一年後に死ぬ予定の悪役令嬢は、呪われた皇太子と番になる

兎束作哉

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第3部2章

07 体だけでも◇

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 彼に育てられた胸を、彼の眼前にさらけ出し、私は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた。いや、期待から、彼に触れられるのを待っていたというほうが正しいかもしれない。
 はあ、はあ……と熱を帯びた息を吐き、殿下はくっ、と悩ましげに声を漏らした後、正気に戻ったように髪をかき上げた。


「……これでは、俺が公女に欲情しているみたいだな」
「みたいじゃなくて、事実では?」
「……」
「別にいいですよ。私の体は貴方のものなので」
「それ、誰にでも言っているだろ」
「まさか! 私がそんな淫乱な女に見えるんですか!」


 酷い、といえば、まだ何か言いたげだった殿下は完全に黙った。
 そのまま抱いてくれてもよかったのにと、期待を裏切られた気持ちになり、私は体を起こしてサッと胸を覆った。殿下はその一連の動作を見てないふりをしつつもがっつりとみていて、私の体が気になるみたいだった。我慢せずにがっついても、殿下なら怒らないのに。だが、今の殿下はプライドが山のように高い男に戻っている。ちょっとやそっとの誘惑では誘惑しきれないだろう。
 次の手を打たなければ、と私はおいてあったボディーソープを持ってきて殿下の前に突き出した。


「今度はなんだ」
「お背中洗いますといいました。それを実行しようと思います」
「……また、妙なことを考えているんじゃないだろうな――って、おい! 聞け!」


 殿下の背後に回り、私は五回ほどプッシュしそれを手で泡立てて殿下の背中に塗る。もこもこと泡だったが、まだ液体のドロッとした感じが残っている。殿下の背中を私の小さな手で洗うには少し時間がかかりそうだ。それに――


「こ、公女!」
「どうですか、殿下。気持ちいですか?」


 まるで、ソープ嬢のような定番のセリフを彼が見えないのをいいことに顔から火を噴きながらも私は口にし、胸についた泡を殿下の背中につけるようにこすりつけた。


「おい、こら、やめろ」
「いいえ。やめません。やめないといったらやめません!」


 半分ヤケのようになっている私は無我夢中で殿下に抱きつき胸を背中に押し付けた。


「う……っ」


 ぴくんっと大きく揺れた体と、なにかをこらえるような艶のある声に私の心臓も高鳴る。少し卑怯な気もするが、彼の体が私を覚えている証拠だと、少しうれしくなって、ついつい恥ずかしいことをしているという意識が抜けて、彼の背中を胸で洗う。にゅるん、ぷるんと揺れる自分の胸は卑猥で、もしこれを殿下の目の前でやったらどんな顔をするのか、気になりつつも、きっと顔から火を噴くどころか、自分は爆発してしまうだろうと思って踏みとどまった。彼の記憶が戻ったら、何か言われそうだったし。


「く、公女……っ」
「気持ちいいでしょ? 丹精込めて洗っていますから。そういえば、紅茶をこぼしてしまったのは前でしたね」
「待て、公女、前は!」


 失礼します、と私は前に回り、彼のお腹に抱き着くように腕を回した。殿下は、後ろに倒れるように尻もちをつく。私はチャンスだと、上半身を前に倒し、殿下の下半身を跨ぐように乗っかる。
 その途端、殿下が息を呑む声が聞こえた。殿下の胸に私の胸がつぶれる感じになり、彼は身じろぎした。私の感触に刺激されたのか少しお腹に触れたそれが頭をあげるのを感じた。しかし、それを気にしたら負けだとばかりに無視し、胸を押し付けて彼の前を洗う。ボディーソープで滑りがよくなっているからなのか、それとも私の胸で彼が感じているのか……それは分からないが、殿下は耐えるような声を出した。


「……っふ……っ」
「感じてくれているんですか?」
「感じてなどいない。くそ、やめろ」
「やめろって、殿下のそれは元気ですけど」
「生理現象だ!」


 そうはいいつつも、ぐにゅん、むにゅんと何度も形を変えてぶつかる二つのふくらみを見てか、それとも感触からか、彼は唇を食いちぎる勢いで閉じて、何も言わなくなった。
 頑固だなあ、なんて思いながらも、私は殿下の反応が面白くて、ついに彼の下半身までおりて、殿下のそれとご対面する。白い泡に包まれたそれはよりいっそ赤くグロテスクに見え、しっかりと固さをもって立ち上がっていた。こうもまじまじと見る機会はなかったので、恥ずかしさもあり、いつもこれが私の中に……とお腹がきゅんと疼く。


「公女は、物好きだな」
「凶器ですね、ほんとうに」
「聞いているのか?」


 好奇心から、殿下のそれの先端をツンとつつけば「んんっ」と何とも情けない耐えに耐えれなかった殿下の声が漏れて、私はもっと聞きたいとばかりにそれに触れる。泡でぬるぬると滑りがよくなっていて、案外つかみにくく力を入れるのだが、すでに立ち上がっていたのにもかかわらず膨張していくそれに恐ろしさも感じていた。


