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ユナリア編
魔大戦の始まり Ⅲ
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「そんな…それでは兄さんは……」
ダリアが魔物となったアスレから逃げてきた話を聞き終わるとペリシアは口を塞いで涙を流した。
「アスレとゴモラ城下の地下坑道に入った理由は?」
俺が問うとダリアは口を開いた。
「アスレはヴェラニア皇国を裏切る見返りに魔王国とオラルド帝国が占領下にあるゴモラ城下の封印された地下坑道に入ることを許され、私と私の仲間と共に地下坑道の最奥にある黒の魔石を求めて坑道に入りました」
「黒の魔石か……聞いたことがある。たしか黒の森の魔導師ラウスが魔石に符呪して創り上げた石。それがゴモラの坑道に?坑道には魔物で溢れていたはず。どうやって取りに行けたんだ?」
昔、最強の冒険者と言われた俺ですらヴェラニア皇国ゴモラ領の領主は坑道の立ち入りを許さなかった。それは魔物によって多くの冒険者や兵士の命が果てたからだ。
「私達、魔王国とオラルド帝国は坑道の巨石の脇に新たな穴を掘り、封印されていた地下坑道に繋ぎました。長年封印されていた坑道内部は冒険者が戦った痕や骸骨、魔力を失い地に還った魔物の骸で溢れていました」
「入った時には魔物はいなかったということか」
「はい。小動物でさえいない、腐った臭気が充満する場所でした。順調に進んで最下層の最奥の部屋にある黒の魔石を見つけたアスレは、目の色が変わって魔石を飲み込み……あとは先程話した黒いスライムのような魔物に変貌したのです」
話を聞いていたフィオナはテントの支柱を叩いた。
「アスレが裏切るはずがない!お前達が煽動したんじゃないかい!?」
猫耳の毛は逆立ち、鼻と眉間の間にシワが寄り、鋭い犬歯を剥き出しにしてダリアを睨んだ。
「決してそのようなことはしません」
「ならば何の訳があって化け物なんかに!」
「魔石を飲み込む前にアスレは言ってました。全ての王を倒し、一つの王に成ると」
アスレは強さを求めて道を踏み外した。
一番怒り、憎しみ、悲しみを覚えたのはフィオナだった。
かつて師弟関係で強く育てたのはフィオナ自身であり、本心を知れなかった。
今は裏切られた怒りと悲しみで目の前のダリアに強く当たるしかなかった。
「私達は黒の魔石によって魔物に化ける力が込められているとは知らずにアスレに力を貸してしまいました」
ダリアは深く頭を下げた。
一方、黒の魔石で魔物と化したアスレはゴモラ城下の南門の広場からゴモラ城に向けて北上していた。
城下の人々は散り散りになり、多くは城の中に入った。
山の斜面に沿うように建てられた石造りの城の塔からは城下から広がる平原にアシュ族が暮らす森まで見渡せた。
一番高い塔の脇に小さな塔があり、2つの塔から弧を描いて、切り立った城壁が塔を守っていた。
城壁を前にしてアスレは止まった。
アスレが止まると脇にいたアスレの分身でもある剣士オルテガに魔導師ラウス、アスレが城下で取り込んだ鉄槌のルドルフに弓の名手カシャの5体が並んだ。
ゴモラ城を守る魔王国とオラルド帝国の連合国の兵士達は城壁の上からアスレ達5体を見下ろし、弓を番えた。
「我が力!それはこの粘液で飲み込んだ骨や人を魔力を消費して再生し仲間にすることが出来るのです!さぁ我と共に目の前の敵を滅ぼしましょう!」
アスレの掛け声と共に城下の家の間から既にアスレに取り込まれた粘液で覆われた無数の人々がゾロゾロと城壁に向かって歩み始めた。
その光景に城壁にいた兵士達は弓の弦を緩め、弓を下ろした。
ダリアが魔物となったアスレから逃げてきた話を聞き終わるとペリシアは口を塞いで涙を流した。
「アスレとゴモラ城下の地下坑道に入った理由は?」
俺が問うとダリアは口を開いた。
「アスレはヴェラニア皇国を裏切る見返りに魔王国とオラルド帝国が占領下にあるゴモラ城下の封印された地下坑道に入ることを許され、私と私の仲間と共に地下坑道の最奥にある黒の魔石を求めて坑道に入りました」
「黒の魔石か……聞いたことがある。たしか黒の森の魔導師ラウスが魔石に符呪して創り上げた石。それがゴモラの坑道に?坑道には魔物で溢れていたはず。どうやって取りに行けたんだ?」
昔、最強の冒険者と言われた俺ですらヴェラニア皇国ゴモラ領の領主は坑道の立ち入りを許さなかった。それは魔物によって多くの冒険者や兵士の命が果てたからだ。
「私達、魔王国とオラルド帝国は坑道の巨石の脇に新たな穴を掘り、封印されていた地下坑道に繋ぎました。長年封印されていた坑道内部は冒険者が戦った痕や骸骨、魔力を失い地に還った魔物の骸で溢れていました」
「入った時には魔物はいなかったということか」
「はい。小動物でさえいない、腐った臭気が充満する場所でした。順調に進んで最下層の最奥の部屋にある黒の魔石を見つけたアスレは、目の色が変わって魔石を飲み込み……あとは先程話した黒いスライムのような魔物に変貌したのです」
話を聞いていたフィオナはテントの支柱を叩いた。
「アスレが裏切るはずがない!お前達が煽動したんじゃないかい!?」
猫耳の毛は逆立ち、鼻と眉間の間にシワが寄り、鋭い犬歯を剥き出しにしてダリアを睨んだ。
「決してそのようなことはしません」
「ならば何の訳があって化け物なんかに!」
「魔石を飲み込む前にアスレは言ってました。全ての王を倒し、一つの王に成ると」
アスレは強さを求めて道を踏み外した。
一番怒り、憎しみ、悲しみを覚えたのはフィオナだった。
かつて師弟関係で強く育てたのはフィオナ自身であり、本心を知れなかった。
今は裏切られた怒りと悲しみで目の前のダリアに強く当たるしかなかった。
「私達は黒の魔石によって魔物に化ける力が込められているとは知らずにアスレに力を貸してしまいました」
ダリアは深く頭を下げた。
一方、黒の魔石で魔物と化したアスレはゴモラ城下の南門の広場からゴモラ城に向けて北上していた。
城下の人々は散り散りになり、多くは城の中に入った。
山の斜面に沿うように建てられた石造りの城の塔からは城下から広がる平原にアシュ族が暮らす森まで見渡せた。
一番高い塔の脇に小さな塔があり、2つの塔から弧を描いて、切り立った城壁が塔を守っていた。
城壁を前にしてアスレは止まった。
アスレが止まると脇にいたアスレの分身でもある剣士オルテガに魔導師ラウス、アスレが城下で取り込んだ鉄槌のルドルフに弓の名手カシャの5体が並んだ。
ゴモラ城を守る魔王国とオラルド帝国の連合国の兵士達は城壁の上からアスレ達5体を見下ろし、弓を番えた。
「我が力!それはこの粘液で飲み込んだ骨や人を魔力を消費して再生し仲間にすることが出来るのです!さぁ我と共に目の前の敵を滅ぼしましょう!」
アスレの掛け声と共に城下の家の間から既にアスレに取り込まれた粘液で覆われた無数の人々がゾロゾロと城壁に向かって歩み始めた。
その光景に城壁にいた兵士達は弓の弦を緩め、弓を下ろした。
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