キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 珍しく、田村から鹿倉に「今日、来て」というラインが入った。
 いつだって気まぐれで田村の部屋を訪れる鹿倉のことを何も言わないで受け入れる代わりに、強制的に鹿倉を呼ぶこともないから。
 とは言え特に断る理由もなく、クライアントとの打合せ後は直帰という予定だった鹿倉は、運転していた営業車を堀に任せ、田村のマンションで降りると部屋に向かった。
「ソラちゃーん、来たよー」
 ドアを開けた田村ではなく、その腕の中にいたソラに声を掛けた鹿倉だったが、次の瞬間田村に唇を塞がれる。
 田村の腕の中から逃げ出したソラへと目線をやろうとしたが、頬を両手で包まれ総ての意識を自分の方へと向けようとするように田村が口腔内を攻めてきたので、とりあえずそれに流される。
「……っちょ、待って。靴、脱ぐから」
 玄関先で情熱的なキスをされた鹿倉が、重ねた唇の間でそれだけを何とか伝えると、
「ん」
 と、まさに靴を脱ぐだけの僅かな時間だけを待った田村が、鹿倉を横抱きにすると――田村にしてみれば鹿倉なんて抱き上げるのは容易い――、寝室の扉を開けてそのままベッドへ下ろした。
「……えっと、田村さん? どしたの?」
 キスでスイッチは一応オンにしてはいるものの、あまりにも強引な田村の行動に鹿倉が問う。
「ヤりたいから、ヤらせろ」
「……レイプごっこ?」
「ごっこじゃなくて、レイプする」
「……なかなか、ハードだねえ」
「いいから黙れ」
 本当に、珍しい。と鹿倉は感心した。別に、こんなシチュエーションも相手が田村だから何も「イヤ」ではないし、それを楽しむだけの余裕はある。
 大人しくしている鹿倉のジャケットを脱がせ、ネクタイを外す。カッターシャツを破る勢いでイライラとボタンを外していく田村が可愛くて、鹿倉はあえてされるがままにベッドでキスの攻撃を受ける。
 カチャカチャとベルトを外して鹿倉を裸にした田村は、スウェットを脱がないままただ自分のモノだけを出し、俯せにした鹿倉のソコへと宛がった。
「え? 待って、それは……」
「レイプする、つったじゃん」
「いや。待って待って。さすがにそんな急には入んないって」
「濡らすから」
 言ってローションをベッドの宮棚から取り出し鹿倉の孔を濡らすと、本気でそのままモノを中へと入れた。
「わっ……ちょ……はっ……んっ」
 本気で、ナマのまま闇雲に挿れられた鹿倉は、圧迫感に息を止めてそれを受け入れる。さすがに、何の前戯もなく挿れられるのは初めてで。
 ここへ来てさすがに楽しむ余裕をなくした鹿倉は、軽くパニックになりながら自分のモノに触れようとした。せめて、こっちへ意識を飛ばしたい。
「ダメ、触らせない」
 が、その左手を田村が掴んで後ろ手に引かれる。ならばと伸ばした右手も止められてしまい。
「……やっ……」
「言っただろ。何も、させないって」
 俯せのまま両手を頭の上で一纏めにされ、更に先ほど放り捨てた鹿倉のネクタイで腕を縛られる。そしてただ尻だけを突き出すようにされた鹿倉は痛みなのか快感なのかわからなくなってきて。
 背中を唇で辿っていた田村は、覆い被さるように首筋まで舐め上げると、鹿倉の耳たぶに噛みついた。
「あっ……」
 そして耳の穴を舌で犯す。その間もずっと、鹿倉の中をずくずくと突きあげていて。
 田村に慣らされているソコは、掻きまわされればされる程に快感を鹿倉に伝えてくるから、触れることのできないモノがただただ涎を垂らしながらぱんぱんに膨れ上がっていく。
「……きもち、イんだろ?」
「……イ……イけど、ヤっ……はっ……んっ」
 イイ場所を突き上げられて快感が押し寄せてくるけれど、されたことのない乱暴な扱いが鹿倉の意識に意味のわからない不安を呼び寄せて。イけない苦しさと相俟って、目尻から涙が零れる。
「……や……あっ……やっ……」
「中、ぐちゃぐちゃで、すげー、イイ」
 田村が耳元に囁く声が、いつもより低くて。
「やっ……あっ……も、……ヤっ」
「イきたい?」
 普段の底抜けに優しい田村が、見せたことのない冷ややかな表情をして、聞いたことのない悪い声で問う。がくがくと頷く鹿倉の涙をぺろりと舌で舐めとると、
