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キュートなSF、悪魔な親友
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「はーい、志麻です。本日、ドライブデート企画ということで、田村さんの運転で楽しく過ごして参りましょう」
カメラのレンズを田村に向け、テンション高めに志麻がナレーションする。
「いやいや、志麻さん。ここ、カメラ回す必要なくないっスか?」
助手席でくふくふと笑いながらこの状況を楽しんでいる志麻に、口では突っ込めるものの実際に運転している立場としてはそれ以上の制止ができるわけでもなく。
「必要あるある。ドライブデートの醍醐味って、運転してる彼氏の横顔みてキュンキュンするってシチュだろ?」
「志麻さん彼女役っスか?」
「うん、そう。リアル彼女いないたむちゃんの為に、俺が代役してやってんの」
「ったくもう。何で堀さん、俺にこの企画投げたかなあ? こんなん、リア充大魔王のもっさんにやらせりゃいいのに」
「堀さん、田村ならうまくやれっから、任せとけって言ってたよ? だから俺も、まさかおまえが俺に泣きついてくるとは思わなかったんだけど」
「堀さんが何考えてんのか、さっぱりっスよ。俺、そろそろいない歴三年超えるんだけどなあ」
「彼女いなくてもヨリドリミドリだってことなんじゃね?」
「んなモテ男だったら、ここで志麻さん乗っけてません」
話しながら、高速道路のランプへ続くレーンへと車線変更すると。
「あ、高速乗るんだ?」
「海行きます。超王道で」
「いいねえ」
最初、堀からこの話を受けた時。隣に乗せるつもりで鹿倉を誘った田村だったが、
「ばっかじゃねーの? めっちゃ美味しいトコ、相手間違えてんじゃねーよ」
とスパーンと頭をはたかれ。
企画の内容こそ協力してくれたけれど、実際に素案を試したいと、田村のスマホを奪い取って志麻にライン入れたのは鹿倉だった。
「志麻さん、貝好きっていつも言ってるでしょ? 炭火で好きなの焼いて食えるってトコ、連れてきます」
「わーい、やったー。って、俺はいいけどさ。それ、企画としてどおよ?」
「そりゃ、だって。肉食女子ばっかじゃないっしょ? 肉企画がもてはやされてるからこその、ここで海鮮ってのが新鮮なんじゃないかなって」
「ほお。たむちゃんにしてはなかなか、考えてるねえ」
「しかもですよ。夏場だと一緒に素潜りして採った貝焼いて食うとか、良くないですか?」
「彼女の水着を堪能するだけじゃなく、狩猟してるワイルドを見せつけるって奴か。なかなかいいんじゃないの?」
「でしょでしょー?」
暫く高速道路を走っていると海岸線へ抜け。
海が見えてくると志麻がカメラを外の風景へと向けた。
「うーみっ、うーみっ、うーみっ」
「いやいや、志麻さん。何そのテンション」
「こんな晴れた日の海なんて、見たらテンション上がるっしょ」
「さすがに海には入りませんよ。今日は」
「ったり前だっつの。春先の海に入るばかがどこにいるよ?」
「いや、サーファーとかなら」
「俺サーファーじゃねーし」
「やってそうですけど」
「昔若い頃ボディボードは、やったことあるよ」
「あー、ぽいぽい」
「ぽいかあ?」
「元ギャル男でしょ?」
言うと志麻が吹き出した。
「え? 何で知ってんの?」
「堀さんから聞いた。ガングロが流行ってた頃、志麻さん真っ黒だったって」
「人の黒歴史横流ししてんじゃねーよ、もう」
正統派真面目企画をきっちり仕上げ、企業のトップクラスの団体がこぞって使いたがる現在の志麻は、帝王大学というトップクラスの私立大学を出ているお坊ちゃまで。
こうして横に座っている姿だって、誰がどう見ても“元ギャル男”なんて過去は欠片も存在しない、上品な成人男性だから。
過去の武勇伝を笑い話のネタにして、面白おかしく喋っていいのは多分堀だけで。
でもそれをチーム全員が知っていることも、本当は志麻だってわかっている。
「あの人俺より黒かったからねーって」
「そりゃ、あの頃は堀さんも釣りにはそこまでハマってなかったから、まだ今みたいに真っ黒にはなってないもん」
「先週また船で出てて、数こそそんな釣れなかったらしいけど、マジ真っ黒に焦げてた」
「ミネさんチームと同じ雰囲気だよね、あの人」
「ザ、海の漢、的な?」
