キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 はっきり言って、スケジュール管理がめんどくさい。
 鹿倉はその日一人で自宅に帰宅すると、スーツのままテレビゲームと対峙した。
 ソファに寄りかかるようにしてラグの上にペタリと座る。
 目と手、だけはゲームに集中しているけれど、頭の中はかなり悩ましい。
 二股をかける、なんて大それたことを、まさかやることになるとは思ってもみなかった。
 いや、二股なんてのは大袈裟かもしれないが。
 田村とは「親友」だから。ただ、とりあえずそれに体の関係が乗っかってしまってるだけで、別にお互いがお互いをがんじがらめにしてしまうような関係ではないし。
 田村が誰と寝ようとも関係ないし、だからこそその逆で、自分が誰と寝ようと田村には関係ない。
 堀と関係があるとやたらと気にしてグダグダやっていた田村が、一体何を思ったかジェラって突っかかってくるからそれは面白がってノってやったけど、それにしたって本気で田村が自分を独占したいなんて思っているわけではないだろうし。
 大前提として田村が好きなのは志麻だという事実は、揺るぎないはずだから。
「あーめんどくさ」
 何がめんどくさいって、まさか律が自分のことを好きだなんて言ってくるとは。
 どんな女の子も選り取り見取り、という完璧なモテ男がよりにもよって自分に来るか。
 元々、自分の性癖には気付いた時から開き直っている。
 だからいつだって、周囲にそれを勘付かせないだけのスイッチの切り替えをしてきたし、田村にだけは何故かカムアウトしてしまったが、基本的には誰にも気づかれていないという自負はあった。
 誰かを好きになる、という感情を今まで持てなかったから、ただの性欲処理ならネットやそれなりの情報網でなんとかやってきていたし、田村がフリーの時にはそこで満たされていたし。
 誰かを好きになることがない、イコール誰にも好きになってもらったことがない、だと鹿倉は思っていた。
 自分を抱きたいと言ってくれる男なら、誰にでも抱かれたけれど、その相手が自分に惚れているなんて、今まで考えたこともなかった。何しろ、ワンナイト前提でしか会ってなかったわけだから。
 それが。ここに来て。
 こちらから誘ってもいない、明らかにノンケな男に惚れられるなんて。
 そんなこと、あるわけがないと思っていたから。
 律に迫られて、「据え膳は美味しく頂きましょう」といつも言っている堀のセリフが頭を過ったから。
 とりあえず、美味しく味わうことができて、ラッキー、なんて思ったけれど。
 不覚にも、どうしていいかわからなくなったのが正直なところだった。
 だって。
 こんな感覚は初めてだから。
 律が好きって言ってくれるのは嬉しいけれど、だからといって田村とのセックスがなくなるのはちょっともったいない、なんて思っている自分がいるわけで。
 そんな、自分の欲求を満たすためには律の「好き」に全面的に応えるわけにはいかないから。
「あーめんどくさー」
 とりあえず、呟く。
 やっちまったなー、とは、思う。
 なんとなーく誤魔化しながら律には伝えたけれど、田村との関係を疑われるのは困る。
 何故だろう?
 田村のことだけは、自分の中でも不思議な“枠”があって。
 田村がどんな女の子と寝ても、あるいは志麻とデキ上がってしまっても、何の感情も湧かないのに。
 それでも。どこかで繋がっている自分を確保しておきたいのだ。
 親友、でいい。いや、親友が、いい。
 誰かのモノである田村に抱かれたい、なんて思わない。
 それは絶対。
 でも。
 田村との繋がりが失われるのだけは、嫌だと思う。
 この、わけのわからない感覚だけは恐らく誰にも理解されないだろうから。
 普段しない努力なんてのを、頑張ってしなきゃいけない。
「あー、めんどくさ」
 も。いっそ、とっとと田村が志麻とヤっちゃえばいいんだ、と頭を掻きむしった。
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