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櫂斗が朔の問題を相談しようと思った相手、というのは。
「あら、櫂ちゃん。今日はバイト、出なくて良かったの?」
祖母、である。
平日、しかも朋樹が出勤可能なら自分がいなくても構わないから。
櫂斗は学校から帰って即、祖母の元を訪ねた。
朋樹とのことを相談していた頃も、よくこうして一人でここを訪れていたし、前日に一応ラインで知らせておいたので、祖母は当たり前に迎え入れてくれる。
「久しぶりだねえ、ウチ来んの。それに、てっきりカレシ連れて来ると思ってたから、拍子抜けだよ」
一人暮らししている、とは言え彼女が住んでいるのは駅近オール電化の高級分譲マンションである。
吹き抜けになっている広いリビングで紅茶を振舞って貰い、ソファに沈み込むのがいつもの櫂斗のお気に入りの過ごし方。
「トモさんとはまた改めて遊びに来るよ。今日はちょっと相談に乗ってもらいたくて」
「痴話ゲンカ?」
「トモさんとは喧嘩しないもん」
「優しそうなコだったね」
「でしょ? ふわふわなトモさん、ほーんと可愛いからさ。箱入れてしまっときたいんだよね、俺」
「ごめん、あたしにその感覚はわからん。どっからどう見ても、あっちのがタチにしか見えないし」
「んふ。そこは想像にお任せします」
櫂斗がくふくふ笑うから、祖母も嬉しくなる。
最初に相談された時はこんなに幸せな笑顔が見れるなんて思っていなかったから。
「じゃなくて。今日はトモさんのことは置いといて」
「ノロケに来たわけじゃないの?」
「ん。ばーちゃん、雫んコト、覚えてる?」
「あー。愛羅ちゃんの娘ちゃんだろ? こないだ店に来てたらしいね。直接会ってはないけど、夢乃から聞いたよ」
昼に“おがた”にはよく顔を出している祖母だから、夢乃とは当たり前に情報共有している。
「あのさ。かーちゃんにはオフレコでお願いしたい話なんだけど、おけ?」
「えー。そんなことして、夢乃とあたしが“ヨメシュウトメ”になったら櫂斗、どーしてくれんだよ?」
「なんねーっつの。とにかく、ちょいまじ、雫に振り回されて困ってんだから」
「雫、なんか成長しておまえそっくりらしいじゃん。おっぱいがデカい櫂斗だって? めっちゃ面白いじゃん。おまえも女装しろよ、櫂斗」
「女装は今度、文化祭でやるし」
「え。まじで? あたしも見たい!」
「ヤだよ。もー、ばーちゃん話、進まねーじゃんか」
「ばかだねー。あたしが真面目な相談なんか、乗るわけないじゃん」
けらけらと笑うから、櫂斗は不貞腐れた。
「ヤダよ、カタい話なんか聴きたかないね。あたしはあんたのノロケ話しか聴いてやんないよ」
「なんでだよ」
「めんどくさい話、嫌い」
「子供かよ!」
「うっせえ、ばーか。こっちは毎日仕事で頭使ってんだ。激アマなノロケ話以外、受け付けませーん」
「だってノロケたらネタにするじゃん」
「するよ、当たり前だろ。孫だろーが息子だろーが、容赦ナシにエロエロのネタにしてやる」
「うあーん、サイテーだこの人」
二人して一しきり笑って。
でもやっぱり櫂斗がムクれてるから。
「いっぱい悩みな。それがセイシュンってヤツだよ。あたしなんざもう、人の恋愛話妄想するしかできなくなってんだから。悩めるウチがハナってヤツだ」
櫂斗の頭をぐりぐりしてくる。
友達が雫に口説かれて参ってるって、簡単に言ってしまえばそれだけのことで。
口説いてくる相手に対して、恋愛感情は持てないけど嫌いじゃない。だから対処に困ってる。
そう、祖母に言って。
「……俺もさ。雫、嫌いじゃねーんだけどなー」
「なら、いいじゃん。いっそおまえが遊んでやんな。難しいコトぐだぐだゆってたってどーしよーもないから。そんなん、楽しんじゃったモン勝ちってヤツだよ。おまえがデートして、ちゅちゅっとしてやりゃ、それでいいんだよ」
「なんで俺が雫とちゅうしなきゃなんないんだっつの」
「おんなじ顔の可愛いコが男女でマグワってるなんてもー、タンビの極みじゃねーか。想像するだけで鼻血モンだよ」
「……つくづく、ばーちゃんって下品だよね」
へろへろと笑いながら舌を出した祖母が。
でも。
「いんだよ。櫂斗のしたいようにすれば。櫂斗がいっぱい悩んで考えて、それで一番最適な道選んだんなら、多分誰も否定しないからさ」
真面目な目をして、櫂斗の頭をポンポン撫でた。
「ばーちゃん……」
「カレシとも、それでうまく行ったんだろ? なら、それが答えだ。おまえは間違ってないよ」
一番欲しい答え。
多分、それをくれるから。
「大丈夫だよ。あんたはみんなから愛されてる。だから、安心して真っすぐ進みなさい」
祖母の言葉は温かくて。
やっぱり櫂斗の大好きな“ばーちゃん”で。
これからどうなるか、明確な道は示されなかったけれど、でもどこかで安心している自分がいた。
