キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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「そいえばさー、こないだ思ったんだけど」
 取り分けられたサラダを食べて「旨」なんて言いながら。
「かぐちゃんって、泊まるのいつも、ソファ?」
「え?」
「あ、まあ別に俺もソファでいいんだけど。前来た時見せてくれた、寝室じゃない方の部屋って超ジムっぽい感じで寝れそうにないし、かと言ってそっちのスペース? 仕切ったら部屋になるトコ。そこもなんか客間っぽい感じじゃないなーと思って」
 言われて気付く。
 実際、鹿倉以外の友人が泊まる時なんて、ほぼ酔っ払いだから基本的にリビングに雑魚寝で。
 じゃあ、と頻繁に泊まる鹿倉がそんなに大きくもないソファでいつも寝るのは、さすがに不自然で。
「えっと。いや、あいつはほら、そこのラグで。いつも定位置だし」
「えー。布団くらい敷いてやれよ」
「毛布はかけてる!」
「あ、そお?」
「……じゃ、志麻さん、ベッドで一緒に寝ます?」
 もの凄い、勇気を振り絞って言ってみる。
 というより、頭の中で鹿倉が「イケイケ」と騒いでいるから。
「ベッド広いんだっけ? おまえ寝相良い方?」
「多分」
「俺、寝相悪いんだよねー。蹴とばしてもいいなら、一緒に寝てもいいよ」
 思ったより、さらっと返される。
 妄想の中の鹿倉がくふくふと笑いながら「そのままヤってしまえ」なんて言っていて。
「じゃあ、一緒に」
「いいねえ。なんか子供の頃のお泊まりみたいで。まあ、何十年も前の話だけど」
 田村の下心なんて想像もしていないだろう志麻が、楽しそうにビールを飲む。
 テーブルに用意されている料理が、志麻の好きなアサリの酒蒸しやサーモンのカルパッチョだったり。
 そんな田村の自然な“おもてなし”が志麻はただただ嬉しくて、子供の頃の話や、最近よく見る動画の話まで、二人で気持ちよく飲んで喋っていると、気が付くと日付を超えていた。
「うーわ。めっちゃ時間経つの早いなー」
「さすがに眠いでしょ。志麻さん、シャワーですけど風呂先入って。俺ここ片付けるから」
 立ち上がって、キッチンへと向かう。
「出た、おかーさんたむちゃんが」
 志麻も立ち上がり、食器を運ぼうとするから、
「置いといていいよ」とその手を止めた。
「着替えとか、持ってきてるんでしょ? バスルーム、あっちだから」
 横に立って、廊下へと促す。
「食洗機あるから大したことないし。志麻さん来る前に道具は片付けてるから」
「そゆとこ、そゆとこ。ほんと、田村のことヨメにしたい」
「じゃ、してください」
「いいねえ」
 くふくふと笑いながら言った志麻の目を、田村が真剣な目で見つめ返した。
 ついでに、手を握る。
「え?」
「好きです。俺、志麻さんのこと」
 そのまま、突っ走る。頭の中の鹿倉が煽るから。
「俺も、たむちゃんのことは、好きだけど?」
 思ったよりも、平然と返された。
 ので。
 田村はふっと表情を緩めて笑顔を作り。
「じゃあ、それでいいです」
 絶対にその意味が違うけれど、田村は軽く頷いた。
「え? え? 何? どゆこと?」
「そのまんまの意味ですよ」
 目を丸くして、混乱している志麻の頬にキスをする。
「難しいこと、考えなくていいんで。俺が志麻さんの傍にいるの嫌じゃないなら、便利なヨメとして置いといてくれればそれで」
「…………」
「シャワー、どうぞ。タオルは棚ん中入ってるし、シャンプーとかはこだわりないなら俺の使って」
 完全にバグってしまっている志麻に、笑いかける。
 努めて軽く。
 これ以上は何も求めないから。今は。
 深く考えないで、ただ一緒に過ごしてくれればそれでいいと思えるから。
「はい、志麻さん。立ったまま寝ないで」
 ぱん、と目の前で軽く手を叩いて。
「あ……うん……」
 ぎこちない動きでバスルームに向かう志麻を見送り、田村は天を仰いだ。
 そして自分の頬をばちんと叩き、キッチンへ。
 何も考えないで、手を動かす。
 ただ目の前の、一つ一つの作業に集中。
 だって、そうしないと暴れだしてしまいそうだから。
 言ってしまった。
 伝わったかどうかはちょっと微妙だけれど。
 頭の中で鹿倉がくふくふ笑っている。
 バスルームから出た志麻が、どういう反応をするのかはわからない。
 酔っ払った上のおふざけと思われるなら、それもよし。
 これまでの流れから言っても、多分嫌いじゃないハズだから。
 だったらそれだけでいい。
 食器を機械にかけて、朝食用にお米を洗って炊飯器にセットして。
 そんないつもの動作をすることで、平常心を呼び戻す。
 エプロンを外してリビングに向かい、ソファに座って志麻を待った。
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