「公女、やめろ」
「でも大きくなっているみたいですよ?」
「……っこれは生理現象だ! もう十分だろ!」
「まあ、そうですね」


 これ以上続けるのもどうかと思い、私は殿下のそれから手を放す。殿下はようやく終わったかと息を吐いたが、私がこれで終わるはずもなく、はしたないと思いつつも、殿下をいじることで興奮してジュンと濡れたそこを殿下のそれに擦り付けるようにして再び彼の上をまたいだ。


「殿下、いれてもいいですよ?」
「いれるわけないだろ!」


 滑ってうっかり入ってしまいそうなそこは、擦れあい、でも決定的な刺激にかけるため、私も腰を動かすのが止まらない。泡だらけの私たちは滑りがよく、触れ合うだけでイきそうなほど快楽を感じてしまうのに、動かし始めたらもっと気持ちよくなってしまうから私は動かすのが怖くなってしまった。


「殿下……っ、これ、だめですか?」
「くそ、俺をどうしたいんだ。公女」


 揺れる胸を見つめている殿下は、今にも入れたいというような顔で私を睨んでいた。何をためらっているのだろうか。自分がこんなことに屈するが許せないのだろうか。殿下ってそんな固い人だっただろうか。
 それとも私に魅力がない?


(性欲のはけ口だって思われてるのかもしれない……体目当てだって……)


 そうじゃない。殿下を気持ちよくさせてあげたいっていう気持ちもあって――そんなふうに、彼の熱い剛直の真下で腰を止めたときだった。彼が私の尻を掴みぐちゅんと己のそれを私の中に突き刺したのは。


「ああああっ!」
「くそっ」


 悪態をつきつつも、しっかりと私の腰を掴み、思いっきり下から突きあげる。そうして、いつものように最初から激しくつきあげられ、私は慌てて彼に抱き着いた。


「でん、あ、いんっ……っ、ああっ、ひっ、ああんっ」
「くそ、公女……っ」


 一度入ってしまったらもう歯止めは効かず、殿下は夢中になったように私を押さえつけ、ずぼ、にゅぽと己のそれを出し入れする。下から突き上げてくる殿下に目がチカチカとし星がはじける。激しい腰の動きに、泡がちゅぽちゅぽと水音を立てながら、私の股の間から零れていく。


「ああっ、やんっ、あっ、ああ……っ」
「……公女は、俺をどうしたいんだっ……」


 ぐちゅんぐちゅんと泡と蜜が交じり合い音を立てるそこは卑猥な音が響いている。羞恥心で死にそうだと思いつつも、私も感じてしまって腰が動くのが止まらない。
 体と心があっていない、とでもいうように殿下は腰を振った。そして、上に乗っていた私をいつの間にか屈服させるように四つん這いにさせると、尻を高く持ち上げて今度は上から奥へめがけてどちゅんとつきあげた。


「ひゃあっ、やああっ、あんんっ、あんっ」


 腰を高く持ち上げられたことによって最奥に彼の剛直が穿たれ、私はさらにぎゅっと膣を締め付ける。殿下もより快楽を得たのかはあっと熱い吐息を吐くと今度はぐちゅぐちゅと卑猥な音を鳴らしながら中をかき回すようにぐちゃぐちゃと音をたてた。そして同時に私のぷっくりとした陰核をくにゅんと揉むのだ。感じるところすべてを攻められ、私は自ら誘ったくせに、すでに許容量を超える快感に失神寸前だった。
 知らないくせに、覚えていないくせに、体は覚えているのだから、彼は私の弱くて感じるところを的確に、意地悪にに攻め立てる。殿下も私が締め付けるたびに、気持ちよさそうに上から低い声を漏らす。


(いい、それでもいい……アインが、貴方が覚えていなくても、体だけでも私を求めてくれたら……)


 このむなしさは少しは埋まる。そんな気がした。でもいつか、前のように心まで通じ合って貴方と……
 そんなことを思いながら、彼がラストスパートというように先ほどよりも荒々しく、激しく腰を打ち付け奥へ奥へと私の中をかき分けて進み、最奥にたどり着いた彼は、子宮口に精子を吐き出した。記憶がなくて、私を信じていないのにもかかわらず、彼は擦り付けるように勢いを失ったそれを私の中に、こすりつけることはしないだろう。避妊魔法をかけているかもわからない私の中に出すなんて……記憶がないならばなおさらそんなことを彼はしないはずだ。でも、無意識からかそれをするのは、彼の体が私を覚えている証拠というか。
 彼はぐっぐっ、と一滴も余すことなく私の中にねじ込み、刷り込むとまだ出たくないというようにゆっくりと腰を引いて、私の中から出ていく。子ポリと溢れた彼のものが栓をなくしたそこからあふれ出す。


「はあっ、はあ……っ」
「……っ、こう、じょ……ろる……」


 後ろを向いていた私には、彼の表情が見えなかった。けれど、名前を呼び掛けて止めた彼がどんな表情をしていたか想像できず、振り向きたい思いもあったが、私はその前に気を失ってしまった。


(アイン、早く思い出して……私のこと、貴方のことを……)


 最後に床の冷たさも、痛みも感じなかったのは彼が私を抱きかかえてくれたからと信じていたい。

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