上 下
58 / 167
<2>

☆☆☆

しおりを挟む
 メールチェックの為にPCを起動して、その前に座る。
 と、櫂斗が。
「浮気チェック」
 なんて言って、無理矢理朋樹の膝の間に座り込んできた。
「まだ言うか」
「いつもPCでメールのやり取りとかしてんの?」
「ああ、それは今度インターンシップの希望出してる企業とかあるから。そういうトコ相手にはPCメールの方がいんだよ、資料もあるし。まあ、スマホにも転送はかけてるけど」

 当たり前に真面目な現状を話す。
 三年にもなれば、就職活動も視野に入れないといけないわけで。
 年齢的にもただただ遊んでいられる状況では、ない。

「……………ヤバい、トモさんがどんどんオトナに見えてきた」
「櫂斗、俺のことなんだと思ってるわけさ」
「なんかー、もっとこう、ふわふわーってしてる感じ」
「ふわふわしてんのは櫂斗の方じゃん。こんな、可愛い顔して」
 膝に乗っている櫂斗の頬をふにふにすると、
「人の浮気疑ってるけど、そっちんが浮気してんじゃないの?」と笑う。

「俺はトモさん一筋。彼女もいたことないし」
 という櫂斗の言葉には、鼻白む。
「いや、さすがにそれは信じないし、そんなことないのは俺にもわかる。中学ん時の写真、店にあるじゃん。あれ見たら、絶対女子にモテてるってわかるって」

 結局顔さえ良ければ坊主頭だろうがイケメンはイケめてるわけで。
 仲間と満面の笑みで写真に納まっている櫂斗はキラキラしていたから、きっと引く手あまたなのは一目瞭然。
 それに中学の野球部なんて、モテる代表格だろう。と、朋樹は思う。

「うっわー。イヤミ、返された。俺さ、実は小学校時代はそこそこモテたの。バレンタインとか、結構チョコ貰ってたし。でも中学入った瞬間からは全く。一緒にいた連れがまた、えっらいモテるヤツでさ。俺は完全に引き立て役だったし」
 本当にモテるヤツってのは、ピッチャーじゃなくキャッチャーだと櫂斗は思う。
 だって、あのポジだけは常に冷静じゃないと務まらないわけで。
 あの位置から対面の二塁を刺す投球力があって、その上試合全部を先読みしてピッチャーに的確な指示を出す、なんて。
 いや、勿論見た目だって、筋肉あるわシュッとした顔してるわ。そんなヤツが隣にいたら、もお敵うわけがない。

「俺ね、実際“可愛い”ってのは言われ慣れてんの。でもそれって、全然モテには繋がんねーんだよ。同級の女なんか、俺のこと弟だとしか思ってねーし」
 ちょっと不貞腐れる。と、朋樹が後ろからきゅっと抱きしめてきた。
「俺が弟って言ったのも、ソッコー嫌がったよね」
「あったりまえじゃん。弟なんか、イヤに決まってる」
「じゃあ、俺が櫂斗のいろんな初めてを貰ってるってことでいいのかな?」

 珍しく、朋樹の方から甘い空気を醸し出す。

「ん。トモさんは全俺から絶大なる支持を得てるから、俺の全部をトモさんにあげる」
 抱きしめられた腕の中、ちょっとだけ自分が“可愛い”ってサイズ感なことが嬉しくなる。

「櫂斗、一緒にシャワー行く?」
「その提案も嬉しいけど俺、もう風呂入って来た。先にベッド行ってるからさ、トモさんシャワー終わったら裸でベッド入って来てね。ベッドでイチャイチャしよ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

継母の心得

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:73,777pt お気に入り:24,118

悪役令息レイナルド・リモナの華麗なる退場

BL / 連載中 24h.ポイント:17,442pt お気に入り:7,340

【連載版】婚約破棄ならお早めに

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:92,619pt お気に入り:3,217

いつから魔力がないと錯覚していた!?

BL / 連載中 24h.ポイント:14,267pt お気に入り:10,638

同居人は料理が美味いけど、俺は料理を食べるのが上手い

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:47

所詮、愛を教えられない女ですから

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:175,165pt お気に入り:3,289

推しの兄を助けたら、なぜかヤンデレ執着化しました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:34,312pt お気に入り:748

[完結] 残念令嬢と渾名の公爵令嬢は出奔して冒険者となる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35,495pt お気に入り:603

非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:137

処理中です...