「そうそう」
二人でそんなくだらない話をしていると、車は海水浴場が点在する地域に入り。暫く走って海鮮市場に到着した。
カメラのレンズを田村に向け、テンション高めに志麻がナレーションする。
「いやいや、志麻さん。ここ、カメラ回す必要なくないっスか?」
助手席でくふくふと笑いながらこの状況を楽しんでいる志麻に、口では突っ込めるものの実際に運転している立場としてはそれ以上の制止ができるわけでもなく。
「必要あるある。ドライブデートの醍醐味って、運転してる彼氏の横顔みてキュンキュンするってシチュだろ?」
「志麻さん彼女役っスか?」
「うん、そう。リアル彼女いないたむちゃんの為に、俺が代役してやってんの」
「ったくもう。何で堀さん、俺にこの企画投げたかなあ? こんなん、リア充大魔王のもっさんにやらせりゃいいのに」
「堀さん、田村ならうまくやれっから、任せとけって言ってたよ? だから俺も、まさかおまえが俺に泣きついてくるとは思わなかったんだけど」
「堀さんが何考えてんのか、さっぱりっスよ。俺、そろそろいない歴三年超えるんだけどなあ」
「彼女いなくてもヨリドリミドリだってことなんじゃね?」
「んなモテ男だったら、ここで志麻さん乗っけてません」
話しながら、高速道路のランプへ続くレーンへと車線変更すると。
「あ、高速乗るんだ?」
「海行きます。超王道で」
「いいねえ」
最初、堀からこの話を受けた時。隣に乗せるつもりで鹿倉を誘った田村だったが、
「ばっかじゃねーの? めっちゃ美味しいトコ、相手間違えてんじゃねーよ」
とスパーンと頭をはたかれ。
企画の内容こそ協力してくれたけれど、実際に素案を試したいと、田村のスマホを奪い取って志麻にライン入れたのは鹿倉だった。
「志麻さん、貝好きっていつも言ってるでしょ? 炭火で好きなの焼いて食えるってトコ、連れてきます」
「わーい、やったー。って、俺はいいけどさ。それ、企画としてどおよ?」
「そりゃ、だって。肉食女子ばっかじゃないっしょ? 肉企画がもてはやされてるからこその、ここで海鮮ってのが新鮮なんじゃないかなって」
「ほお。たむちゃんにしてはなかなか、考えてるねえ」
「しかもですよ。夏場だと一緒に素潜りして採った貝焼いて食うとか、良くないですか?」
「彼女の水着を堪能するだけじゃなく、狩猟してるワイルドを見せつけるって奴か。なかなかいいんじゃないの?」
「でしょでしょー?」
暫く高速道路を走っていると海岸線へ抜け。
海が見えてくると志麻がカメラを外の風景へと向けた。
「うーみっ、うーみっ、うーみっ」
「いやいや、志麻さん。何そのテンション」
「こんな晴れた日の海なんて、見たらテンション上がるっしょ」
「さすがに海には入りませんよ。今日は」
「ったり前だっつの。春先の海に入るばかがどこにいるよ?」
「いや、サーファーとかなら」
「俺サーファーじゃねーし」
「やってそうですけど」
「昔若い頃ボディボードは、やったことあるよ」
「あー、ぽいぽい」
「ぽいかあ?」
「元ギャル男でしょ?」
言うと志麻が吹き出した。
「え? 何で知ってんの?」
「堀さんから聞いた。ガングロが流行ってた頃、志麻さん真っ黒だったって」
「人の黒歴史横流ししてんじゃねーよ、もう」
正統派真面目企画をきっちり仕上げ、企業のトップクラスの団体がこぞって使いたがる現在の志麻は、帝王大学というトップクラスの私立大学を出ているお坊ちゃまで。
こうして横に座っている姿だって、誰がどう見ても“元ギャル男”なんて過去は欠片も存在しない、上品な成人男性だから。
過去の武勇伝を笑い話のネタにして、面白おかしく喋っていいのは多分堀だけで。
でもそれをチーム全員が知っていることも、本当は志麻だってわかっている。
「あの人俺より黒かったからねーって」
「そりゃ、あの頃は堀さんも釣りにはそこまでハマってなかったから、まだ今みたいに真っ黒にはなってないもん」
「先週また船で出てて、数こそそんな釣れなかったらしいけど、マジ真っ黒に焦げてた」
「ミネさんチームと同じ雰囲気だよね、あの人」
「ザ、海の漢、的な?」
「そうそう」
二人でそんなくだらない話をしていると、車は海水浴場が点在する地域に入り。暫く走って海鮮市場に到着した。
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