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キュートなSF、悪魔な親友
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「かぐ……かぐ」
田村が、震えている鹿倉を抱きしめた。
「ごめん、かぐ。俺、かぐのこと責めるつもり、ないよ?」
温かい腕で、包み込む。
「かぐが他に誰か好きな人できて、その人に気持ちが行っちゃってるのに俺が抱くのは違うんじゃないかなって、そう思っただけだよ?」
その温もりで、鼻の奥がつんとした。
「かぐが、俺に抱かれたいって、そう思ってくれてんだったら、俺は全然いいよ? 誰だか知んないけど、かぐのこと抱いてるヤツのこと、別に恨むつもりもないし。あ、まあ嫌がるおまえに無理矢理ヤるヤツは赦さねーけど」
あー、泣いてしまうな、と冷静に感じた。
底抜けに優しくて、誰よりも自分を甘やかしてくれる。
一番温かい温もりで、ずっと自分を包んでくれている存在。
だからこそ、失いたくなくて。
ココに帰って来たくなる。
鹿倉は、田村の腕に包まれながら少しずつ自分を取り戻した。
「俺、かぐのこと抱きたいっていつでも思ってるし」
「それは、そろそろ違くないか?」
急に、鹿倉の声に芯が通る。
田村は「ん?」と腕の中の鹿倉の顎に手をかけ、自分へと向ける。
急にその声から“甘え”が無くなったことに気付いて。
「おまえ、本命は志麻さんだろ?」
この状況で、言い出すか? と田村が眉根を寄せた。
「本気で志麻さんのこと、オとす気あんのかよ?」
「えええええ?」
「大体、おまえが俺のことしか抱けないから、それで俺までが悩むことになってんだよ」
「ちょ……待って、かぐ。なにそれ?」
「おまえがとっとと志麻さんに抱かれちまえば、俺だっておまえとのセックスなんてアテにしねーんだよ」
「はいいいい?」
「そろそろ、本腰入れて志麻さんオとそうぜ」
「かぐ、ちゃん?」
ああ、勝手だ。勝手なことを言っているのは、自分でもわかっている。
鹿倉は開き直って、しっかり田村を見据える。
ここのところの自分の中のグダグダを全部押し付けようとしているのもわかっているし、田村に本音を吐いてしまった照れを隠したいのも事実。
でも。
何よりも今は、田村に甘えたくて。
恥ずかしいくらい剥きだしの自分で喋ってしまったのに、そんな自分を何の裏もなく包み込んでくれた田村の温かさに、ただ包まれたくて。
「ああもう、ほんっと志麻さんっておまえの好みドンピだろ? 目、おっきくて童顔で、おまえの腕ん中収まる可愛い感じとか。まあ、ちょっとマッチョだけど」
「おいこら」
「俺も協力すっから」
黙れ、と田村がキスで口を塞ぐ。
「好きだよ、かぐ」
「コクる相手、違うだろ」
「違ってねーよ」
今度は深い、キスをする。そのまま暫く舌を絡ませて、鹿倉の熱を煽る。
「誰に抱かれてもいいからさ、メシはウチに帰って来い」
田村が、震えている鹿倉を抱きしめた。
「ごめん、かぐ。俺、かぐのこと責めるつもり、ないよ?」
温かい腕で、包み込む。
「かぐが他に誰か好きな人できて、その人に気持ちが行っちゃってるのに俺が抱くのは違うんじゃないかなって、そう思っただけだよ?」
その温もりで、鼻の奥がつんとした。
「かぐが、俺に抱かれたいって、そう思ってくれてんだったら、俺は全然いいよ? 誰だか知んないけど、かぐのこと抱いてるヤツのこと、別に恨むつもりもないし。あ、まあ嫌がるおまえに無理矢理ヤるヤツは赦さねーけど」
あー、泣いてしまうな、と冷静に感じた。
底抜けに優しくて、誰よりも自分を甘やかしてくれる。
一番温かい温もりで、ずっと自分を包んでくれている存在。
だからこそ、失いたくなくて。
ココに帰って来たくなる。
鹿倉は、田村の腕に包まれながら少しずつ自分を取り戻した。
「俺、かぐのこと抱きたいっていつでも思ってるし」
「それは、そろそろ違くないか?」
急に、鹿倉の声に芯が通る。
田村は「ん?」と腕の中の鹿倉の顎に手をかけ、自分へと向ける。
急にその声から“甘え”が無くなったことに気付いて。
「おまえ、本命は志麻さんだろ?」
この状況で、言い出すか? と田村が眉根を寄せた。
「本気で志麻さんのこと、オとす気あんのかよ?」
「えええええ?」
「大体、おまえが俺のことしか抱けないから、それで俺までが悩むことになってんだよ」
「ちょ……待って、かぐ。なにそれ?」
「おまえがとっとと志麻さんに抱かれちまえば、俺だっておまえとのセックスなんてアテにしねーんだよ」
「はいいいい?」
「そろそろ、本腰入れて志麻さんオとそうぜ」
「かぐ、ちゃん?」
ああ、勝手だ。勝手なことを言っているのは、自分でもわかっている。
鹿倉は開き直って、しっかり田村を見据える。
ここのところの自分の中のグダグダを全部押し付けようとしているのもわかっているし、田村に本音を吐いてしまった照れを隠したいのも事実。
でも。
何よりも今は、田村に甘えたくて。
恥ずかしいくらい剥きだしの自分で喋ってしまったのに、そんな自分を何の裏もなく包み込んでくれた田村の温かさに、ただ包まれたくて。
「ああもう、ほんっと志麻さんっておまえの好みドンピだろ? 目、おっきくて童顔で、おまえの腕ん中収まる可愛い感じとか。まあ、ちょっとマッチョだけど」
「おいこら」
「俺も協力すっから」
黙れ、と田村がキスで口を塞ぐ。
「好きだよ、かぐ」
「コクる相手、違うだろ」
「違ってねーよ」
今度は深い、キスをする。そのまま暫く舌を絡ませて、鹿倉の熱を煽る。
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