キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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「あれ、結構品数多いね、今日。俺こんなに食えねーよ?」
 鹿倉が田村の部屋を訪れ、ダイニングテーブルに並んでいる料理を見て言った。
 普段の定番おつまみである枝豆や鹿倉の好きな卵焼きだけでなく、砂肝のガーリックバター炒め、厚揚げに豚キムチが載っている結構ボリューミーなつまみや、グリーンサラダなど、どれも美味しそうだけれどいつもの量より少し多い気がして。
「うん、後で志麻さんが来るから」
 まだメニューを増やすらしくキッチンで何やらフライパンを振っている田村があっさり言う。
「だからさー、何で毎回志麻さん来る時に俺も呼ぶかな」
 玄関を開けた瞬間から美味しい匂いがしていて、着替えもしないでそのままダイニングに入ってきた鹿倉だったから。
 ネクタイを解きかけていた手を止めた。
「かぐ、いないと俺この部屋で志麻さんと二人は、無理」
「うん。じゃ、俺帰るわ」
 言って回れ右。
 した鹿倉の腕を慌てて田村が捕まえた。
「かぐー!」
「ばっかじゃねーの?」
「なんで!」
「いい加減、腹くくれよ」
 鹿倉の言葉に田村が無言で首を振る。
「何? 最終的に三人でヤろっての?」
 赤くなった田村がスパーンと頭をはたく。
「ってーな」
「かぐが下品なことゆーから!」
「俺が上品だったことがあるかよ」
「ないけど!」
 ないんかい、と内心突っ込んで。
 鹿倉は、ふーと小さくため息を吐いてみせた。
「あのさ、田村。そろそろ本気で志麻さんオとそうよ?」
「無理!」
「無理じゃないって」
「無理だってば。志麻さん、俺なんか相手にしてくんねーもん」
 しゅん、としょげて唇を尖らせた田村が可愛くて。
 鹿倉はその顎を指で上向かせる。
「田村は可愛いって。自信持て?」
「可愛くなんかねーし」
 自分より背の高い田村に顎クイなんてカッコつかねーなーと思いつつ、半泣きな表情の田村にニヤリと笑ってみせ、
「大丈夫だよ。俺がいつもゆってるみたく、可愛く“抱いて”ってねだりゃ、志麻さんがちゃんと襲ってくれっから」
 ぱちこん、とウィンクする。
 すると田村がその手を振り払い、
「違うし!」と膨れた。
 くふくふと笑いいつものように鹿倉が鼻の奥でふざける。
「いいから。一緒にいてよ、かぐ」
「ヤ・ダ」
 今度は可愛い声で言って。
 田村に背を向けて廊下に出ようとする。
「かぐ……」
 腕を引いて、抱きしめようとしたけれど。
「相手が違う」
 するりと逃げた。
 鹿倉が自分の腕から逃げる、なんて今までにないから。
 本当に泣きそうな顔で鹿倉の顔を見つめる。
「んな顔、すんなや」
「だって……」
「上手くいかなくても、大丈夫。俺が相手してやるから」
 鹿倉が目を細めて、今度は柔らかい微笑みを見せた。
「焦って押し倒せなんて言わねーよ。ゆっくりでいいから、意思表示くらいしな」
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