「まだ、イかせない」
 中から自身を引き抜いた。
「あっ……はあっ……ヤ……やだ」
 田村は鹿倉を仰向けにさせた。が、腕を掴んだままその涙に濡れた顔を見下ろすと、自分のモノを鹿倉の口の中に突っ込んだ。
 ぐふっとその大きなモノを口に入れられ、鹿倉が苦しげな表情を浮かべる。
「口でして」
 動けない鹿倉の口の中を大きく猛っているソレでゆるゆると攻めると、鹿倉の唇の端から飲み込めない唾液がたらたらと溢れて。
「……っふ……っ……」
 声にならない声で鹿倉は抗うけれど、田村は許さないまま腰を動かした。
「……っく……」
 鹿倉の喉の奥で先端が刺激され、田村は射精感を抑えられなくなり、そのまま中に出した。
「……くはっ……っ!」
 口の中だけでなく、半分ほど顔射された鹿倉が苦しそうにその綺麗な顔を顰める。その様がまた、田村にはこの上なく卑猥に見えて。
 萎えることのないソレを、今度は正面から抱き寄せた鹿倉の中に穿つ。
「はんっ……んっ」
 鹿倉の唾液と自分の精液とでぬるぬるのソレは、何の抵抗感もなく中へと埋まり、田村はただただ快楽を追うように腰を動かした。
「……や……あっ……」
 ぐぷぐぷと音を立てて突き上げられる快感に、鹿倉が力なく身を委ねる。正面で抱き寄せられたことで、自身に触れる田村の肌が先端から溢れる涎で刺激されるから、もうイくことにしか意識がいかなくて。
「……まだだよ。今度はこっち」
 なのに、田村はまた途中まで引き抜くと、抵抗する力もない鹿倉を持ち上げてくるりと反転させる。両手を束ねているネクタイを片手で掴むと、上半身を起き上がらせた。
 騎乗位の体勢になると、快感に表情を歪めている鹿倉を田村が下から見上げる。まだ、意地悪な目で嗤うと。
「動いて」
 と促し、またしても何に触れることなく空を切ることになった鹿倉の怒張を視姦して、でもソレには決して触れさせないよう拘束した腕だけはしっかりと握ったまま下から突き上げる。
「はんっ……やっ……やあっ……」
 じゅぶじゅぶと孔を出入りする自分のモノと、その上で揺れている鹿倉のモノと。どちらも快感で弾けそうに昂っているのがわかる田村は、けれども故意に鹿倉のイイ所を攻め上げてイく手前の気が狂わんばかりの悦楽だけを鹿倉に与える。
「……あっ……だ……やっ……も、……イっ……!」
 すると、限界を超えた鹿倉のソレは何も触れないままに弾けた。びゅくびゅくと放たれた精液が田村の上に落ちる。
「……やっ……っ……」
 泣きながらくったりと田村の上に鹿倉が崩れ落ちた。
「……すご……ナカだけでイけたね」
「…………やっ…………」
 田村はそのまま鹿倉を抱きしめた状態で下から突く。されるがままに田村の上でそれを中で感じていた鹿倉は、ただただ田村にしがみつくことしかできなくて。
 まだ収まることを知らない田村の猛りは、鹿倉の中を掻きまわす。
 声にならないままただ荒い呼吸をしながら、鹿倉はまた押し寄せてくる快感に飲み込まれる。
 ゆるゆると動いていた田村だったが、鹿倉のモノが硬くなったことに気付いて再び激しさを増す。
「まだまだ、きもちくなりたいだろ?」
 鹿倉の耳に低い声で伝えて、自分の上からベッドに下ろすと再び正常位で上から覆い被さった。ぐったりしている鹿倉が涙を流しながら自由にならない両手を田村の首の後ろに回す。
「……このまま……が、いい……」
 力なく田村を引き寄せて体を密着させると、そのまま唇を半開きにしてキスを強請った。
 さすがにもう、これ以上苛めることができなくなった田村がそれに答えるように唇を重ねると、それまでの行為を消し去るように優しく舌を絡めた。
「……ふっ……んっ……」
 やっと、いつもの優しいキスを与えられた鹿倉が安心でまた涙を流すと。
「今度は、一緒にイこ」
 頬を伝う涙を唇で拭ってそう言うと、田村は鹿倉の先端をぐりぐりと刺激しながら自分のソレで中を掻きまわし、腰を使って鹿倉の一番イイ所を突き、鹿倉がイったと同時に中から引き抜くと、腹の上に自分も放った。
 そして暫く息を整えている鹿倉を抱きしめ、ネクタイを解いて額にキスをして小さく「ごめん」と呟いた。
