【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
74 / 86
追加エピソード

第37話:謎の荷物

しおりを挟む
*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*


 頼んだ覚えのない荷物が届き、龍之介りゅうのすけは首を傾げた。宛名は謙太けんたになっており、伝票の品名欄には『雑貨』と記載されている。
 通販したなら先に言っとけ!と思いながら受け取りのサインをして、箱はリビングの隅に置いておいた。

「あ、もう届いたんだ」

 帰宅後、一緒に夕食をとっている時に謙太が気付いた。

「なに頼んだんだ? 要るものがあるなら買い出しのついでに買ってくるのに」
「ゴムとかローションとか色々」

 龍之介はみそ汁を噴いた。
 聞いたのは自分だが、食事の最中にする話題ではない。日々の買い物でドラッグストアにも寄るが、昼間それをカゴに入れる勇気はない。

「……おまえ、まさか」

 コンドームもローションも、抜き合いをするだけならば必要ない。それらをわざわざ揃えたということは、つまりそういうことだ。

「そろそろ次の段階に挑戦したいと思って」
「一人でやってろ」
「リュウも付き合えよ」
「なんでだよ!」

 思わず喧嘩腰になってしまったが、今は食事中だ。話が思わぬ方向に向かったせいで気不味い。料理の味がよく分からなくなる。ちらりと前を見れば、謙太は平然と煮物をつついて食べていた。自分だけ意識しているのが悔しくなり、龍之介も平静を装って食事を続けた。





 交代で風呂に入った後、早速荷物を開封する。
 中身は謙太の申告通り、コンドームの箱やローションのボトルが数個ずつ。それと、手のひらサイズの球体にノズルが付いたシリコン製のポンプのようなものが入っていた。

「なにこれ」
「直腸の洗浄に使うんだって」
「誰がやんの?」
「おまえ」
「……はあ~~……」

 龍之介はポンプ片手に盛大な溜め息を吐き出した。

「別にそこまでしなくてよくないか?」
「え、でも洗浄しないと色々」
「腸内洗浄するかしないかじゃなくて、おまえがその後やろうとしてることについて言ってんだ俺は」

 男同士の性行為は受け入れる側の負担が大きい。この場合の『受け入れる側』は龍之介となる。行為に対する熱意の差が有り過ぎるからだ。
 女性と違い事前の準備が必要となる。思い立ってすぐセックスになだれ込むような真似は出来ない。

 抜き合いで性欲の発散自体は出来ている。そこまでする必要はないと龍之介は考えていた。

「リュウはしたくない?」
「したくないっつーか、そもそも男同士だからさ、女相手にするみたいにはいかないだろ」
「オレはリュウとしたい」
「ウッ……」

 真っ直ぐな目で言い切られてしまうと断りづらい。

 龍之介も興味がないわけではない。ただ、お互い女性としか経験がない以上、どうしても不安が付きまとう。


 失敗したら。
 冷められたら。
 失望されたら。


 そんなことばかりが頭を過る。

「試してみて、リュウがどうしても無理だっていうなら諦める」

 ここまで言われたら、何もしないうちに拒絶したら申し訳ないような気になってくる。色々調べてわざわざ道具まで揃えたのだ。試すくらいはしてもいいかもしれない、と思えてきた。

「…………試すだけな」
「ヨッシャ!」

 渋々了承した龍之介を見て謙太がガッツポーズで喜びを表現した。ここまで喜ばれると後で無理だと言いにくい。

 龍之介はまたまた謙太に流された。
しおりを挟む
《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
感想 37

あなたにおすすめの小説

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

処理中です...