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「だからって他の人に堂々と言えないような関係なら、そんなのまともじゃないじゃない!」
「俺はだから、堂々と言ってる!」

「違うよ。朔のカレシは櫂斗じゃない。俺だ」
 黙っていられなくなった純也が、思わずそう主張する。
「純くん……」ダメだ、それをこんな場所で言わせるわけにはいかない、と朔がその手を掴んだ瞬間。

「あー、もう。うっせえな。も、櫂斗もジュンさんもいいから。雫。さっくんの相手はこのワタシだ」
 ほのかが雫の腕を掴み、目を見て言った。

「え?」雫が瞠目する。
 いや、雫だけじゃなくその場にいた全員が唖然とした。

「一応この店にはさ、ワタシ目当てで通ってくれる奇特なお客さんもいるんだよ。だから、ナイショにしときたかったんだ。けどそのせいでみんなにメーワクかけて済まなかったと思ってるよ」
「ほのか」
 とりあえず、それにいち早く乗っかったのは朔で。
 すっと、彼女の横に並んで肩を抱いた。
 杏輔には申し訳ないけれど、この場にいないのでフォローは後回し。
 
「悪いな、櫂斗。おまえにはいらない恥かかせた。ジュンさんもさっくんの親友だからって、フォローしてくれてありがとう」
 つくづく、自分は誰の相手にもなるなーなんて内心ボヤきながらほのかが苦笑する。
 でも、櫂斗が男気を見せている以上、自分も負けていられないと思うから。

「はい、じゃあ今日のショーはこれで終わりね」
 ほのかの言葉に、女将さんが“ぱん”と手を叩いて締めにかかる。

「櫂斗も雫も、もう時間が時間だから店から出ようね。で、悪いけどさっくんとジュンくん、大人としてフォローして貰っていいかな? ほのかちゃんはごめんけど、仕事してもらわなきゃなんないから」
 そう言って四人を自宅へと追いやる。

「てことでー。ちょっとお騒がせしちゃってごめんなさいね。お詫びにあたしから皆さんにビール一杯奢らせて頂くから、ゆっくり飲んで下さいな」
 鶴の一声、というそれに、店内にいた客――ほぼほぼ常連ばかりだが――が拍手と共に空気をいつもの“おがた”へと戻して。

 完全に蚊帳の外だった朋樹が茫然としていると。
「芳賀、ぼーっとしてないでビール配んな」
 ほのかが促す。

「……あ……」
「今はとりあえず仕事して」
「えっと……」
「櫂斗いないんだからあんたがしっかり仕事してくれないと困る。あんたには後から櫂斗がフォローするから」
 ほのかに言われ、実際頭の中はまったくついていけてないわけだけれど、女将さんがこの騒動のフォローとしてサービスすることで総てをチャラにしようとしていることくらいはわかるから。
 それを手伝うのは、この店の従業員としての義務だろう。

 混乱しながらも全員にビールを配り、なおかつそのせいでつまみとしての料理までが追加されたから、閉店間際だというのに店はかなりの盛況となり。
 結果、ラストオーダーにかなりの注文が入った為、その日の閉店は二十四時に限りなく近づき、またビール一杯のサービスなんて何の痛手にもならないくらいの売り上げとなったのだった。
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