キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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“ミー……ミー”
 耳元でソラが鳴きながら頬をペロペロと舐めているのを感じた田村がぼんやりと目を覚ました。
 昨夜も鹿倉が泊まりに来ていたので――ここ数日ほぼ毎日来ているのだが――、当然腕の中にはまだ眠っている鹿倉がいて。
 酒の勢いもあり、ちょっと勢い余ってやり過ぎたと自覚しているので、普段なら自分より先に起きる鹿倉がまだ微睡んでいる理由は明白なわけで。
 さすがに起こすのも可哀想だから、そっとベッドを抜け出してソラを連れてリビングへと移動した。
「はいはい、ご飯ね、わかってますよー」
 田村を追いかけながらも“お腹がすいた”と主張しているソラに話しかけ、餌皿と水を用意。
 大きく欠伸をして時計を見ると、まだ六時過ぎ。
 鹿倉は十時出勤だと言っていたし、自分は午後から顧客の会社へ直行する予定なので、こんなに早い時間から動き出すつもりはなかったのだけれど。
「しょーがないねえ。キミのご主人様は俺だからねえ」
 言いながら、餌に夢中なソラの頭を撫でる。
 昔から実家がいろんな小動物を飼っていた田村は、ソラが何を言いたいのかなんてすぐわかるようになっていた。構って欲しい時の甘えた鳴き声や、こっちが呼んでも尻尾でしか返事をしない態度も、まるで鹿倉のようで可愛くて。
「おはよー。俺も腹減ったー」
声がして振り向くと、田村の大き目サイズのロンT一枚だけを来た鹿倉が半分寝ぼけながら上半身を大きく伸ばしていて。
「…………かぐちゃん、お前、俺に食われたいの?」
 シャツから出ている脚は真っ白で、腕を大きく上に上げているから殆ど下着も見えそうな状態、という完全に男心を煽る姿の鹿倉は、意識しているのかしていないのか「んん」と鼻の奥で肯定とも否定ともとれるような返事だけして、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して飲んで見せる。
 白い首。男だから勿論喉仏もあるし、当たり前に「男」がただ水を飲んでいるだけ、なのに。
 その白い首筋が、少し上を向いているだけなのに。
 ダダ洩れの色気が、何よりもはっきりと見ている者を誘っていて。
 田村は「肯定」と受け取ることにし、つかつかと鹿倉に歩み寄るとそのペットボトルを取り上げ、自分も一口だけ飲むと、顎を上げさせてキスをした。
「……おいおい、朝っぱらからサカってんなよ」
 ねっとりとしたキスの後、唇が離れた瞬間にそんな憎まれ口を叩く鹿倉を、そのままキッチンカウンターに押し倒した。
「ここですんの?」
「……」
「せめて、リビングに移動しない?」
 そのまま始めるつもりでいた田村だったが、鹿倉もちゃんとスイッチが入っていることをその潤んだ瞳で確信したので、素直にリビングのソファへと移動し、餌を食べ終えてまったりしているソラを尻目に、鹿倉を裸に剥くと、朝食前の運動とばかりにコトを始めた。
 既に鹿倉のソレも硬く起き上がっているし、鹿倉のエロスイッチが入ってさえいれば田村なんていつだって準備万端なわけで。
 しかも昨夜の名残を流していない鹿倉の入口は、十分に田村のそれを迎える準備もできているのだ。
 スウェット上下にパンツのみ、という状態だったので手早く自分も裸になると、鹿倉の素肌を体中で味わうように抱きしめた。
 覆い被さった田村が片手で自分の体重を支えていると、キスをしながら鹿倉が下からお互いのソレを扱いていたので、田村は鹿倉の足を広げその入口に指を挿入し、ぐちゅぐちゅと掻き混ぜてほぐす。鹿倉の吐息が甘い喘ぎに代わるのに大した時間は要さなかった。
「んっ……リュウ、いいよ。も……いれて?」
 その声が掠れていて、だからそこに押し当てた田村自身は、腰を進めると入口の軽い抵抗の後はまるで飲み込まれるように中に入っていく。
「はあっ……」
 奥まで入り込むその圧迫感で鹿倉が大きく息を吸い込み、ぐいっと一番イイ所を突き上げると、甘い喘ぎ声は大きくなった。田村が快感を昂らせるように小刻みにソコを突き、中でぐちゅぐちゅと音を立てているモノが大きくなるのと同じように、鹿倉も自分のソレを扱いていて。
「や……あ、いい。そこ……もっと……」
 田村が自慢の腹筋にものを言わせて大きく突き上げると、鹿倉の声は一層高くなり、
「リュウ……リュウ……、や……あ……ダメ、いい、あも……出るっ」
