キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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「もお、いいの?」
 何度目かなんてもうわからなくなるくらい鹿倉の中に放った後、脱力している体を抱きしめて横になると、鹿倉が完全に蕩けた声で言った。
「よっくん、寝そうだし」
「ん……」
「明日も仕事だし」
 細い鹿倉の体を田村が腕の中にすっぽりと収めて、毛布を被る。
 そんないつもの姿勢になると、鹿倉は目を閉じた。
「やっぱ、眠かったんじゃん」
「寝てないし」
「別に意地張んなくていいけど」
「意地張ってねーし」
「何、かぐ。反抗期?」
 田村が笑うと、可愛くふくれっ面をしてみせた。
「そいえば。こないだもっさんと会ったよ、ジムで」
「へー。俺ほぼ毎日会ってるけど、会社で」
 間髪入れず対抗するように鹿倉が突っ込んで、また目を閉じた。
 このまま眠りにつくのだろう、と田村は寝物語でもいいやと低く囁くように話す。
「なんかさ、かぐに付き合ってるコいるのかって訊かれたよ。あれって志麻さんから聞いたのかな」
 鹿倉からの返事はなかったけれど、柔らかな髪を撫でながら「志麻さん、そーゆー話人にしないと思ってたんだけどな」と続けた。
 すると鹿倉が少し身じろぎして腕の中の落ち着く場所を探すから、
「くすぐったいなあ」
 と大人しくさせるべくまたぎゅっと抱きしめて。
「もー、かぐが変な嘘つくから、俺まで誤魔化さなきゃなんなくて大変なんだけど」
 田村が苦笑する。だって、自分が“付き合ってるコ”的な存在であることを、見抜かれるわけにはいかないから。
 鹿倉が志麻さんに自然に嘘をつけるように、自分が山本に自然に誤魔化せたかどうかは甚だ疑問ではあるが。
「苦しい」
「あ、ごめん。力入れ過ぎてた?」
 鹿倉の目が開いて、一瞬目が合った。
 何かを言おうとした気がして。
「ん?」
 問うと。
「…………寝る」
「うん。おやすみ」
「うるさいんだけど」
「はいはい。黙って寝ますよ。じゃ、電気消すね」
 そう言った田村の横で。
 鹿倉はじっとしながら眠ったフリをしていた。
 暫くして寝息が聞こえてきたから、鹿倉はふう、と大きく息を吐く。
 眠れるわけがない。
 田村は、いい。
 田村はきっと、大丈夫だろう。
 と鹿倉は思う。
 自分が態度を以前から変えていないから、恐らく相手を追究するつもりなんてないだろうし。
 今までも、誰と寝ようともその相手を探ろうとしたことなんて一度もなかったし。
 何なら以前堀さんとの関係を疑っていたから、ひょっとするとそっちにしか目を向けてないかもしれないし。
 実際、堀に対してのスキンシップは欠かさないし。
 それよりも。
 律が田村を疑うのが一番、怖い。
 あーもう嫌だ。
 一体何を話したのだろうか。
 鹿倉は田村が嘘をつけるなんて、思ってないから。
 真っ正直に何かボロ出していなければいいと思う。
 とりあえず。
 何か疑われたら何とかして自分が誤魔化そう。と。
 そんなことをぐるぐると考えながら、田村の腕の中で半分呻りながら眠りについた。
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