キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 鹿倉の通勤手段は基本的に電車である。
 自宅にしろ勤務地にしろ駅から近いので、自家用車はほぼ自宅の駐車場に置いてあり、たまに気が向いた時に運転することはあるものの、少なくとも会社に乗って行くことはない。
そして、会社から自宅に帰る途中の駅が田村のマンションの最寄り駅だから、会社帰りに気まぐれで田村の部屋を訪れる。合鍵を渡されてからは寧ろ、自宅よりもそちらの駅の定期を購入すべきではないのかというほどの勢いで田村の部屋を訪れていたりする。
 そんな鹿倉が帰宅の為に電車に乗り、ゲームの為にスマホを起動した瞬間、田村からラインが入った。
 “今日、ウチ来る?”
 わざわざそれを訊いてくる、ということは逆に鹿倉の来訪を期待しているということで。
 “もう電車乗ったけど?”
 行くとも行かないとも取れる返事をして、暫し待つ。
 すると。
 “どうしよう。志麻さん、ウチ来るって”
 その文面だけで、田村がおたおたしている光景が浮かび、鹿倉はくふっと笑った。
 “大丈夫。自分ち帰る”
 すると、間髪入れず。
 “ちがう” “逆” “来て!”
 もの凄い勢いで短いメッセージが連投された。
 “何で? 俺、ジャマしないよ?”
 いよいよ焦った田村から着信がある。が、さすがに電車の中なので出ない。そして。
 “電車乗った、つったじゃん。電話は無理”
 至極真っ当な文面だったので、田村から再びライン攻撃が来る。
 “二人きりなんて困る。どーしていいかわからん”
 “どーしていいかって、どーするつもりだよ”
 とりあえず突っ込んでやる。と。
 “どーもしねーよ!”
 “じゃあ、何なんだよ”
 田村の焦りが伝わるだけに、面白くて仕方ないから。くふくふと笑いながらあえて冷静に遊んでやる。
 “いいから、うち来いよ!”
 “いいじゃん。二人きりで楽しめば”
 “楽しめねーよ!”
 “大丈夫だよ。志麻さん、紳士だから急に襲ったりしないって”
 “そんなん心配してねーわ!”
 毎回ビックリマーク付きな返事というのがもう、鹿倉には田村の気持ちが手に取るようにわかるから。
 とりあえず、あえて無言で泳がせてみた。すると。
 “もう、かぐも来るってゆった!”
 おお。そう来るか。
 “何だよ。せっかくなんだから志麻さん口説けばいいのに”
 “そんなことできるわけないじゃん!”
 “そこは頑張れよ、男として”
 “無理!”
 “何? 口説き方、レクチャーしろっての?”
 “ちっがう!”
 さて。そろそろ田村のマンション最寄り駅である。
 ほんとに帰ってやろうかな。と内心呟いたけれど。
 “泊まんないよ?”
 一言だけ入れて、電車を降りた。
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