キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 鹿倉の不在に対して、志麻は一言「あ、そーなん?」と片付けただけだった。
 田村が緊張しながらビールを手渡すと、
「お、さんきゅ。いつもながら、田村んちのご飯は豪華だねえ」
 足元に擦り寄って来たソラの頭を撫でながら言って。
「あー……あざっす」
「これ以上出されても食えねーし、いいから田村もこっち来いよ」
 手招きされて、志麻の向かい側に座る。
 いつも鹿倉が座っている場所に志麻がいるから、なんだか不思議な感覚で。
「ほい、おつかれさん」
 志麻がビールの缶をぶつけた。
 あれから鹿倉が出て行った後、廊下とキッチンを何度も往復しながら志麻に断りのラインを入れるかどうか悩み、その言い訳を考えているうちにエントランスに志麻が到着して。
 緊張しながらもその緊張を見せないように、ソラを抱いて冷静を装って玄関を開けると、志麻が可愛く「お土産ー」とビールの入ったコンビニ袋を押し付けてきた。
 代わりにソラを抱いてリビングに入ると、ひとしきりソラを猫じゃらしで遊ばせて。
 キッチンで調理器具を片付けていた田村がそんな志麻をぼんやり見ていたが、ダイニングテーブルに並んだ料理を見てリビングから移動してきたからビールを手渡したのだった。
「かぐちゃん、どしたん?」
「さあ? わかんないけど、急に帰るって」
「彼女から呼び出しでもあったんじゃね?」
 田村は曖昧に笑った。
「いやしかし、こんなに作るの大変だったろ?」
「や、大したことないっス。どれも簡単なヤツばっかだし」
「たむちゃん、もーその変な敬語やめよーよ」
「え?」
「こないだデートした仲じゃん」
 志麻がくふくふと笑いながら、ビールを飲む。
 細く長い指で綺麗に箸を持って、サラダを口に運ぶ。
 ぷるぷるの唇が開いて、自分の作った料理がその中に運び込まれる。
「旨っ」くるん、と丸い目が輝く。
 と。
 そんな一連の動きだけで、胸がきゅっとして。
「あのレポート、堀さんが爆笑してた。コレ志麻ちゃん口説いてんじゃんって」
 言われて思わず赤くなってしまった。
「べ、別に、あれは……」
「俺要素、貝だけ、だけどな?」
「あ……うん。ま、貝は……正直志麻さん喜ばせたかったけど」
「そんな俺、貝好き?」
「だって、堀さんが最初言い出したし」
「いや、別に貝だけ好きってわけじゃねーんだけど。基本的に海鮮系は好きなんだよ」
 残念ながら今日のメニューに海鮮がなく。
 テーブルの料理に目をやって、田村が少し申し訳なさそうな表情をしたから、志麻が慌てて
「ああ、ごめんごめん。そーゆー意味じゃねーから」と目の前で掌をひらひら振った。
「もうね、段々肉ばっかじゃ、しんどくなってきてんのよ正直」
「志麻さん、最近宅配ばっかってゆってたよね」
「そうそう。で、お手軽なの頼むと大抵肉系になるからさ。俺もう、三十過ぎてるし、おっさんにガッツリ系はそろそろキツイ」
 サラダ、卵焼き、枝豆というあっさりメニューを指差して。
「だからこーゆーの、凄い、いいよ」
 丸い目を細めてにっこり笑ってくれるから嬉しくなる。
「んじゃ、ちょいちょいウチに来てメシ食うのは?」
 ここぞ、とぐっと腹に力を入れて誘ってみる。
「そりゃ、ありがたいよ。でもかぐちゃんがいつも世話になってんだろ? 俺まで来ちゃ、悪いし」
「いや。志麻さん来るならあいつ追い出すし」
「ひでえな。あ、それで今日追い出した?」
「しないしない。俺そんな鬼じゃねーし。だからほんと、ちょっと二人分では多いんだよね、これ」
「余ったら俺、お持ち帰りするわー」
「もちろん、もちろん。俺一人でも持て余すし」
 話しているうちに、緊張感なんて忘れてしまって。
 結局いつも仕事で一緒に過ごしているから、変な気負いさえ消えてしまえば気持ちよく話せる相手なわけだから、アルコールも入って肩の力も抜け二人でいろんな話をした。
 すると、堀からチームのグループラインに
「今テレビで例のアイドルが出てるから、ちょい見てみて」なんてメッセージが入ったので、リビングへと移動する。
 歌番組の一コーナーらしく、これから来るアーティストなんて形で紹介されているのが、チームで話を進めている企画で契約したアイドルで。
「お、凄いね。この子たち、当たったらマジ今回の企画、絶対バズるな」
「ん……堀さん、やっぱすげえ」
 ビールと枝豆の皿だけリビングのローテーブルに移動させ、ソファに並んで飲み始めた。
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