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第9話 真実を知る時 バジル視点(1)
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「お久しぶりですバジル様っ。お会いできて嬉しいです」
最愛の人、アナ。彼女は俺が扉を開けるや――俺の姿を目にするや、胸に飛び込んできてくれた。
しかも、嬉し涙まで浮かべてくれる。こんなにも嬉しいことはない。
「ごめんよ、ずっと寂しい思いをさせてしまったね。実は厄介な問題が発生しているんだよ」
「発生して、いる……? 今も、お困りなのですか……!? でしたら是非わたくしにご相談くださいっ。喜んでお力になります!」
ぁぁ、アナ。君はなんて優しいんだ。
その言葉に俺も、思わず嬉し涙が零れ――。久し振りに出た喜びが由来の涙を拭い、後ろにいる父上を一瞥した。
「ありがとう、早速だけど詳説させてもらう。……俺達が初めて会った時、君と結ばれるために時間を巻き戻した、と言ったのを覚えているよね?」
「は、はい。もちろん覚えております」
「…………そのせいで、最悪の事態が起きてしまったんだよ」
とある理由で金が必要になり、逆行前に起きた出来事を活かそうとしたこと――。
画家レナテイラの作品が切っ掛けで需要が高まる、『ザンダテールズ焼き』に注目したこと――。
ザンダテールズ焼きを買い漁って需要の高まりを待っていたのに、俺の行動などの影響で未来の一部が変わって違う作品が発表されてしまったこと――。
読み違いによって、買い集めたザンダテールズ焼きは全てが『金にならないゴミ』と化したこと――。
それによって叔父達から責任を追及され始め、当主や会頭の剥奪、身売りといった形で責任を取らせるようになること――。
それらの悲惨な未来を回避し、共に暮らせるように、ポルートッド家で俺達を匿って欲しいこと――。
自分へのプレゼントが絡んでいると知れば、アナは酷くショックを受けてしまうからな。そこに関する部分は濁し、ありのままを伝えた。
「…………そう、だったのですね……」
「愛する人を巻き込みたくは、なかったんだ。でも、そうしないと俺達は一緒に居られない。同じ道を歩けないんだよ」
「……………………」
「愛する人を笑顔にしてやりたい。そんな想いは常に持ち続けていて、しばらく時間はかかるだろうけど、そうできる方法も考えているんだ。……だから、アナ。俺に――俺達に、手を差し伸べてください」
「アナくん。お願いします」
父上と共に、深々と頭を下げる。
そうしたら――やっぱり、そうしてくれた。俺の最愛の人は、ニッコリと笑って――
「お断ります。そして、さようなら。二度と近づかないでくださいね」
――……。え……?
信じられないことを、言い出したのだった……!?
最愛の人、アナ。彼女は俺が扉を開けるや――俺の姿を目にするや、胸に飛び込んできてくれた。
しかも、嬉し涙まで浮かべてくれる。こんなにも嬉しいことはない。
「ごめんよ、ずっと寂しい思いをさせてしまったね。実は厄介な問題が発生しているんだよ」
「発生して、いる……? 今も、お困りなのですか……!? でしたら是非わたくしにご相談くださいっ。喜んでお力になります!」
ぁぁ、アナ。君はなんて優しいんだ。
その言葉に俺も、思わず嬉し涙が零れ――。久し振りに出た喜びが由来の涙を拭い、後ろにいる父上を一瞥した。
「ありがとう、早速だけど詳説させてもらう。……俺達が初めて会った時、君と結ばれるために時間を巻き戻した、と言ったのを覚えているよね?」
「は、はい。もちろん覚えております」
「…………そのせいで、最悪の事態が起きてしまったんだよ」
とある理由で金が必要になり、逆行前に起きた出来事を活かそうとしたこと――。
画家レナテイラの作品が切っ掛けで需要が高まる、『ザンダテールズ焼き』に注目したこと――。
ザンダテールズ焼きを買い漁って需要の高まりを待っていたのに、俺の行動などの影響で未来の一部が変わって違う作品が発表されてしまったこと――。
読み違いによって、買い集めたザンダテールズ焼きは全てが『金にならないゴミ』と化したこと――。
それによって叔父達から責任を追及され始め、当主や会頭の剥奪、身売りといった形で責任を取らせるようになること――。
それらの悲惨な未来を回避し、共に暮らせるように、ポルートッド家で俺達を匿って欲しいこと――。
自分へのプレゼントが絡んでいると知れば、アナは酷くショックを受けてしまうからな。そこに関する部分は濁し、ありのままを伝えた。
「…………そう、だったのですね……」
「愛する人を巻き込みたくは、なかったんだ。でも、そうしないと俺達は一緒に居られない。同じ道を歩けないんだよ」
「……………………」
「愛する人を笑顔にしてやりたい。そんな想いは常に持ち続けていて、しばらく時間はかかるだろうけど、そうできる方法も考えているんだ。……だから、アナ。俺に――俺達に、手を差し伸べてください」
「アナくん。お願いします」
父上と共に、深々と頭を下げる。
そうしたら――やっぱり、そうしてくれた。俺の最愛の人は、ニッコリと笑って――
「お断ります。そして、さようなら。二度と近づかないでくださいね」
――……。え……?
信じられないことを、言い出したのだった……!?
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