 そのまま、黙ってお互いの体温だけを感じていて。鹿倉の呼吸が落ち着いた頃。
「……言い訳、訊こうか?」
 そう、口を開いた。
 怒っているようではあるが、そもそも「怒り」の感情を外に殆ど出すことのない鹿倉だから、その言葉にも棘はない。
「……ん? 何か理由、あるんじゃないの?」
 縛られていた後を掌でさすりながら、上目遣いに問う。
「…………ごめん」
「いや、理由訊きたいだけなんだけど?」
 田村という人間が「優しさ」だけで出来ていると鹿倉は知っているから、さすがになかなかハードなプレイをただの遊びでやったようには思えなくて。
「……ごめん、八つ当たり、した」
「へ?」
 鹿倉を再び抱きしめながら、田村が謝る。
「八つ当たりって?」
「今日、高城さんにめちゃくちゃ言われて」
「高城さんって、営業の?」
「ん」
 肌が触れ合うこと自体好きだから、鹿倉は田村の腕の中から逃げることはしない。夜は抱き枕になるし、今、安心材料としてのぬいぐるみとして抱きしめるのなら、鹿倉はされるがままに田村の腕の中に小さく収まる。
 やわやわと抱きしめてくる腕が、その「安心」を求めているのだと思ったから、鹿倉は身じろぎもしないでただ田村の声に耳を傾ける。
「俺がね、ミスったの。それは、事実」
 抱きしめて、鹿倉の髪をさわさわと撫でて。
「でもね。頭、俺の名前だから、俺が責められるべきなのに。ずっと、高城さんが志麻さんのこと責めてて」
 クライアントに対する見せしめのように、頭を下げる志麻に更に言葉で責め立てる様子が。
 悔しくて、自分が土下座しようとしたのに、志麻に止められて。絶対にお前は声を出すな、と止められて。
 歯を食いしばって一緒に頭を下げているのに、誰も田村のことなんて見ていなくて。
「…………俺、自分が情けなくて」
 何の責任も負えない自分が悔しいと、こんなにも痛感したのは初めてで。
 なのに。
 それでも志麻は絶対に田村を責めないのだ。
 誰もが通る道だから、と。志麻は二人になった時にそう言って、笑った。
 勿論、やってしまった事実は消えないし、それに対してのフォローを最終的に堀と志麻ですることになったのも事実。
 せっかく任された仕事だったのに、結局上に尻拭いしてもらわないといけないこの状況が悔しいし情けないし。
「……うん、情けないねえ」
 小さく、鹿倉が言う。
「ちっせえなー」
 何を? と少し苛立って鹿倉を見ると、笑っていた。
「何? それで自分が怒られないのが悔しいって? そんなん当たり前じゃん。田村も俺も、まだまだ責任取れるデカさを持ってないの、わかってることじゃん」
「…………」
「そんなん、俺らが責任取りますなんて、言う方がおこがましいじゃん」
 鹿倉は言って、掌で田村の頬を包んだ。
「志麻さんと、堀さんが何で夫婦みたいにいられるのか、わかる?」
「……?」
「あの人たち、全部そーゆーの二人で乗り越えてきてるからだよ」
 鹿倉が今度は軽くキス。
「いろんな経験してきてんだよ、あの人たち。でも俺ら、まだまだじゃん? 尻拭いできるだけの器、まだ持ってないじゃん? けど今回田村、一個経験積んだじゃん?」
「かぐ……」
「器、デカくしてこーぜ、俺らも。そーゆー経験一杯してさ」
 鹿倉は田村の腕の中から体を起こすと、上から覆い被さるように唇を重ねた。
「…………かぐ、怒んないの?」
「え? 何で俺が?」
「いや。俺、ただの八つ当たりで結構、酷いことしたし」
「んー。じゃ、怒る」
 言って田村の首筋に噛みついた。
「った! 何すんだよ!」
「田村のが怒るし」
「いや、痛いし!」
「跡は付けてないよ」
「そーゆー問題じゃない! なんで急に噛みつくかな」
 くふくふといつものように笑う鹿倉が、今度は噛みついた場所を舐めて。
「うわっ」
「……もっかいしよっか?」
「……意味わからん」
「怒るとか、体力使うし。そんなことに体力無駄遣いするよか、きもちくなっちゃった方が得じゃない?」
 そう言った鹿倉の目が完全にスイッチをオンにしていて。
「今度はいつもみたいに、優しくして?」
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