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キュートなSF、悪魔な親友
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長峰が担当していたとある企業の周年祭をクルージングパーティで行うという企画が、ようやくその日無事に終了した。
ちょっとした屋形船でやる宴会なんて小さいものと違い、大型の旅客船を貸し切りにして盛大に行われたそれは、長峰が担当する企画としてもかなり大きな規模のもので、当然ヘルプとして他チームからもサポートが必要とされ、山本が演出の部分で担当し、鹿倉もその勉強と人手として一緒に動いていた。
一日中船に乗り、長峰の右腕として動いていた山本は当然のことながら、別行動で陸上部隊を指揮していた鹿倉は、その的確な指示とハプニングに先回りできる対応力とで長峰の絶大なる信頼を得、恐らく社内評価も大きく上がることは間違いないだろう成果を残したのだった。
クライアント含めた打ち上げは別で行われる予定ではあるが、今日とりあえず三人だけで軽いお疲れ様会でもするか、と長峰がいつもの居酒屋に誘って。
「おつー」
なんて三人でジョッキをぶつけるとほっと息を吐いた。
「いやあ、ほんとお疲れさん。かぐちゃんなんて、堀さんの企画と重なったから相当大変だったでしょ?」
長峰が言い、
「ほんと、よく頑張ってたよ。クライアントの横川さんも、次の企画で指名したいってゆってたしね」
と、山本までが労ってくれるから、鹿倉は照れて目の横をほんのり赤らめながらも、
「でしょー。も、今期、社長賞くらい貰えると期待してますから」
わざとドヤって見せた。
「いやいや、実際あると思うよ? ほんとは立花さんも噛むつもりでいた企画だし、会社的にも大口だからね。ただ、立花さんもタナさんも今期は手一杯だったし、堀さんトコに丸投げするわけにもいかない事情もあったし。そんな諸々含めてこんだけの結果残したってのは、まあ大きいよ」
長峰の言葉に、もうこれ以上自分が褒められるという状況に耐えられなくなった鹿倉は、
「そいえば。タナさんトコ二人目誕生したって話聞いたけど、ミネさんもう会ったりした?」
仕事の話は置いといて、と話題を変えた。
「まだまだ。一か月くらいだからね。スマホの写真だけ見せて貰ったけど、小っちゃくて可愛かった」
「女の子でしたっけ?」
鹿倉の照れている様子からその気持ちを察した山本も、それに乗ってやるように問いかけた。
「そうそう、女の子。上が男の子で三歳かな? で、今回は女の子だからもう、タナさんメロメロ」
「いいなー、赤ちゃん。ミネさんトコはもう大きいんでしたっけ?」
「うん、ウチは二人とも小学生。しかも男ばっかだし、奥さん時々マジ切れしてるよ」
「そりゃ、ミネさんが休みのたびに釣り行ってるからっしょ? 知ってた? ワンオペ育児やってると離婚率高いって」
「かぐー。おまえ、こえーことゆーなよなー」
くふくふといつもの悪い顔で嗤う。
「ま、ゆーても男の子ならそのうち一緒、行くようになるから、それはそれで奥さん喜ぶんじゃない?」
「それな。上が三年生だからさ、来年辺りからはちょっと連れて船乗ろうかなって思ってんだよね」
「船釣りは早くね? まずは磯釣りからじゃねーの?」
「磯釣りは五歳でデビュー済み」
「かっけー」
くう、なんてくふくふ笑いながら長峰と盛り上がっていると。
「かぐちゃんも、釣りすんの?」
と、山本が訊いた。
「しないねー。俺、とりあえず船ダメだし。虫がダメだから餌付けらんない」
「ルアー釣りならイケんじゃね?」
「いや、ミネさん。俺超インドア派だから。誘うならもっさん誘ってよ」
「俺も別に、釣りはいいかな。まあ、船は船舶免許持ってたらカッコイイかなーとは思うけど」
「だろ? 俺、モテたいがために取ったもん、船舶。堀っちもそーなんじゃね?」
「ぽいぽい。堀さん、社長の船で女侍らせて楽しんでるってイメージ」
鹿倉の言葉に三人で爆笑する。
そうやってくだらない話で暫く盛り上がっていたが、妻子持ちの長峰がそうそう長居していられることもなく。