櫂斗が朔の問題を相談しようと思った相手、というのは。
「あら、櫂ちゃん。今日はバイト、出なくて良かったの?」
祖母、である。
平日、しかも朋樹が出勤可能なら自分がいなくても構わないから。
櫂斗は学校から帰って即、祖母の元を訪ねた。
朋樹とのことを相談していた頃も、よくこうして一人でここを訪れていたし、前日に一応ラインで知らせておいたので、祖母は当たり前に迎え入れてくれる。
「久しぶりだねえ、ウチ来んの。それに、てっきりカレシ連れて来ると思ってたから、拍子抜けだよ」
一人暮らししている、とは言え彼女が住んでいるのは駅近オール電化の高級分譲マンションである。
吹き抜けになっている広いリビングで紅茶を振舞って貰い、ソファに沈み込むのがいつもの櫂斗のお気に入りの過ごし方。
「トモさんとはまた改めて遊びに来るよ。今日はちょっと相談に乗ってもらいたくて」
「痴話ゲンカ?」
「トモさんとは喧嘩しないもん」
「優しそうなコだったね」
「でしょ? ふわふわなトモさん、ほーんと可愛いからさ。箱入れてしまっときたいんだよね、俺」
「ごめん、あたしにその感覚はわからん。どっからどう見ても、あっちのがタチにしか見えないし」
「んふ。そこは想像にお任せします」
櫂斗がくふくふ笑うから、祖母も嬉しくなる。
最初に相談された時はこんなに幸せな笑顔が見れるなんて思っていなかったから。
「じゃなくて。今日はトモさんのことは置いといて」
「ノロケに来たわけじゃないの?」
「ん。ばーちゃん、雫んコト、覚えてる?」
「あー。愛羅ちゃんの娘ちゃんだろ? こないだ店に来てたらしいね。直接会ってはないけど、夢乃から聞いたよ」
昼に“おがた”にはよく顔を出している祖母だから、夢乃とは当たり前に情報共有している。
「あのさ。かーちゃんにはオフレコでお願いしたい話なんだけど、おけ?」
「えー。そんなことして、夢乃とあたしが“ヨメシュウトメ”になったら櫂斗、どーしてくれんだよ?」
「なんねーっつの。とにかく、ちょいまじ、雫に振り回されて困ってんだから」
「雫、なんか成長しておまえそっくりらしいじゃん。おっぱいがデカい櫂斗だって? めっちゃ面白いじゃん。おまえも女装しろよ、櫂斗」
「女装は今度、文化祭でやるし」
「え。まじで? あたしも見たい!」
「ヤだよ。もー、ばーちゃん話、進まねーじゃんか」
「ばかだねー。あたしが真面目な相談なんか、乗るわけないじゃん」
けらけらと笑うから、櫂斗は不貞腐れた。
「ヤダよ、カタい話なんか聴きたかないね。あたしはあんたのノロケ話しか聴いてやんないよ」
「なんでだよ」
「めんどくさい話、嫌い」
「子供かよ!」
「うっせえ、ばーか。こっちは毎日仕事で頭使ってんだ。激アマなノロケ話以外、受け付けませーん」
「だってノロケたらネタにするじゃん」
「するよ、当たり前だろ。孫だろーが息子だろーが、容赦ナシにエロエロのネタにしてやる」
「うあーん、サイテーだこの人」
二人して一しきり笑って。
でもやっぱり櫂斗がムクれてるから。
「いっぱい悩みな。それがセイシュンってヤツだよ。あたしなんざもう、人の恋愛話妄想するしかできなくなってんだから。悩めるウチがハナってヤツだ」
櫂斗の頭をぐりぐりしてくる。
友達が雫に口説かれて参ってるって、簡単に言ってしまえばそれだけのことで。
口説いてくる相手に対して、恋愛感情は持てないけど嫌いじゃない。だから対処に困ってる。
そう、祖母に言って。
「……俺もさ。雫、嫌いじゃねーんだけどなー」
「なら、いいじゃん。いっそおまえが遊んでやんな。難しいコトぐだぐだゆってたってどーしよーもないから。そんなん、楽しんじゃったモン勝ちってヤツだよ。おまえがデートして、ちゅちゅっとしてやりゃ、それでいいんだよ」
「なんで俺が雫とちゅうしなきゃなんないんだっつの」
「おんなじ顔の可愛いコが男女でマグワってるなんてもー、タンビの極みじゃねーか。想像するだけで鼻血モンだよ」
「……つくづく、ばーちゃんって下品だよね」
へろへろと笑いながら舌を出した祖母が。
でも。
「いんだよ。櫂斗のしたいようにすれば。櫂斗がいっぱい悩んで考えて、それで一番最適な道選んだんなら、多分誰も否定しないからさ」
真面目な目をして、櫂斗の頭をポンポン撫でた。
「ばーちゃん……」
「カレシとも、それでうまく行ったんだろ? なら、それが答えだ。おまえは間違ってないよ」
一番欲しい答え。
多分、それをくれるから。
「大丈夫だよ。あんたはみんなから愛されてる。だから、安心して真っすぐ進みなさい」
祖母の言葉は温かくて。
やっぱり櫂斗の大好きな“ばーちゃん”で。
これからどうなるか、明確な道は示されなかったけれど、でもどこかで安心している自分がいた。
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