異世界ホストNo.1

狼蝶

文字の大きさ
41 / 73

41.お出かけ後日談~太陽の男~

しおりを挟む

 翌朝、ベッドから起き上がると信じられないくらい身体の節々が痛かった。久しぶりの筋肉痛に、あ゛あ゛~こんな感じだったな懐かしいー!と思うが、すぐにそれどころじゃないと思い直す。
 今日は仕事絶対無理だ。
「はろ~・・・って、アレ、ナナミんどしたの?今日はカウンターなんだ~」
「ひゃわっ!」
 店長に腰の痛みを相談すると、俺の死にそうな顔に相当の迫力があったのか今日の仕事をカウンターボーイに変えてくれた。その恩義に報いるため午前中のうちからせっせとグラスを磨いていると、突然背筋を指でなぞられ驚きに背中を反らした。グラス磨きに夢中になるあまり、人が来ていることに気づいていなかったのだ。
「痛゛って・・・・・・!!!」
 急に逸らした腰に、激痛が走る。骨折れた!!今絶対骨折れたわ!
「あれあれごめん!って、え、なんで腰擦ってんのぉ?」
 慌てて謝ってきたが、腰を擦る俺に目をまん丸にして驚いている目の前の男の名は“ニアル“といって、いつも『desire』で客に出している料理の食材を持ってきてくれる青年だ。
 顔は勿論整っていて、こいつに限っては背が俺とほぼ同じくらい高い。クッソ、顔も背丈も手に入れやがって!と見る度に心の中に嫉妬の炎が巻き起こる。
 くりっと大きな瞳は太陽の光を持っていて、時折金色に見えるときなんかは心臓がどきりと跳ねるほど美しく見える。明るいオレンジ色の髪は日光に透けるとまるで燃えている太陽みたいで(太陽は燃えてるんだけど)、ほんと、存在が太陽って感じの奴だ。口が大きくて笑うときも豪快だし。
 で、そんな陽キャ代表みたいな奴が、何故かこの反応激うす陰キャ代表の俺によく絡んでくるのだ。全くもって理解できない。
「そうなんだ・・・・・・よかった。てっきり誰かにパックンて食べられちゃったかとおもった~。あ、“パックン”ていうより、“ずっぽり”か」
 こんな風に彼は、時々信じられないくらい下品なことをイケメンな顔で宣う。ほんっとうに止めてほしい。顔と言葉が結びつかなすぎて、世界の終わりだ、とか思ってしまうから、
 腰が痛い理由を話すと、安心した~と言って俺の腰を擦り続けるニアル。あの、そろそろ止めてほしいんですが・・・・・・。彼の擦り方がなんとなく怪しく、背筋がぞわぞわとこそばい。思わず身震いすると、んふふっと太陽にして黒い笑みを零す。
「ナナミーん、ナナミんのヴァージンは俺が食べるんだからね?それまで、ちゃんと死守してよね」
「はは、ははは・・・・・・何を仰っているのかちょーっとわかりかねますな・・・・・・」
 こいつの変わっているところは陰キャな俺にしつこく絡んでくることだけでなく、この俺の“処女”を狙っていることだ。全く末恐ろしいし、マジで蓼食う虫も好き好きだ。
「ニ、ア、ル、くーん、ナナミくんを口説くなら、お客様として来て欲しいなぁ」
 もうそろそろ仕事に戻りたかった俺が適当にあしらおうとすると、いつもの通り静かにニアルの背後に立っていた店長が、にぃっこりと笑ってアイスピックを掲げていた。
 ちょっ、それ凶器!店長!何する気!?
「あはは~、俺はナナミんと、お金で得られる関係には興味ないんですよ~。それに、ナナミん指名する金もないしっ」
 俺の腰から手を離し両手を挙げて無害をアピールするニアルは、軽い身のこなしでカウンターを飛び越えると逃げ足速く店から出ていってしまった。人騒がせな奴だな・・・と溜息を吐いてグラス磨きを再開させる。
「はいコレ。全部任せちゃっても大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
 店長からアイスピックを受け取り、脇に置いておく。俺に渡してくれようとしていたのかはわからないが、先ほどの絵柄にまだ足が震えていた。マジで音もなくアイスピック片手に立ってるって、こわすぎじゃん!!
 『じゃあ任せたよ』と言って優しげな笑顔で去って行った店長に、ふぅーっと詰めていた息を吐く。
 ころん、と横たわったアイスピックが目に入り、それを持って悪魔のように笑う店長を想像したが、それを秒で打ち消しグラス磨きに集中することにした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

独占欲強い系の同居人

狼蝶
BL
ある美醜逆転の世界。 その世界での底辺男子=リョウは学校の帰り、道に倒れていた美形な男=翔人を家に運び介抱する。 同居生活を始めることになった二人には、お互い恋心を抱きながらも相手を独占したい気持ちがあった。彼らはそんな気持ちに駆られながら、それぞれの生活を送っていく。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

美醜逆転の世界でレンタル彼氏をしてみた

普通
恋愛
ある男が死に、転生した。そしてその転生した世界が美醜逆転世界だった。男はそれを知ると一儲けするためにレンタル彼氏をし始めるのであった。

処理中です...