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 土曜日ではあるが、ラストオーダーを取る頃には店も落ち着いてきた。
 新年会より忘年会の方がやっぱりメジャーなので、今月はさすがに宴会も少なく、また夜の冷え込みが激しいせいか客足が落ち着く時間も割と早い。

「トモくん、お店はほのかちゃんにお任せするから、ちょっと櫂斗の様子見に行ってくれる?」
 状況を見て、女将さんが声をかけた。
「イイコして寝てると思うんだけど、何かいるものあったら聞いてきてくれるかな」
「はい!」
 それまでボケボケと仕事をしていた朋樹の表情が変わる。

 心配で仕方ないけれど、自分のすべきことは仕事であって櫂斗の見舞いではない、ということはわかっていて。それは勿論オトナだから、必死で自制していた行動で。
 でも、だって。
 櫂斗が苦しんでいるのを想像したら、そんなの普通でなんていられるわけがなくて。
 だから、女将さんの“ヨシ”が出たこの瞬間、朋樹はぺこ、と一礼だけすると店から櫂斗の部屋へと一目散で向かって行った。

「もお……あいつまじで、何なん?」
 ほのかが苦い顔で呟くと、
「まあまあ。ここまで仕事頑張ってくれたんだし、ね」女将さんが笑いながらほのかの肩を叩いた。

「女将さん、芳賀を甘やかし過ぎじゃないですかあ?」
「だって、可愛いお嫁さんなんだもん。しょーがないじゃない?」
「そこは姑としてイビり倒しましょーよ」
「あたし、嫁姑の経験ないしー」
「じゃあ、自分が姑役やりますよ」
「うわー、ほのかちゃんが姑になったら超怖いかも」
「味噌汁のダシから、家の埃まで、一個ずつ丁寧にイビリ倒します。芳賀になら思っきりストレス発散できそう」
 ぱき、と指を鳴らすから。
「ほどほどにねー。トモくん泣いたら櫂斗が怒り狂うわよお」
「それなー。だーもう。まじムカつくなー」

 二人のやり取りを見ていた大将が、
「何人姑がいるんだか」と一言呟いていた。

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