下
12 / 30

突き刺さる視線

しおりを挟む
放課後、バスケ部の蒼空は部活へと走って行った。
俺と陽翔は部活には入っていないので、蒼空とは教室で別れて一緒に帰る。

いつもなら、あちらこちらから陽翔を誘いに来る奴がいるんだけど、今日は少し様相が違っていた。

廊下の向こうから、俺らの様子を窺うようにあちらこちらから視線が飛んでくる。その視線が俺の体中をビシビシと刺してきて、結構痛い。

「どうした? 由羽人」
「あっ、いや……、なんていうか~」

廊下にちらりと視線を向けると、陽翔は『ああ』と言う顔をして苦笑した。

「気にすんな。そのうち向こうも諦めるだろ。今は俺らが恋人になったって事実を受け入れ難くて気になるんだろうけど、そのうちあいつらも慣れるだろ」

するり。
……ピクン!

そっと手を伸ばした陽翔が、俺の指を愛おしそうに摩るように握る。
その仕草がまるで、本当に好きな人にするようなもののようで俺の心の中がまた混乱を始めた。

だからっ……、これは演技! これは演技!
え……、演技! 演技なんだってばよ!

呪文のように、俺は自分に言い聞かせるように心の中で叫び続けた。
だって、そうでもしなけりゃ混乱しすぎて変になっちゃいそうなんだもん。


「お前らって、ホントに付き合ってんのか?」
「……え?」

突然頭上から落ちて来た言葉に、ハッとして顔を上げた。
見上げたそこには、怪訝そうな表情で俺を見ている畑山がいた。

「あ……」
そう言えば、畑山には陽翔のこと友達としか思ってないんだろって聞かれてたんだった。

「……何?」

俺が畑山との会話を思い出したことが、きっと顔に出ていたんだろう。陽翔の顔が不機嫌になり、探るような目つきで俺と畑山を見ている。

「……なに……、畑山。お前、由羽人のこと好きなのか?」
「……は?」

「ちょっ、なに言ってんだよ陽翔。そうじゃなくて……っ」
「なんだよ?」

訝しい表情の2人に間近でじっと見られて嫌な汗が流れる。
……なんで協力者の俺が、こんな狼狽えなきゃならない状況に陥ってるわけ……?
……理不尽……。

「由羽人?」

「そう……、じゃなくて。陽翔のこと、友達としか思ってないんだろって聞かれて……、そうだって答えたんだよ」

そう説明すると、陽翔の不機嫌な顔がますます不機嫌になって焦る。

うわわわわ。だから、……だってまさか恋人のフリを頼まれるだなんて思ってもみなかったんだもん!
しょーがないだろ!

「だだだだって……、好きだなんて言えるわけないじゃん! か、片思いだって思ってたのに、陽翔にバレたらまずいと思ったし……」

もう、汗ダラダラだよ。何でこんな恥ずかしい言い訳をしなきゃなんないの?


一気に疲れた……。


恐る恐る、チラリと2人を窺うと、陽翔は頬を赤くして嬉しそうな顔をしているし(なんて演技力だ!)、畑山は何かにアタったようなゲンナリした表情をしているし。

何の羞恥プレイですか。
ホント勘弁してくださいよ……。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

彼はオレを推しているらしい

まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。 どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...? きっかけは突然の雨。 ほのぼのした世界観が書きたくて。 4話で完結です(執筆済み) 需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*) もし良ければコメントお待ちしております。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

処理中です...