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第9話 真実を知る時 バジル視点(2)
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「あ、アナくん……?」
「あ、アナ……? え……? おことわり……? さようなら……? にとど、ちかづくな……?」
酷い聞き間違いをしたと、思った。
だが隣にいる父上も、唖然となっていた。
ふたりして聞き間違いをするはずがない、から……。
『お断ります。そして、さようなら。二度と近づかないでくださいね』
は、実際にアナの口から出た言葉なんだ……。
「きゅ、急に、どうしたんだい……? な、なんで……? さっきまで、力になると言ってくれていたのに……。なぜ、そんなことを言うんだい……?」
「……さっきまでは、貴方達はそうするだけの魅力を持っていた。でもそんなものはとっくになくなっていたと知った。それが理由よ」
「ちょっ、待ってくれっ! 魅力って! 本当になにを言っているんだい!? それじゃあ損得勘定で関係を持っていたみたいじゃないか!! なにを――」
「みたい、じゃなくてその通りよ。ごめんなさいね、これまで言ってきたのは全部嘘なの。貴方を操るために、気持ちよくさせていただけなのよ」
『…………バジル様のお姿を拝見したら、本能的に理解致しました。貴方様とわたくしは、赤い色で繋がっているということが』
あれも……。
『きっと……。わたくし達は、前世で夫婦だったのでしょうね』
これも……。
『バジル様、わたくしからお願いさせてください。もう一度……今世でも……。わたくしを、貴方様の妻にしてください……!』
それも……。
すべてが、偽り……。
商会持ちの伯爵家の嫡男が、愛していると言いながら近づいて来たから……。話を合わせていた、だけだった……。
「金も地位も失った貴方に興味はない。好きでもなければ役にも立たない相手に尽くす意味なんてないでしょ? だ・か・ら、さようならなのよ」
「そ、んな……。よくも……よくも騙したな……!」
「騙される方が悪いのよ。怨むなら自分を怨んだらどう?」
「「っっ!! この――」」
「あら。ここで暴力沙汰を起こしたら、大変なことになるのはそちらよ? それでもいいなら、どうぞ殴りかかってらっしゃい」
ぐ……。
腹立たしいが、それは事実……。
ぶん殴るのは、正当な行為だが……。コイツが悲鳴をあげて取り押さえられてしまったら、今以上に厄介なことになってしまう……。
「わたくしこれから、貴方との噂を消さないといけないの。そうしないと、次の蜜と出逢えなくなっちゃうからね」
「「っっ」」
「つまりとっても忙しくて、これ以上構っていられないのもう行くわね」
「「まっ、待て!! まだ話は終わっていない――」」
「こっちはもう、終わってるの。じゃあね、バイバイ。短い間だったけれど、貢いでくれてどうもありがとう」
俺達は手を出せないから、正当な暴言を吐きながら背中を睨みつけることしかできなくて……。アイツが出ていったら、俺達も出て行かないといけなくて……。
そうしたくないけど、するしかない。
父上と共に応接室を出て、馬車に戻ったのだった……。
「あ、アナ……? え……? おことわり……? さようなら……? にとど、ちかづくな……?」
酷い聞き間違いをしたと、思った。
だが隣にいる父上も、唖然となっていた。
ふたりして聞き間違いをするはずがない、から……。
『お断ります。そして、さようなら。二度と近づかないでくださいね』
は、実際にアナの口から出た言葉なんだ……。
「きゅ、急に、どうしたんだい……? な、なんで……? さっきまで、力になると言ってくれていたのに……。なぜ、そんなことを言うんだい……?」
「……さっきまでは、貴方達はそうするだけの魅力を持っていた。でもそんなものはとっくになくなっていたと知った。それが理由よ」
「ちょっ、待ってくれっ! 魅力って! 本当になにを言っているんだい!? それじゃあ損得勘定で関係を持っていたみたいじゃないか!! なにを――」
「みたい、じゃなくてその通りよ。ごめんなさいね、これまで言ってきたのは全部嘘なの。貴方を操るために、気持ちよくさせていただけなのよ」
『…………バジル様のお姿を拝見したら、本能的に理解致しました。貴方様とわたくしは、赤い色で繋がっているということが』
あれも……。
『きっと……。わたくし達は、前世で夫婦だったのでしょうね』
これも……。
『バジル様、わたくしからお願いさせてください。もう一度……今世でも……。わたくしを、貴方様の妻にしてください……!』
それも……。
すべてが、偽り……。
商会持ちの伯爵家の嫡男が、愛していると言いながら近づいて来たから……。話を合わせていた、だけだった……。
「金も地位も失った貴方に興味はない。好きでもなければ役にも立たない相手に尽くす意味なんてないでしょ? だ・か・ら、さようならなのよ」
「そ、んな……。よくも……よくも騙したな……!」
「騙される方が悪いのよ。怨むなら自分を怨んだらどう?」
「「っっ!! この――」」
「あら。ここで暴力沙汰を起こしたら、大変なことになるのはそちらよ? それでもいいなら、どうぞ殴りかかってらっしゃい」
ぐ……。
腹立たしいが、それは事実……。
ぶん殴るのは、正当な行為だが……。コイツが悲鳴をあげて取り押さえられてしまったら、今以上に厄介なことになってしまう……。
「わたくしこれから、貴方との噂を消さないといけないの。そうしないと、次の蜜と出逢えなくなっちゃうからね」
「「っっ」」
「つまりとっても忙しくて、これ以上構っていられないのもう行くわね」
「「まっ、待て!! まだ話は終わっていない――」」
「こっちはもう、終わってるの。じゃあね、バイバイ。短い間だったけれど、貢いでくれてどうもありがとう」
俺達は手を出せないから、正当な暴言を吐きながら背中を睨みつけることしかできなくて……。アイツが出ていったら、俺達も出て行かないといけなくて……。
そうしたくないけど、するしかない。
父上と共に応接室を出て、馬車に戻ったのだった……。
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