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キュートなSF、悪魔な親友
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エントランスのモニタが来訪者を告げる。
「やっほー」と志麻の明るい笑顔が見えたから遠隔で開いて。暫くすると玄関のチャイムが鳴る。
うん、もう緊張はしない。
田村はいつものようにソラを抱き上げた。
いつだって、玄関のチャイムが鳴るとソラは、それが当たり前のように田村の足元に擦り寄ってくるから。
「遅かったね。あの後まだ打合せが残ってた?」
今日は同じく定時上がりだったはずで。
「いや。一旦家帰って支度してきたから」
「支度?」
「今日は泊まりに来てやったぜ」
言われてみれば、確かに私服だしちょっとしたカバンなんて持ってきている。
「ほら、明日は休みじゃん、俺も田村も。だから」
「えええええ!」
「かぐちゃんも誘ったんだけどね。ま、あいつはいつでも泊まってるだろうけど。たまには一緒にどお?って」
我が物顔で廊下を進み、リビングの片隅に荷物を置きながら志麻が言う。
ソラなんて、とっとと腕から逃げ出して志麻の足元に「遊んで」と擦り寄っているし。
「したらなんか、用があるから今日は無理って。田村が寂しがってるから、志麻さん遊んでやってーだって」
鹿倉のウィンクが浮かぶ。
絶対ほくそ笑んでるのがわかるから、頭の中でひっぱたいてやった。
「あ。迷惑だった?」
ソラのオモチャを手に持って、くるっと振り返ると一瞬不安そうな顔をしたから、
「全然、ダイジョブっスよ」
慌てて首を振る。いつだって気遣いの人だから、気にしないようしっかり否定しないと。
「ん」
ふわりと、優しい笑顔になる。
二人でいる、ということにやっと慣れたばかりなのに、無邪気に“泊まる”なんて言われてまた緊張してしまう。
「こないだはさ、泊まるつもりだったけど、おふくろが変な電話で呼び出すから」
「あー。あれ、何だったンスか? ちょっと気になってたンスけど」
「田村、また変な敬語になってる」
「あ……そか」
「あれね。ウチ、一回り下の妹がいんだよね。大学入りたてなんだけど。そいつが今いる大学辞めるとか言い出したらしくて、急遽家族会議。この歳になって家族会議かよ、って話なんだけどさ」
実際。田村が元カノの話をした時に志麻は泊まると言っていたのだったが、実家からの電話で慌てて帰ってしまっていたから。
安心と心配が綯い交ぜになって、田村としては気になって仕方がなかったが、割と平和な話にほっとする。
「家族、仲いんだねー」
「あー、かなあ? 普通だと思うけど。ただまあ、何かっちゃー電話はかかってくるね。この歳で一人でいるから、心配されても仕方ないんだけど」
「あ……お見合い、とか?」
「そうそう、あれ、いつだったかな?」
立ち話してるのもなんだし、とソファに促す。
ダイニングテーブルに用意していたビールを手渡して。
「一回騙されたんだよ、親に。見合いだと思わせないで見合いさせられて。やっべーって思ったから必死で逃げたけど。まじあれは勘弁してくれーっておふくろと久々にマジ喧嘩したわー」
くふくふと笑いながら言って、ビールを開けた。
「お先」と言ってそのまま飲むのを見届けて、田村はキッチンへと向かった。
「結婚、したいとか、ない?」
「まだまだないねー。俺、そもそも彼女いねーし。かと言って見合い相手と結婚なんてしたら、絶対親のレールに戻されかねないからさ」
志麻が来る直前に仕上げておいた料理を持って、ダイニングへ運ぶ。
「こっちでメシ、食いましょう」と志麻を誘い、自分も椅子に座った。
「親のレールって?」
「んー。政治活動? 的な? なんかさ、昔からの地盤ってヤツがあるみたいで」
前にそんな話を聞いたことがあったから、田村もビールを開けて、缶をぶつけると一口飲んで、そのまま話の続きを促した。
「ま、ゆーてもそっちは弟に任せてるからさ。俺としては、実家を出た時点でそのレールからは一抜けしてんだけどね」
「志麻さん、三人兄弟?」
「そ。三つ下の弟と、遅れて来た反抗期真っ只中の妹と三人。あ、妹、めっちゃ可愛いよ。見る?」
「うわ、シスコン」
「いや、そりゃそうなるっしょ? 生まれた時俺、小六だぜ? もー、半分娘みたいなモンだし」
「まあ志麻さんの妹さんなら相当な美女でしょうけど」
志麻がスマホの写真フォルダを開いて見せる。
確かに可愛い。
ただ、志麻とは顔が小さくて目が大きいってところは似ているけれど、印象としてはボーイッシュな感じで。
志麻の印象はどちらかと言うと“スイート”。
田村の主観も含まれるかもしれないけれど。
「なんか、モデルさんみたい」
「だろだろ? なんかの雑誌の読モやってるって。俺、あんまファッション誌見ないから知らないんだけど」
目尻を下げ、完全に親ばか――妹ばか――な顔で写真を何枚かめくって見せて。
田村はそんな、志麻の新たな一面が知れて嬉しい。
そのまま、この写真は家族旅行のだとか、高校の卒業式で代表やってたとか、妹自慢を繰り広げる志麻をただただにこにこと見ていて。
「あ。ごめん田村。ちょっと引くよね?」
「そんなことないよ。俺は弟しかいねーし、なんなら喧嘩ばっかだったし。妹なんていたら、ほんと可愛くてしょーがないんだろーなーって、想像しかできない」
サラダを取り分けて差し出しながら言うと、志麻が。
「弟はね、一緒一緒。俺も子供の頃は結構喧嘩してたな」
