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第二章 学園編

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「あー……えーと。良い雰囲気のところ悪いんだけど、とりあえず着いたから入ってくれる?」

 リュカ先生は気まずそうな顔をしながら私達に話しかけてきた。

 ギャーー!! 

 そうだった、リュカ先生いるんだった!

「リュカ先生……!」

 アワアワする私とは対照的に、ヘンリー殿下は一瞬ギロリとリュカ先生を睨み付けると、いつもの飄々とした態度でリュカ先生に返事をした。

「ああ、先生。これは失礼しました」
「ヘンリー君、こわーい! じゃ、僕は一旦教室に戻って生徒達に事情を説明してくるから、少し部屋で待っててね。あ、ちなみにこの部屋の中での事は僕に筒抜けだから気を付けてね☆」
「私は無粋な真似などしないので、ご安心を」

 ちょっ! 二人とも何言ってんの!?

「あ、そうそう。部屋の中汚いけど、荷物適当に退かして座って待っててね☆」

 リュカ先生はそう言い残し去って行った。
 リュカ先生の言う通り、辺りは山積みの本や書類、くしゃくしゃに丸めた紙などで覆い尽くされている。

 うわぁ、本当に汚いな。

「これは酷いな。この本を退かすから一先ずこの椅子に座っていてくれ」
「はい」

 ヘンリー殿下はソファに山積みになった本を退かすと私を再び抱き抱えてそのままソファに腰を下ろした。

「あの、ヘンリー殿下」
「ん?」
「私、一人で座れますわ」
「イザベル嬢は体調が悪いのだろう」

 そうだ、仮病使っていたのをすっかり忘れていた。

「え、えーと、それなら良くなりましたの。もう大丈夫ですわ」
「そうか、それなら良かった。しかし、まだ立てないだろう? 何かあった時に対応出来ないと困るから、このまま私の膝の上にいた方が良い」
「は、はぁ」

 結局言いくるめられてしまい、ヘンリー殿下の膝の上が私の定ポジションになってしまった。

 ああ、落ち着かない。

 そわそわする私をよそに、ヘンリー殿下は付けていた髪留めにそっと触れた。

「髪留め、付けてくれたんだね」

 この髪留めはヘンリー殿下が私に贈ってくれた物だ。
 私のライトブルーの髪に合うように、サファイアとダイヤを贅沢にあしらった、蝶形の髪留め。
 高そうだし失くしたら大変だからと引き出しに入れておいたのだが「お嬢様、こんなに素敵な贈り物なんですから、身に付けない方が逆に失礼に当たりますわ!」とアニー言いくるめられ、髪に付けられたのよね。
 さっきの騒動で傷ついてなきゃいいけど。
 はぁ、高価なものを付けていると心臓に悪いわ。

「はい、素敵な物をありがとうございます」
「うん、良く似合っているよ」

 ヘンリー殿下はちゅっと髪留めにキスをした。
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