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第二章 学園編
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やれやれ、なんとか抜け出す事に成功したわ。
それにしても、リュカ先生は闇の魔力だけではなく、変化や読心の特殊魔法まで使えるなんて驚きだわ。流石は魔法省の長だけあるわね。
それに、驚いたのは、ヒロインのマリア様が光の魔力持ちだったこと。
この国では「テレス教」という宗教を信仰しており、この国を作ったとされる創造神として「女神」を崇拝の対象としている。
そう、私が行ったネスメ修道院で行っていたお祈りの時間も女神様に祈りを捧げるためのものだ。
また、光の魔力持ちは「巫女」と呼ばれ女神同様に崇められている存在。
きっとマリア様は国からの保護を受ける事になるでしょうね。
ふむ、そうなるとマリア様と攻略対象者であるヘンリー殿下との関係が今より親密な物になるかも。それは助かる!
でも、何だろう。
胸の奥がチクリとする気が……。
って、こんな事を廊下で考えていても仕方ないし、とりあえず医務室に行こうかな。
授業中のため、シーンと静まり返っている廊下をゆっくり歩いていると、ふっと背中に視線を感じた。
……誰?
気になって振り返ってみたが、今は授業中のため当然誰もいない。
敵意は感じなかったが、纏わりつくような嫌な視線だ。
その視線は柱の影になっている辺りから感じる。
なんだろう、ちょっと怖い。
でも……何故だかあの場所が気になる。
好奇心に負けた私は、恐る恐る、一歩、また一歩とその影に向かって歩み寄る。
コツ、コツ、と私の足音が廊下に響き渡る。
柱の近くまで来たが、何も見当たらない。
何だ、やっぱり気のせいだったのか。
物陰から離れようと一歩後退した時、突然、影から何かが飛び出した。
「!?」
うわーーーっ!!
何か出てきた!!
どうしよう、逃げたいのに力が出ない!
どうやら驚き過ぎて腰を抜かしたようで、私の下半身は動かない。
目の前に現れたのは熊のような黒い動物。
鋭い目つきに、額には鋭利な角が一本生えており、前脚には刃物のようにギラギラ光る爪が無数に生えている。
その動物は私をじっと見据えたまま動かない。
な、なんだろう。
私に何かを訴えかけているように感じる。
それに、目つきは鋭いけど敵意は感じないわ。
しばらく目を合わせたまま固まっていると、その動物はペコリと私に向かってお辞儀をして、顎でクイっと自分の背中を差した。
もしかして、背中に乗れと言っている?
私は身体が動かないためその場で固まっていると、その動物がさらに私に近寄ってきた。
すると突然、ブワッと辺りに風が吹き荒れた。
「きゃ!?」
バンッ!!
動物は突風に吹き飛ばされ、そのまま壁に強く叩きつけられた。
「イザベル嬢、大丈夫か!」
バタバタと慌ただしい足音と共に聞き覚えのある声が私を呼ぶ。
振り返ると、金髪碧眼の男が息を切らしてこちらにやってくるのが見えた。
「ヘンリー殿下!?」
「イザベル嬢、離れろ! ソイツは魔獣だ!!」
え、そうなの!?
私は慌てて動物、いや、魔獣の方を見ると、壁に叩きつけられた魔獣はよろめきながら立ち上がり、勢い良く廊下の窓ガラスを突き破った。
ガシャーン!!
