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本音
兄妹の気持ち
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サクラは目を擦り涙を拭って笑顔を作った。キクは「でも・・・」と何かを言いかけていたがツバキが遮って叫んだ。
「お兄ちゃん!私ッお兄ちゃんが背負ってきたもの知らない子供だけど・・どんな悲しい思いも苦しい思いも痛い思いもしてきたんだと思う。私・・お兄ちゃんの気持ち全然気付いてなかった。私がお兄ちゃんの幸せ奪ってたんだね。ごめんなさい。私、ずっとお兄ちゃんに甘えてた。優しくしてくれるお兄ちゃんに縋ってた。・・・・・・ごめんね。ごめんなさい。お兄ちゃんの気持ち理解していなくてごめんね。だから・・教えて欲しいの・・何があって・・どんな気持ちで・・・教えて欲しい・・」
胸に手を置いて身を乗り出して言う。
「・・・・・・・」
「キク・・・」
サクラは手をギュッと握った。
「・・・・・僕は・・・・」
「お兄ちゃんッお願い・・お願いだから・・私に教えて・・」
「・・・・・僕は、僕は・・・・ただ・・・・うんん・・なんでもない。椿。椿に僕から話すことなんって何もないよ。僕にしてきたのだってどうせお父さんが僕のことなんか嫌いだったからしたこと椿が産まれる前までは僕しかいないから仲良く出来たでも椿が産まれて、嫌いな僕にキツくあたるのは無理もない。僕は多分・・椿の言っていた通りお父さんに似ているんだろうね。お父さんが嫌いなお父さんに・・・似ているから見たくないんだよ。お母さんもお父さんと同じで僕のことなんかどうでも良かった。暴力から逃げたいが為に自殺した。弱い人だよ。この家族は・・・いや、家族じゃないか・・・もうね。」
ゆっくりと立ち上がりながらキクは言う。冷めた目でツバキを見下ろす。
「・・・・ッ。・・・・・まだ、まだ家族だよ。お兄ちゃんもお父さんも、お母さんもまだ、家族。」
「・・・いいよ。もう・・椿がなんて言おうと家族は終わったんだ。僕もう泉華じゃない。生まれ変わった。ならもう家族じゃない。本来・・僕の記憶は全部失われているはず。・・・椿だけが家族ごっこをやるなら止めはしないよ。一人遊びになるけどね。」
「お兄ちゃん!なんで・・・・なんでそんな冷たいこと言うの?」
「・・・僕はお前が思ってるほど、綺麗、かっこいいお兄ちゃんじゃない。」
「・・・うんん、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん・・・何があっても・・・」
「・・・・・・・分かった。もう・・疲れた。サクラ・・ここには他に何か用があるの?」
「・・・・え?、いや、ツバキさんに合わせるのが目的なだけで・・・・・って・・キク!私はここからキクを出す気はありませんから・・・」
ばっと手を前に広げるサクラ・・頭を抑えてため息を吐くキク。
「お兄ちゃん・・なんで・・・お兄ちゃん・・私と居てくれるって・・・私ッ・・・」
「・・・・・」
「・・・・・お兄ちゃん!・・・お兄ちゃん・・・お父さんはお兄ちゃんのこと大好きだよ。言ったでしょう?頭を撫でていたって・・あの日・・お父さんと桜を見に行った日・・・・・・」
ツバキは思い出すように、そしてお兄ちゃんが何処にも行かないように叫びながら言い始めた。
お兄ちゃん・・私は・・何があってもお兄ちゃんと旅することを諦めない。前世では出来なかったこと・・今度はお兄ちゃんの代わりに私が頑張るから・・・・だから・・最後に・・お父さんの本音を聞いて大事なことだから・・・・・
もう・・諦めて・・僕達、都倉家は終わったんだ。もう椿しかいない。僕は名前を捨てた。家族を捨てるために・・だからもう僕を家族に戻さないで・・もう捨てたから・・もう思い出したくない・・・思い出したら全部椿のせいにしてしまう。『お前が産まれたから』『お前が妹だから』って・・・・あ、もう・・してしまっているか・・