笑いながら皿を受け取って。
志麻は指も綺麗だけれど、箸の持ち方も綺麗で。
きっと育ちがいいんだろうな、とちょっとした仕草で感じる。
「やっほー」と志麻の明るい笑顔が見えたから遠隔で開いて。暫くすると玄関のチャイムが鳴る。
うん、もう緊張はしない。
田村はいつものようにソラを抱き上げた。
いつだって、玄関のチャイムが鳴るとソラは、それが当たり前のように田村の足元に擦り寄ってくるから。
「遅かったね。あの後まだ打合せが残ってた?」
今日は同じく定時上がりだったはずで。
「いや。一旦家帰って支度してきたから」
「支度?」
「今日は泊まりに来てやったぜ」
言われてみれば、確かに私服だしちょっとしたカバンなんて持ってきている。
「ほら、明日は休みじゃん、俺も田村も。だから」
「えええええ!」
「かぐちゃんも誘ったんだけどね。ま、あいつはいつでも泊まってるだろうけど。たまには一緒にどお?って」
我が物顔で廊下を進み、リビングの片隅に荷物を置きながら志麻が言う。
ソラなんて、とっとと腕から逃げ出して志麻の足元に「遊んで」と擦り寄っているし。
「したらなんか、用があるから今日は無理って。田村が寂しがってるから、志麻さん遊んでやってーだって」
鹿倉のウィンクが浮かぶ。
絶対ほくそ笑んでるのがわかるから、頭の中でひっぱたいてやった。
「あ。迷惑だった?」
ソラのオモチャを手に持って、くるっと振り返ると一瞬不安そうな顔をしたから、
「全然、ダイジョブっスよ」
慌てて首を振る。いつだって気遣いの人だから、気にしないようしっかり否定しないと。
「ん」
ふわりと、優しい笑顔になる。
二人でいる、ということにやっと慣れたばかりなのに、無邪気に“泊まる”なんて言われてまた緊張してしまう。
「こないだはさ、泊まるつもりだったけど、おふくろが変な電話で呼び出すから」
「あー。あれ、何だったンスか? ちょっと気になってたンスけど」
「田村、また変な敬語になってる」
「あ……そか」
「あれね。ウチ、一回り下の妹がいんだよね。大学入りたてなんだけど。そいつが今いる大学辞めるとか言い出したらしくて、急遽家族会議。この歳になって家族会議かよ、って話なんだけどさ」
実際。田村が元カノの話をした時に志麻は泊まると言っていたのだったが、実家からの電話で慌てて帰ってしまっていたから。
安心と心配が綯い交ぜになって、田村としては気になって仕方がなかったが、割と平和な話にほっとする。
「家族、仲いんだねー」
「あー、かなあ? 普通だと思うけど。ただまあ、何かっちゃー電話はかかってくるね。この歳で一人でいるから、心配されても仕方ないんだけど」
「あ……お見合い、とか?」
「そうそう、あれ、いつだったかな?」
立ち話してるのもなんだし、とソファに促す。
ダイニングテーブルに用意していたビールを手渡して。
「一回騙されたんだよ、親に。見合いだと思わせないで見合いさせられて。やっべーって思ったから必死で逃げたけど。まじあれは勘弁してくれーっておふくろと久々にマジ喧嘩したわー」
くふくふと笑いながら言って、ビールを開けた。
「お先」と言ってそのまま飲むのを見届けて、田村はキッチンへと向かった。
「結婚、したいとか、ない?」
「まだまだないねー。俺、そもそも彼女いねーし。かと言って見合い相手と結婚なんてしたら、絶対親のレールに戻されかねないからさ」
志麻が来る直前に仕上げておいた料理を持って、ダイニングへ運ぶ。
「こっちでメシ、食いましょう」と志麻を誘い、自分も椅子に座った。
「親のレールって?」
「んー。政治活動? 的な? なんかさ、昔からの地盤ってヤツがあるみたいで」
前にそんな話を聞いたことがあったから、田村もビールを開けて、缶をぶつけると一口飲んで、そのまま話の続きを促した。
「ま、ゆーてもそっちは弟に任せてるからさ。俺としては、実家を出た時点でそのレールからは一抜けしてんだけどね」
「志麻さん、三人兄弟?」
「そ。三つ下の弟と、遅れて来た反抗期真っ只中の妹と三人。あ、妹、めっちゃ可愛いよ。見る?」
「うわ、シスコン」
「いや、そりゃそうなるっしょ? 生まれた時俺、小六だぜ? もー、半分娘みたいなモンだし」
「まあ志麻さんの妹さんなら相当な美女でしょうけど」
志麻がスマホの写真フォルダを開いて見せる。
確かに可愛い。
ただ、志麻とは顔が小さくて目が大きいってところは似ているけれど、印象としてはボーイッシュな感じで。
志麻の印象はどちらかと言うと“スイート”。
田村の主観も含まれるかもしれないけれど。
「なんか、モデルさんみたい」
「だろだろ? なんかの雑誌の読モやってるって。俺、あんまファッション誌見ないから知らないんだけど」
目尻を下げ、完全に親ばか――妹ばか――な顔で写真を何枚かめくって見せて。
田村はそんな、志麻の新たな一面が知れて嬉しい。
そのまま、この写真は家族旅行のだとか、高校の卒業式で代表やってたとか、妹自慢を繰り広げる志麻をただただにこにこと見ていて。
「あ。ごめん田村。ちょっと引くよね?」
「そんなことないよ。俺は弟しかいねーし、なんなら喧嘩ばっかだったし。妹なんていたら、ほんと可愛くてしょーがないんだろーなーって、想像しかできない」
サラダを取り分けて差し出しながら言うと、志麻が。
「弟はね、一緒一緒。俺も子供の頃は結構喧嘩してたな」
笑いながら皿を受け取って。
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