窓ガラスの割れる音が廊下中に響き渡る。
「くっ! 逃げたか」
駆け付けたヘンリー殿下は窓の外を見て魔獣がいない事を確認すると、座り込んだままの私を強く抱きしめた。
「ああ、イザベル嬢、無事で良かった! どこか怪我しているところはないか!?」
「え、ええ。大丈夫ですわ」
「ああ、良かった! まだ魔獣が近くを彷徨いている可能性がある。とりあえずこの場を離れよう」
ヘンリー殿下は私の手を引いて起こそうとするも、私は腰を抜かしているため立ち上がれない。
「ヘンリー殿下。お恥ずかしいのですが、先程魔獣が出てきた時に驚いて腰を抜かしてしまったようで……」
「そうだったのか。気付かなくてすまない」
ヘンリー殿下は私の背中と膝下に手を添えて横抱きにした。
それにしても、リュカ先生は闇の魔力だけではなく、変化や読心の特殊魔法まで使えるなんて驚きだわ。流石は魔法省の長だけあるわね。
それに、驚いたのは、ヒロインのマリア様が光の魔力持ちだったこと。
この国では「テレス教」という宗教を信仰しており、この国を作ったとされる創造神として「女神」を崇拝の対象としている。
そう、私が行ったネスメ修道院で行っていたお祈りの時間も女神様に祈りを捧げるためのものだ。
また、光の魔力持ちは「巫女」と呼ばれ女神同様に崇められている存在。
きっとマリア様は国からの保護を受ける事になるでしょうね。
ふむ、そうなるとマリア様と攻略対象者であるヘンリー殿下との関係が今より親密な物になるかも。それは助かる!
でも、何だろう。
胸の奥がチクリとする気が……。
って、こんな事を廊下で考えていても仕方ないし、とりあえず医務室に行こうかな。
授業中のため、シーンと静まり返っている廊下をゆっくり歩いていると、ふっと背中に視線を感じた。
……誰?
気になって振り返ってみたが、今は授業中のため当然誰もいない。
敵意は感じなかったが、纏わりつくような嫌な視線だ。
その視線は柱の影になっている辺りから感じる。
なんだろう、ちょっと怖い。
でも……何故だかあの場所が気になる。
好奇心に負けた私は、恐る恐る、一歩、また一歩とその影に向かって歩み寄る。
コツ、コツ、と私の足音が廊下に響き渡る。
柱の近くまで来たが、何も見当たらない。
何だ、やっぱり気のせいだったのか。
物陰から離れようと一歩後退した時、突然、影から何かが飛び出した。
「!?」
うわーーーっ!!
何か出てきた!!
どうしよう、逃げたいのに力が出ない!
どうやら驚き過ぎて腰を抜かしたようで、私の下半身は動かない。
目の前に現れたのは熊のような黒い動物。
鋭い目つきに、額には鋭利な角が一本生えており、前脚には刃物のようにギラギラ光る爪が無数に生えている。
その動物は私をじっと見据えたまま動かない。
な、なんだろう。
私に何かを訴えかけているように感じる。
それに、目つきは鋭いけど敵意は感じないわ。
しばらく目を合わせたまま固まっていると、その動物はペコリと私に向かってお辞儀をして、顎でクイっと自分の背中を差した。
もしかして、背中に乗れと言っている?
私は身体が動かないためその場で固まっていると、その動物がさらに私に近寄ってきた。
すると突然、ブワッと辺りに風が吹き荒れた。
「きゃ!?」
バンッ!!
動物は突風に吹き飛ばされ、そのまま壁に強く叩きつけられた。
「イザベル嬢、大丈夫か!」
バタバタと慌ただしい足音と共に聞き覚えのある声が私を呼ぶ。
振り返ると、金髪碧眼の男が息を切らしてこちらにやってくるのが見えた。
「ヘンリー殿下!?」
「イザベル嬢、離れろ! ソイツは魔獣だ!!」
え、そうなの!?
私は慌てて動物、いや、魔獣の方を見ると、壁に叩きつけられた魔獣はよろめきながら立ち上がり、勢い良く廊下の窓ガラスを突き破った。
ガシャーン!!
窓ガラスの割れる音が廊下中に響き渡る。
「くっ! 逃げたか」
駆け付けたヘンリー殿下は窓の外を見て魔獣がいない事を確認すると、座り込んだままの私を強く抱きしめた。
「ああ、イザベル嬢、無事で良かった! どこか怪我しているところはないか!?」
「え、ええ。大丈夫ですわ」
「ああ、良かった! まだ魔獣が近くを彷徨いている可能性がある。とりあえずこの場を離れよう」
ヘンリー殿下は私の手を引いて起こそうとするも、私は腰を抜かしているため立ち上がれない。
「ヘンリー殿下。お恥ずかしいのですが、先程魔獣が出てきた時に驚いて腰を抜かしてしまったようで……」
「そうだったのか。気付かなくてすまない」
ヘンリー殿下は私の背中と膝下に手を添えて横抱きにした。
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