お願いします。キク・・ツバキさんを捨てようとしないで・・・捨ててしまったら・・今度こそツバキさんは路頭に迷う。ずっとこの十年待ってくれていたのだから・・・
「お兄ちゃん!私ッお兄ちゃんが背負ってきたもの知らない子供だけど・・どんな悲しい思いも苦しい思いも痛い思いもしてきたんだと思う。私・・お兄ちゃんの気持ち全然気付いてなかった。私がお兄ちゃんの幸せ奪ってたんだね。ごめんなさい。私、ずっとお兄ちゃんに甘えてた。優しくしてくれるお兄ちゃんに縋ってた。・・・・・・ごめんね。ごめんなさい。お兄ちゃんの気持ち理解していなくてごめんね。だから・・教えて欲しいの・・何があって・・どんな気持ちで・・・教えて欲しい・・」
胸に手を置いて身を乗り出して言う。
「・・・・・・・」
「キク・・・」
サクラは手をギュッと握った。
「・・・・・僕は・・・・」
「お兄ちゃんッお願い・・お願いだから・・私に教えて・・」
「・・・・・僕は、僕は・・・・ただ・・・・うんん・・なんでもない。椿。椿に僕から話すことなんって何もないよ。僕にしてきたのだってどうせお父さんが僕のことなんか嫌いだったからしたこと椿が産まれる前までは僕しかいないから仲良く出来たでも椿が産まれて、嫌いな僕にキツくあたるのは無理もない。僕は多分・・椿の言っていた通りお父さんに似ているんだろうね。お父さんが嫌いなお父さんに・・・似ているから見たくないんだよ。お母さんもお父さんと同じで僕のことなんかどうでも良かった。暴力から逃げたいが為に自殺した。弱い人だよ。この家族は・・・いや、家族じゃないか・・・もうね。」
ゆっくりと立ち上がりながらキクは言う。冷めた目でツバキを見下ろす。
「・・・・ッ。・・・・・まだ、まだ家族だよ。お兄ちゃんもお父さんも、お母さんもまだ、家族。」
「・・・いいよ。もう・・椿がなんて言おうと家族は終わったんだ。僕もう泉華じゃない。生まれ変わった。ならもう家族じゃない。本来・・僕の記憶は全部失われているはず。・・・椿だけが家族ごっこをやるなら止めはしないよ。一人遊びになるけどね。」
「お兄ちゃん!なんで・・・・なんでそんな冷たいこと言うの?」
「・・・僕はお前が思ってるほど、綺麗、かっこいいお兄ちゃんじゃない。」
「・・・うんん、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん・・・何があっても・・・」
「・・・・・・・分かった。もう・・疲れた。サクラ・・ここには他に何か用があるの?」
「・・・・え?、いや、ツバキさんに合わせるのが目的なだけで・・・・・って・・キク!私はここからキクを出す気はありませんから・・・」
ばっと手を前に広げるサクラ・・頭を抑えてため息を吐くキク。
「お兄ちゃん・・なんで・・・お兄ちゃん・・私と居てくれるって・・・私ッ・・・」
「・・・・・」
「・・・・・お兄ちゃん!・・・お兄ちゃん・・・お父さんはお兄ちゃんのこと大好きだよ。言ったでしょう?頭を撫でていたって・・あの日・・お父さんと桜を見に行った日・・・・・・」
ツバキは思い出すように、そしてお兄ちゃんが何処にも行かないように叫びながら言い始めた。
お兄ちゃん・・私は・・何があってもお兄ちゃんと旅することを諦めない。前世では出来なかったこと・・今度はお兄ちゃんの代わりに私が頑張るから・・・・だから・・最後に・・お父さんの本音を聞いて大事なことだから・・・・・
もう・・諦めて・・僕達、都倉家は終わったんだ。もう椿しかいない。僕は名前を捨てた。家族を捨てるために・・だからもう僕を家族に戻さないで・・もう捨てたから・・もう思い出したくない・・・思い出したら全部椿のせいにしてしまう。『お前が産まれたから』『お前が妹だから』って・・・・あ、もう・・してしまっているか・・
お願いします。キク・・ツバキさんを捨てようとしないで・・・捨ててしまったら・・今度こそツバキさんは路頭に迷う。ずっとこの十年待ってくれていたのだから・・・
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