 激しい突き上げで鹿倉が先に出してしまったが、勢いのままに抱いてしまっていた田村はゴムなしで中に出すのを躊躇い、鹿倉の中から自分のソレを出すと腹の上に手で扱いて放出した。
 くったりとしている鹿倉の上から体を退けると、田村はとりあえずティッシュで二人分の精液を拭き取り、ラグの上に寝転んで息を整える。
 まだまだ全然硬さを保っているソレは、大の字で寝そべる田村の中心でその存在を示していたが、ソファの上から鹿倉が手を伸ばし、
「ごめん、田村。俺、メシ食わないとさすがにもっかいは無理」
 言って、手を使ってソレを扱いてくれて。
「あ、いや、いいよ。さすがに俺も、腹減った」
 鹿倉の手を止めさせキスだけすると。
「かぐ、シャワー浴びてきていいよ。その間に朝飯用意しとく」
 そう言って、スウェットを着込むと台所に移動した。
 ありがと、とだけ言って鹿倉がバスルームに向かったので、簡単な朝食の準備をする。
鍋にミネラルウォーターを張ると火にかけて味噌汁。冷蔵庫に常備している豆腐と刻みネギ、乾燥わかめの超簡単なもの。そして昨夜のご飯があったのでおにぎりを作り、手早く卵焼きを作ると、鹿倉が戻ってきた。
「うわ、すっげーいい匂い」
「和食なー、簡単に」
 台所で料理をしているうちにある程度収まった性欲だが、とりあえず食欲を満たせる方向に意識を集中させておかないと、シャワー浴びたてのフワフワといい香りを漂わせている鹿倉のせいで再び火が付きかねない。
 ので、ダイニングテーブルに食事を運び、自分のことをワンコのように待っていた鹿倉と一緒にすぐに箸を付けた。
「んま」
 味噌汁を飲んだ鹿倉が満足そうに呟いたのを見て、自分もお椀に口を付ける。
 そうして空腹が満たされてくると、さっきまでの燻っていた性欲もなぜか落ち着いてきて。
「あ、そいえば。かぐ、これ」
 昨夜からキッチンカウンターに置きっぱなしで渡しそびれていたそれを鹿倉へ手渡した。
「何? 鍵?」
「そ、ココの合鍵」
「え? プロポーズ?」
「ちがう!」
 眉を寄せてふざける鹿倉に、
「これから俺、結構忙しくなるからお前に渡しとく。ソラの世話とか、しに来て」
と返した。
「勝手に入って、テキトーにソラ構って、泊っても泊まんなくてもいいからさ」
「あー、そゆことね。諒解」
「かぐんトコは今、そんなに忙しくない感じ?」
「ん、通常営業。まあ、もっさんがデカい山持ってきたらわかんないけど。今んトコ落ち着いてる」
「よかった。かぐも忙しいなら無理は言えないし」
「いや、別にいいよ。ソラ連れてきたの俺だし」
「ソラの世話はともかくさ、かぐもうココに越してきたら?」
「だから、何でプロポーズ?」
「そーゆー意味じゃないって。かぐんち賃貸だろ? 家賃もったいなくね?」
 ごちそうさまでした、と小さく言った鹿倉は、鍵を自宅の鍵と一緒にキーホルダーに付けた。
「いんだよ、あそこはそのままで。俺が払ってるわけじゃねーし」
 ちょっとだけ、苦々しい表情を浮かべて鹿倉が投げやりに言う。その言葉の裏に、鹿倉の家庭の複雑な事情を汲んだ田村はあえてそこには触れない。
「あれは実家の延長みたいなもんだから、いんだよ。ほっといて。それにさ。本格的にこっちに住んで、で、何気に帰宅したらお前が志麻さんに抱かれてる姿なんて見るのヤだしさ」
「なんだよ、それ?」
「あ、だから鍵開けて入る時は、一応ライン入れるようにするし。あ、いや無駄か。志麻さんに迫られたら俺のラインなんか気にしてらんねーよなー。あの人、押し倒したら一気にヤっちゃいそうだしなー」
 ベラベラと勝手なことを言っている鹿倉に、突っ込むこともできなくて。
「知ってる? 志麻さん、あんな華奢に見えて実は腹筋バッキバキなんだってー。こないだ堀さんが笑ってた。あの人、志麻さんが超運動神経ないの知ってるからさ、あんなに宝の持ち腐れな腹筋もねーよなって」
 だーかーらー! 何で堀さんがそれを知ってるわけさ?
 と、不思議な嫉妬心が沸き上がる。これは、どういう意味なのか、自分でもわからない。堀が何故志麻の腹筋を知っているか、なのか、腹筋バキバキなのを鹿倉が嬉しそうに喋っているから、なのか。
 くふくふと笑いながら、足元に擦り寄って来たソラを抱き上げた鹿倉はそのままソファに向かい。
 複雑な感情を自分で整理できずにいた田村はそのまま黙って腕組みをして悩み続けていた。
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