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第二章 学園編
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「実は婚約にあたり、家臣から噂の真相を確かめて貰っていた。真実を知らないまま、噂話のみで婚約者を決めたくなかったんだ」
「殿下」
「イザベル嬢、修道院で私と目が合った事を覚えているだろうか」
ああ、私がネスメ女子修道院送りになった、あの時か。
「ええ。確かにあの時、ヘンリー殿下を修道院でお見かけいたしましたわ」
「貴女は騒ぎ出した孤児を抱き上げた時に、頬を引っ掻かれて怪我をしただろう? しかし、その孤児を叱ったり罰を与えるようなことはせず、孤児を優しく嗜めていた。自身の怪我の手当もしないまま」
あわわ、私の仕事ぶりを見られていたのね。なんだか恥ずかしいわ。
「令嬢の顔に傷を付けるなど、本来なら不敬罪で処罰される深刻な案件だ。それにも関わらず、貴女は自身のことを差し置き、孤児の事を優先させた。私はそれを見て思ったんだ。イザベル嬢は、本当にメイドイビリ好きな意地悪令嬢なのかと」
ヘンリー殿下は、噂話だけで物事を判断するのではなく、真実を確かめるために私を調べたのか。
慧眼は上に立つ人間に求められる資質。
やはり、ヘンリー殿下は王太子としての器のある方のようね。
「貴女の心は、美しい。噂話なんてやはり信じてはいけないのだと、改めて思ったよ」
ヘンリー殿下は私の手を取ると、そっと口付けた。
ギャーーー!!
ちょっと待て、ここは教室!!
初日から目立つ事はやめてーー!!
「……えー、立て込んでいるところ悪いですが、時間が押しているので授業を始めますよ? 御三方、席に着いて下さい」
いつのまにか教壇に立っていた教師が、私達に向かって話しかけてきた。
「お騒がせして申し訳ございません」
「イザベル嬢は謝る必要はない。先生、失礼致しました。授業を始めて下さい。さ、君も席に戻りたまえ」
冷たく遇らわれたマリア様は、しょんぼり顔のまま「申し訳ございません」と小さく謝り、席へ戻って行った。
「殿下」
「イザベル嬢、修道院で私と目が合った事を覚えているだろうか」
ああ、私がネスメ女子修道院送りになった、あの時か。
「ええ。確かにあの時、ヘンリー殿下を修道院でお見かけいたしましたわ」
「貴女は騒ぎ出した孤児を抱き上げた時に、頬を引っ掻かれて怪我をしただろう? しかし、その孤児を叱ったり罰を与えるようなことはせず、孤児を優しく嗜めていた。自身の怪我の手当もしないまま」
あわわ、私の仕事ぶりを見られていたのね。なんだか恥ずかしいわ。
「令嬢の顔に傷を付けるなど、本来なら不敬罪で処罰される深刻な案件だ。それにも関わらず、貴女は自身のことを差し置き、孤児の事を優先させた。私はそれを見て思ったんだ。イザベル嬢は、本当にメイドイビリ好きな意地悪令嬢なのかと」
ヘンリー殿下は、噂話だけで物事を判断するのではなく、真実を確かめるために私を調べたのか。
慧眼は上に立つ人間に求められる資質。
やはり、ヘンリー殿下は王太子としての器のある方のようね。
「貴女の心は、美しい。噂話なんてやはり信じてはいけないのだと、改めて思ったよ」
ヘンリー殿下は私の手を取ると、そっと口付けた。
ギャーーー!!
ちょっと待て、ここは教室!!
初日から目立つ事はやめてーー!!
「……えー、立て込んでいるところ悪いですが、時間が押しているので授業を始めますよ? 御三方、席に着いて下さい」
いつのまにか教壇に立っていた教師が、私達に向かって話しかけてきた。
「お騒がせして申し訳ございません」
「イザベル嬢は謝る必要はない。先生、失礼致しました。授業を始めて下さい。さ、君も席に戻りたまえ」
冷たく遇らわれたマリア様は、しょんぼり顔のまま「申し訳ございません」と小さく謝り、席へ戻って行った。
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