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「本気でこっち、泊まりに来んじゃねーかと思うと、なんかさ」
「それは結構なストレスだよな。食える相手ならいくらでも来いってヤツだけど、食えねー料理は食えねーわけだから。据え膳構えられて、手、出さないわけにはいかないだろうし」
「やめてくれ。まじ怖いから。俺、おまえなら食えるけど雫ちゃんは無理なんだよ」
「俺のこと食えるんだ? まじケダモノな?」
「アリかナシかって話なだけで、誰も食いたいなんてゆってねーだろーが」
「わかってるよもう、めんどくせーな」
「めんどくせーのはおまえだっつの。混ぜっ返すな」
「じゃあ、どーすんのさ? あいつ、下手したら冬休みに突撃してくるぞ?」
「だからおまえに相談してんだろがよ」

 朔の目が、結構な本気モードに入っていて。
 ふざけてるわけにはいかないな、と櫂斗も一旦箸を置く。
 殆どもう食べ終わってるけど。

「ジュンさんのこと、言う?」
「……言いたく、ないんだよね。俺はともかく、純くんを護ってやりたいから」
 性癖と相手をはっきりと告げることができたなら、恐らく雫は去ってくれるだろう。
 でも、それは。
 当たり前だけれど、とんでもなく勇気の必要なことで。

 櫂斗だって、そんなのわかっているから。
 朔が“おがた”の中でふざけて朋樹口説いてみたり、純也とラブラブな状態でいたり。
 そんなの、“おがた”の中でだけ可能なこと。
 自分も同じだから。
 朋樹に真正面から好きだと主張できるのは店の中だけ。
 それ以外は、二人きりの空間でだけの秘密の時間。

「だよね。俺も雫にトモさんとのことは話してない。ほのかはわかってくれてるから、口滑らすことないし」
「純くんのことを伏せて、性癖も伏せて。その状態で雫ちゃんをどうあしらったらいいか、さすがにもう、わかんなくてさ」

 おまえなんか嫌いだ。なんて、簡単に言ってしまえるほど、強い人間じゃないから。
 人に“嫌い”と言うナイフを突き刺せる人間なんて、そうそういるとは思えない。
 だいたい、本当に嫌いなわけじゃないし。

「あのさ。一旦持ち帰っていい?」

 二人してうんうん呻っていても仕方がないから。
 櫂斗が言うと。
「誰か、相談するのか?」
「ん……ちょっとだけ、アドバイスくれんじゃねーかなーって人、いるから。勿論具体的に朔の名前出したりはしないし、ちゃんとその辺は考えて話すから」
「女将さん?」
「なわけねーじゃん。あの人話は通じるけど、俺が話したら即朔のことってバレるって」
「ま、そっか」

 夢乃だってきっと、朔たちの関係については知っているだろう。
 ただ、雫が絡むとなると。
 彼女にとっては大切な姪なわけだから、どちらかと言えば彼女の想いに寄り添うだろう。

「とりあえず、ちょっと第三者的に意見聞いて、何か突破口が見つかるといいなー、ってことで」
「まあ、おまえに相談持ち掛けた以上、そこは一任するよ」
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