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 店が盛況となっている時間。
 四人は店の二階にある緒方家のリビングで顔を突き合わせていた。
 不機嫌極まりない雫と、初めての自宅訪問に緊張している朔と純也。そんな三人に、とりあえず櫂斗が四人分のコーヒーを淹れる。

「あ、ビールのが良かった?」
「いや。大丈夫。ありがと」
 朔が答える。そして。
「えっと……ちゃんと、話したいんだけど」
 雫に声を掛ける。

「ほのかちゃんには、敵わないもん」
 完全に拗ねている声で、雫が言う。
「夢乃ちゃんの一番のオキニだし、実際ほのかちゃんがお店の看板だって、そんなの私にだってわかる。だから、朔ってカレシがいるのお店でバラしたの、多分私、夢乃ちゃんに対してめっちゃダメなことしたって……わかる」

 とりあえず、ほのかによるフォローが雫の中で最も腑に落ちる結論だったらしく、櫂斗も内心ほっとして。

「ほのかちゃん護るために、櫂斗があんなバカみたいなこと主張してたのも、なんかわかるし。男同士でカップルなんて、マジ有り得ないし。朔と櫂斗が付き合ってるなんて、そんなん普通に考えたら絶対ないのが当たり前なのに私、喧嘩買っちゃうし」
「雫。俺、そこだけは否定させて」

 どうしても。それだけは。櫂斗としては雫に言っておきたかったから。
 朔と純也の関係を話すつもりは全くないが、自分が男と付き合ってることだけは、雫に言ってしまいたかった。

「俺、相手は朔じゃないけど男と付き合ってるのはほんとだから」
「…………は?」
「相手に関しては、さ。プライバシーってのがあるから言わない。でも、男同士で付き合うなんてあり得ないとか、そんなん簡単に言って欲しくないから」
 櫂斗が真剣な顔をするから、雫が固まる。

「俺の主張は店で言ったの、掛け値なしの本音。ま、実際堂々と言えないってのは事実だから、そこ突っ込まれると痛いけどさ。でも、俺がその人のこと大事に想ってて、それ、相手も同じように考えてくれてるってことだけは、性別とかそんなの関係ないと思ってる」

「櫂斗? 何、言ってんの?」
「おまえ、さ。相手がいようと関係ない、オとしたモン勝ちみたいなことゆってたけどさ、アレ、絶対違うから。そんな、簡単に揺るがないくらい好きって気持ちだったらさ、他人が邪魔なんかできるわけないから」
「……そん、なの、わかんないじゃん」
「わかるよ。だいたい、おまえが言ってるオとすって、何なん? 付き合うとか、カレシとかって主張したいだけなんだったら、そりゃ簡単に誰にでも靡くだろうけどさ。俺が思ってる“好き”ってのは、そんなんじゃないから」

「雫ちゃんはさ、元カレと何で別れたの? フられた? フった? まだ、気持ちは彼にあるんじゃないの?」
 櫂斗の口調がキツくなってきたのを感じた朔が、冷静さを取り戻すよう遮ると、雫に問う。
「そんなん、別に、ない。あいつだって、私のこと“彼女持ち”って見栄張りたいだけで付き合ってたんだろうし、私だって……別に、誰でも良かったし」
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