俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ

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突き刺さる視線

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放課後、バスケ部の蒼空は部活へと走って行った。
俺と陽翔は部活には入っていないので、蒼空とは教室で別れて一緒に帰る。

いつもなら、あちらこちらから陽翔を誘いに来る奴がいるんだけど、今日は少し様相が違っていた。

廊下の向こうから、俺らの様子を窺うようにあちらこちらから視線が飛んでくる。その視線が俺の体中をビシビシと刺してきて、結構痛い。

「どうした? 由羽人」
「あっ、いや……、なんていうか~」

廊下にちらりと視線を向けると、陽翔は『ああ』と言う顔をして苦笑した。

「気にすんな。そのうち向こうも諦めるだろ。今は俺らが恋人になったって事実を受け入れ難くて気になるんだろうけど、そのうちあいつらも慣れるだろ」

するり。
……ピクン!

そっと手を伸ばした陽翔が、俺の指を愛おしそうに摩るように握る。
その仕草がまるで、本当に好きな人にするようなもののようで俺の心の中がまた混乱を始めた。

だからっ……、これは演技! これは演技!
え……、演技! 演技なんだってばよ!

呪文のように、俺は自分に言い聞かせるように心の中で叫び続けた。
だって、そうでもしなけりゃ混乱しすぎて変になっちゃいそうなんだもん。


「お前らって、ホントに付き合ってんのか?」
「……え?」

突然頭上から落ちて来た言葉に、ハッとして顔を上げた。
見上げたそこには、怪訝そうな表情で俺を見ている畑山がいた。

「あ……」
そう言えば、畑山には陽翔のこと友達としか思ってないんだろって聞かれてたんだった。

「……何?」

俺が畑山との会話を思い出したことが、きっと顔に出ていたんだろう。陽翔の顔が不機嫌になり、探るような目つきで俺と畑山を見ている。

「……なに……、畑山。お前、由羽人のこと好きなのか?」
「……は?」

「ちょっ、なに言ってんだよ陽翔。そうじゃなくて……っ」
「なんだよ?」

訝しい表情の2人に間近でじっと見られて嫌な汗が流れる。
……なんで協力者の俺が、こんな狼狽えなきゃならない状況に陥ってるわけ……?
……理不尽……。

「由羽人?」

「そう……、じゃなくて。陽翔のこと、友達としか思ってないんだろって聞かれて……、そうだって答えたんだよ」

そう説明すると、陽翔の不機嫌な顔がますます不機嫌になって焦る。

うわわわわ。だから、……だってまさか恋人のフリを頼まれるだなんて思ってもみなかったんだもん!
しょーがないだろ!

「だだだだって……、好きだなんて言えるわけないじゃん! か、片思いだって思ってたのに、陽翔にバレたらまずいと思ったし……」

もう、汗ダラダラだよ。何でこんな恥ずかしい言い訳をしなきゃなんないの?


一気に疲れた……。


恐る恐る、チラリと2人を窺うと、陽翔は頬を赤くして嬉しそうな顔をしているし(なんて演技力だ!)、畑山は何かにアタったようなゲンナリした表情をしているし。

何の羞恥プレイですか。
ホント勘弁してくださいよ……。
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