「んじゃ、俺先に帰るわ。おまえらまだ呑むなら、ココは俺の名前で付けといていいから」
「え、マジで?」
「今日だけな」
そう言って、長峰が早々に店を後にした。
ちょっとした屋形船でやる宴会なんて小さいものと違い、大型の旅客船を貸し切りにして盛大に行われたそれは、長峰が担当する企画としてもかなり大きな規模のもので、当然ヘルプとして他チームからもサポートが必要とされ、山本が演出の部分で担当し、鹿倉もその勉強と人手として一緒に動いていた。
一日中船に乗り、長峰の右腕として動いていた山本は当然のことながら、別行動で陸上部隊を指揮していた鹿倉は、その的確な指示とハプニングに先回りできる対応力とで長峰の絶大なる信頼を得、恐らく社内評価も大きく上がることは間違いないだろう成果を残したのだった。
クライアント含めた打ち上げは別で行われる予定ではあるが、今日とりあえず三人だけで軽いお疲れ様会でもするか、と長峰がいつもの居酒屋に誘って。
「おつー」
なんて三人でジョッキをぶつけるとほっと息を吐いた。
「いやあ、ほんとお疲れさん。かぐちゃんなんて、堀さんの企画と重なったから相当大変だったでしょ?」
長峰が言い、
「ほんと、よく頑張ってたよ。クライアントの横川さんも、次の企画で指名したいってゆってたしね」
と、山本までが労ってくれるから、鹿倉は照れて目の横をほんのり赤らめながらも、
「でしょー。も、今期、社長賞くらい貰えると期待してますから」
わざとドヤって見せた。
「いやいや、実際あると思うよ? ほんとは立花さんも噛むつもりでいた企画だし、会社的にも大口だからね。ただ、立花さんもタナさんも今期は手一杯だったし、堀さんトコに丸投げするわけにもいかない事情もあったし。そんな諸々含めてこんだけの結果残したってのは、まあ大きいよ」
長峰の言葉に、もうこれ以上自分が褒められるという状況に耐えられなくなった鹿倉は、
「そいえば。タナさんトコ二人目誕生したって話聞いたけど、ミネさんもう会ったりした?」
仕事の話は置いといて、と話題を変えた。
「まだまだ。一か月くらいだからね。スマホの写真だけ見せて貰ったけど、小っちゃくて可愛かった」
「女の子でしたっけ?」
鹿倉の照れている様子からその気持ちを察した山本も、それに乗ってやるように問いかけた。
「そうそう、女の子。上が男の子で三歳かな? で、今回は女の子だからもう、タナさんメロメロ」
「いいなー、赤ちゃん。ミネさんトコはもう大きいんでしたっけ?」
「うん、ウチは二人とも小学生。しかも男ばっかだし、奥さん時々マジ切れしてるよ」
「そりゃ、ミネさんが休みのたびに釣り行ってるからっしょ? 知ってた? ワンオペ育児やってると離婚率高いって」
「かぐー。おまえ、こえーことゆーなよなー」
くふくふといつもの悪い顔で嗤う。
「ま、ゆーても男の子ならそのうち一緒、行くようになるから、それはそれで奥さん喜ぶんじゃない?」
「それな。上が三年生だからさ、来年辺りからはちょっと連れて船乗ろうかなって思ってんだよね」
「船釣りは早くね? まずは磯釣りからじゃねーの?」
「磯釣りは五歳でデビュー済み」
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くう、なんてくふくふ笑いながら長峰と盛り上がっていると。
「かぐちゃんも、釣りすんの?」
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「俺も別に、釣りはいいかな。まあ、船は船舶免許持ってたらカッコイイかなーとは思うけど」
「だろ? 俺、モテたいがために取ったもん、船舶。堀っちもそーなんじゃね?」
「ぽいぽい。堀さん、社長の船で女侍らせて楽しんでるってイメージ」
鹿倉の言葉に三人で爆笑する。
そうやってくだらない話で暫く盛り上がっていたが、妻子持ちの長峰がそうそう長居していられることもなく。
「んじゃ、俺先に帰るわ。おまえらまだ呑むなら、ココは俺の名前で付けといていいから」
「え、マジで?」
「今日だけな」
そう言って、長峰が早々に店を後にした。
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